ヴェイグ達が商店に向かって歩くこと数十分、彼らは未だに商店へ着けずにいた。
「商店って、歩くとこんなに遠かったんだね……」
マオは肩を落としながら言った。
バルカ城からは大分離れたが、先日の爆発の影響で家屋が荒廃しており人気も少なく、ここまでヒトというヒトと擦れ違うことがなかった。
ここまで建物が廃れるほどの爆発だったというのに、その最前線にいた自分達はよく無事だったものだと、破裂した水道管を見ながらジーク以外の全員が思った。
「で?さっき言ってた元老院って何なんだ?」
ジークが質問すると、ユージーンが答えた。
「元老院とは簡単に言えば国王のアドバイザーのようなものだ。補佐官のように王の手助けになるように働くわけではないが、国王のとる政策に助言をする権限を持っている。それが元老院だ。したがって国王無き今、彼等が国の実権を握っているのが現状だ」
「だったら助言役なんてチマチマしたことしてないで、このチャンスに国王になっちゃえば良いのにね?」
「そしたらいろんなことを命令し放題じゃないか」とカインは付け足すと、マオが苦笑いしながら返した。
「国王になれるのは代々月のフォルスを持ったヒトだけなんだ。でも今の元老院の中には誰も持っているヒトはいない。そもそも月のフォルス所持者は国王の血筋からしか生まれることはないからね」
「ジルバも月のフォルスを持っていたな。ということは、ジルバもその血を引いているのか……」
「遠い親戚なのかもね。だからジルバにも国王になる権利はあるんだヨ?」
「俺、屋上で戦った時が初対面だったけど、あんなヤツが国王になった国になんて住むの嫌だな……」
「あんまり……考えたくありませんね」
「まったくだ」
ブライトは肩をすくめて言うと、そこで会話は終わった。
だが商店にはまだ到着することはなく、ヒビの入ったコンクリートの道を一行は歩き続けた。
と、ここで何か気付いたのかヴェイグとマオの間を歩いていたジークはスピードを落とし、最後尾のルルに歩み寄った。
「さっきからやけに静かだな。どうした?」
ルル「べ、別に……」
ルルはチラッとマオを見た。
すると、突然後ろへと行ったジークが気になったのかマオが後ろを振り向くと、ルルと目が合った。
「ッ!!」
するとルルは瞬時に首をグイッと後ろに曲げ、視線を逸らした。
その様子を見てジークは首を傾げたが、ブライトに背中を大きく叩かれた。
「察してやれ、兄貴!」
「あ、商店が見えてきたわよ」
フィオナが指をさす方向には機関車が走るためのレールがあり、その更に先には見覚えのあるお店が建っていた。
「やっと着いたか〜」
「あのお店、世界の中心っていうんだけど、フィオナ知ってたの?」
「この前ジークのリハビリついでに来たのよ」
「それってつまりデート!?」
カインは驚愕した表情でジークに顔面を近付けた。
「ちげぇよ」
それをジークは明らか嫌そうな顔をしながら両手で突き放した。
店内へ入ると中は相変わらず狭苦しく、必要最低限の物しか置いていないようだった。
「おっ、英雄さん方久しぶりだねぇ。今日は何のようだい?」
カウンターにいる店主が気さくに話しかけると、フィオナはビシッと指をさした。
「ちょっと!あの時は私たちに何も売らなかったくせに、何でヴェイグ達には売ろうとするわけ!?」
「口五月蝿いお嬢ちゃんだなぁ。言っとくけど、今のあんたでも売らないよ」
「何よそれ〜!?」
「お、落ち着けってフィオナ!な?」
ジークがなだめようと試みるが、効果は今ひとつのようだ。
「ここの店主は客の腕を見て売買を決める。そういうヒトなんだ」
「つまり私はまだまだ未熟ってことじゃない!!あったまきた。私、外で待ってる」
「お、おい!」
頭から煙を出さんばかりに激怒したフィオナはジークの呼びかけにも応じずに外へと出てしまった。
「1人で待たせておくのも難だ。ジーク、付いていてやってくれないか?」
「分かった」
ジークは頷き、フィオナの後を追うと彼女は入り口の直ぐ側の壁に寄りかかっていた。
後悔しているのか、頭を冷やそうとしているのか、腕で空を見上げた顔の目を隠していた。
「最低……。皆の前で怒鳴ったりして、大人気ないったらありゃしないわ……」
「心配すんな、お前の心の声はいつもそんなもんだ」
フィオナはジークを睨み唇を強く結んだが、すぐに解き腕を後ろで組んだ。
「……そう?」
「逆に良かったんじゃねぇの?皆に本当のフィオナを知ってもらえて」
「失礼ね、真に本当の私は可憐で繊細なのよ」
ジークは乾いた笑いと共に肩をすくめて見せた。
「そういえば、カインを探している途中でラジルダに寄ったんだけど変なヤツと会った」
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