傷が癒えた今でさえも体が震える。
なんの援護も無くあの圧倒的な力を持った彼等に勝てるのか、と。
「だが、やるしかない。ユリスを倒せるのは俺達だけなんだ」
「ごめんヴェイグ。ボク、みんなと一緒に戦えそうにないや……」
「え……」
マオのこの一言により、ユージーン、ヴェイグ、ティトレイの三人はマオの決断を読み取った。
元老院の護衛を務めることにより、軍に残る道を選んだのだと。
「ボクはこれでも大佐だもん。お城を護るのも仕事だからね」
マオには軍で何かやりたいことがある。
それを聞かされていたヴェイグとティトレイにはマオの意見を反対することはできなかった。
その二人以外の仲間達も、二人の葛藤する顔を見て無闇に反対できずにいた。
「そうか……。それがお前の意見だというなら仕方ないだろうな。直に上からの遣いが来るだろう。そしたらお前は、」
「そんなのダメだよ!!!」
突然、ルルは怒鳴りながら立ち上がった。
「……ルル?」
「マオがお城の護衛に行っちゃうなんて、そんなのダメだよ!お城を護っていたってユリスは居なくならないんだよ!?」
「まぁそうなんだけどな?マオには英雄っていう功績もあるから、軍の人達も安心なんだろ」
「お兄ちゃんは黙ってて!!」
見ると、ルルの目には涙が溜まっていた。
「おかしいよ……。何で大佐だからってマオが偉いヒトの言いなりにならなきゃいけないの?何でマオなの?」
「ルル……」
今のマオには何故と聞かれても答えることはできない。
それがとてももどかしい。
「マオはユリスを倒さなきゃいけないの!マオはもっと冒険しなきゃいけないの!マオは!マオは!!」
ルルは固く目を閉じながら怒鳴った後、やさしく目を開きマオを見た。
「私は……もっとマオと旅をしたいよ……」
「!!!」
旅をしたい。
それがルルの、いや、マオの本音でもあった。
だが、
「ありがとう、ルル。ボクも同じ気持ちだヨ?でも軍にいる以上命令には従わなきゃいけない。だから……ネ?」
「嫌!!そもそもマオはまだそんな命令受けてないもん!!だから受ける前にさっさとこの街から出て行っちゃえば良いじゃない!!」
「そ、そんな事言われてもなぁ〜」
最早メチャクチャなことを言い出すルルにマオは困惑した。
すると、ここでブライトが口を開いた。
「ルルの言うとおりだぜ?マオ」
「え?」
「ブライト、お前何を……?」
ユージーンはブライトを睨んだがブライトは気にせずに続けた。
「マオ、お前が何故そこまで軍に固執するのか俺は知らねぇよ。若干14歳の小童がな。だがな、俺の生徒が泣いてんだ。俺の生徒が困ってんだ。だから俺は、全力で助ける」
ブライトは喧嘩を売るかのような目でユージーンを見ながら言った。
ユージーンとしてはマオの意見を尊重したい。
しかしブライトはルルの意見を尊重するという。
ここにきて初めて大人二人の意見が別れたかのように思えた。
「勘違いすんじゃねぇぞ?俺はマオに大佐の地位は諦めろって言ってんじゃねぇ。マオだって俺の生徒だ。二人の願い、その両方を俺が叶えてやる」
「二人の願いをって、そんなの無理なんじゃ……」
「諦めんじゃねぇ!!すぐに諦めんのが最近の若いモンの悪い癖だ!ルルが言っただろうが。命令が来る前に街から出て行けば良いって」
突然怒鳴られフィオナはビクッと目を閉じ、ブライトは一泊置いてから続けた。
「良いか?今回は英雄を利用するんだ。マオ大佐率いる英雄様御一行はユリス討伐のため、命令をまたず遠征に向かったってことにする。そうすりゃあ軍も判断、行動の遅れにより一歩出し抜かれたってことでお得意の黙認をするだろうよ」
「そんな大雑把な考えで大丈夫なのか?」
「難しく考えんな。今の世の中はな、ルルのような純粋な意見の方が上手くいく時もあるんだよ。純粋すぎて俺も気付かなかったがな。あとは、マオの気持ちしだいだぜ?」
「ボクの気持ちだったら最初から決まってるよ?」
全員真剣な面持ちでマオを見たが、マオは軽い口調で答えた。
「みんなと一緒にいく。それがボクの気持ちだヨ!」
「そうか」
ユージーンが微笑むと、ルルはマオの所まで歩み寄り手を握った。
「また一緒に旅ができるんだね!?」
「ルルのおかげだよ、ありがとう」
「あんなに嬉しそうにしちゃって。良かったね、兄さん?」
ジークを見てみると、彼は真っ白になり「やっぱりルルは反抗期だ……」と永遠に呟いていた。
余程ルルに怒鳴られたのがショックだったのだろう。
「これでマオとルルの問題は片付いたとして、お前は何を悩んでるんだ?」
ブライトは先程から俯いたままのカインを見た。
「さっきからずっと訊きたかったんだ……。僕なんかが、
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