赤い薔薇に囲まれた街の中、その中でも風が吹けばバタンバタン音を立てそうなトタン屋根の上に金髪でサングラス、上半身にアロハシャツを羽織っている男は座っていた。
屋根は年季が入っており赤錆(あかさび)だらけだが男は気にすることなく屋根から見える海を見て笑っていた。
「『脈』が変わったようだぜよ〜」
※ ※ ※
海は空の色を反射し真っ青に染まり、小さな波が白い砂浜の上を往復している。
そんな波打ち際で1人の少女が体育座りをして丸くなっていた。
「はぁ〜……」
少女は溜息をつくと顔を膝の中へ埋(うず)めてしまう。
すると、波に乗って1人の男性が少女の前へと漂着した。
その男は夜空のように黒い髪から犬の耳を生やしていた。
砂浜に打ち上げられた青年はうつ伏せのまま起き上がることもなく、まるで死んでいるかのようだった。
「はぁ〜……」
少女は顔を上げながらもう一度大きな溜息をつくと、緑のツインテールを揺らしながら立ち上がった。
そして、近くにあった棒切れを海に投げた。
「お姉ちゃんのばっきゃろォオオオオオオ!!!!」
「おい、ヒトが倒れてんのに無視すんな」
緑のツインテールをした少女は涙をぬぐった後声がした方向を見ると倒れていた青年が相変わらずうつ伏せのまま顔だけこちらに向けていた。
「あ、生きてたの?死んでんのかと思った」
「どうやら生きてるらしい。つうか、確認もしねぇで死人扱いってのもどうなんだ……?」
「もしかしたら死んでるのかもよ?もっかい寝てみたら?」
「それは遠まわしに俺に死ねって言ってるのか?」
「いや〜……」
少女は後頭部をかきながら視線を逸らす。
「幽霊と話したことがある、なんて気味悪いじゃん?」
「だから俺は死んでねぇ!!」
青年は怒りに任せて腕の力で上体を起こそうとするがすぐに力が抜けてしまい砂浜に顔が埋まってしまう。
「大丈夫?」
少女が心配そうに見えなくもない顔で青年の顔の側に腰を下ろす。
「……悪いんだが、誰かお前の家族とか呼んできてくれねぇか?」
「嫌だ」
青年は再び顔を横に向けるが即答され目が点になる。
そして青年の脳裏に先程少女が海に向かって叫んでいた言葉が蘇る。
「お前まさか……姉さんと喧嘩中か?」
「は?何であんたのお姉さんとあたしが喧嘩すんの?」
「ちげぇよ!俺のじゃなくてお前の姉さんだよ!」
「うおっ!?何で分かったの!?あんた……いや、兄ちゃん能力者!?」
「ま、まぁ能力者ではあるかもな……」
青年は苦笑いをこぼしながら嫌な予感に襲われていた。
今のこの状況が少し前に聞いた友人のエピソードと酷似し過ぎている。
(これは早めに説得しないと飢え死にするパターンか……)
「それでそれで!?兄ちゃんはどんな能力を使えんの!?」
「その前に、だ」
瞳を星のように輝かせる少女に向かって青年は震える腕を伸ばす。
「飯を食べさせてくれ。そうしたらお前が姉さんと仲直りするのを手伝ってやるよ」
「……え?本当に?」
先程までの態度が嘘のようにしおらしくなった。
「兄妹喧嘩なら俺も何回もしたことがある。だから任せろ」
「ぜ、絶対!絶対だかんな!」
「あぁ!」
その返事は冗談抜きに命のかかった重みのある返事だった。
「じゃあ家まで案内するけど、兄ちゃん立てんの?」
「……肩を貸してくれると助かる」
こうして青年は少女に引き摺られるようにして浜辺から脱出する。
「そういやまだ名乗ってなかったな。俺はジーク・フリィース」
「あたしはミリー!ミリー・カレンデュラ!」
ミリーは楽しそうに言うがジークは顔の近くで大ボリュームの声を聞かされたため片手で耳をおさえていた。
(にしてもこいつ……)
ジークは耳から手を離しながらミリーの顔のとある一点を見つめる。
(額広いな〜)
「何?あたしの顔に何か付いてる?」
「いや、何でもない」
ジークは咄嗟に視線を逸らすとミリーは何かを悟ったように笑みを浮かべる。
「ははぁん、さてはあたしに惚れたな?そうだよねぇ、命の恩人だもんねぇ。でも困るんだよね、あたしには先約が2人もいるからさ〜」
「まだ恩人じゃねぇだろ。それに、ガキがそんな話をするなんて10年早ぇよ」
「こっ、子供扱いすんな!先約がいるってのは本当なんだぞ!」
「はいはい」
ジークは溜息をついてもう一度ミリーの体格を見直す。
「お前今いくつ?」
「……12だけど」
ジークは更に大きな溜息をついた。
(ルルと1歳しか違わないのに、ここまで違うもんなのか……)
「今失礼なこと考えたでしょ?」
「考えてねぇよ」
と、その時だった。
ジークの鼻を花の香りが通り抜けていった。
(こんな所に花畑なんてあんの
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