バルカ港から定期船が出港したのは夕暮れ時だった。
行き先が極地なため定期船は何本も出ている訳ではなくそれでも1日三本出ているというのは多いほうであった。
そのため時間が余ったヴェイグ達はマティアスに強引に自己紹介をさせられ、マティアスが逐一質問を入れる中で一通り済んだ頃には定期船の出航時刻になっていた。
船は海を滑るように走り、夕日に照らされる海はなんとも鮮やかな色をしていた。
そんな船内では船室にてユージーンとマオが話をしていると突然扉が勢いよく開かれた。
「こんなところにいたのね」
「マティアス!?」
突然の来訪者にマオは水を噴くと、ユージーンが何のようかと訊ねた。
「この間、貴方達の元に不可解な事件の報告書が回ってこなかったかしら?」
不可解な事件と言われ思考を巡らせてみたが、最近自分達が巻き込まれている事件全てが不可解すぎてどれが不可解なのか答えられなかった。
「つっかえないわね。自主してきた犯人を収容所へ連行中に警護の兵士が殺された事件のことよ」
それを聞いてマオは「あぁ!」と頭に電球マークを浮かべた。
その報告書に目を通していたのはこの物語が始まった当初。
船の破壊事故が起き、ジークと出会う少し前に目を通していた報告書である。
その報告書の内容というのが、大方マティアスの言った通りで女性が殺人を犯したとかで自主をしてきたため収容所に連行しようとしたが、途中護送隊は襲撃を受け全滅したが自主してきた女性はそのまま収容所に監禁され、それを襲撃した男が見張っているという内容だった。
その男は自主した女性を逃がす素振りは見せないが、かと言って見張りの兵士も近づけない状況であり、今もなお現状維持を続けている。
「それがどうかしたの?」
マオはコップを片付けながら聞くと、マティアスは腕を組みながらソファーに深々と座った。
「その女がここしばらく昏睡状態だったらしいわ。最近また目を覚ましたらしいんだけど、彼女が昏睡状態に陥った時っていうのが調度貴方達が城の屋上で倒れているのを発見された時なのよね。これって偶然かしら?」
マティアスは鋭い目付きでマオとユージーンを見るが、2人は顔を見合わせた。
「お前は俺達がその女と繋がっていると考えているのだろうが、俺達はその女と会ったことさえない。信じろと言って信じてはもらえないだろうが、それが真実だ」
ユージーンが言うと、マティアスは「ふぅ〜ん…」と目をそらしながら人差し指をアゴに当てると、再びマオを見た。
「じゃあ質問を変えるわ。最近貴方達の周りで変わったことはないかしら?ちなみに、もし嘘なんてついたら木っ端微塵にするけど、分かってるわよね?」
相変わらずシャレにならない脅しをしてくるなとマオは冷や汗をかきながら考えてみた。
「そういえば、最近ジークの周りで変なフォルス反応を感じるんだよね。それぐらい……かなぁ?」
それを聞いてマティアスは突然立ち上がった。
「えっ?ボク嘘は言ってないヨ!?」
「やっぱりアイツなのね。分かったわ、ありがとう。失礼するわ」
それだけ言ってマティアスは外へ出て行ってしまった。
「マオ、今言ったことは本当なのか?」
「うん、ちょっと前からたまにだけどジークのとは違うフォルスを感じるんだよネ。ただ、最近は何も感じなかったんだけど、実はまた今も感じてるんだ」
「様子を見に行かなくて良いのか?」
「しばらく様子を見てたけど、ジークに害を加える気はなさそうだったからね。多分大丈夫だと思うヨ?」
ユージーンはそうかと一回安心すると、再び険しい表情になった。
「少しカインの所へ行ってくる。お前はヴェイグ達の所へ行っててくれ」
マオは何も訊かずに「ほ〜い」と軽く答えると、別の船室へと向かった。
場は変わり、朱色に染まる海を眺めつつ、甲板に呼び出されたフィオナは船の揺れに足をとられながらも呼び出した張本人の元へと向かった。
「で?私に話って何の用?」
フィオナは手摺に掴まりながら海を眺めていたカインに向かっていうと、彼は俯きながら振り返った。
「えっと…来てくれてありがとう、来てくれないんじゃないかと思った。ごめんね、ジーク君じゃなくて」
「何でそこでジークの名前が出てくるのよ?」
フィオナはカインの隣に立つと手摺に背を向け体重を預け、用件はそれだけかと催促した。
「その…えっと…あの……」
カインは落ち着きがないように両手をあたふたさせながら顔を上げ、賢明に言葉を絞り出した。
「フィオナはさ……僕のこと、恨んで……る?」
カインは再び俯くと、フィオナは「は?」と言って眉をしかめた。
「ちょっと、何で私があんたを恨むのよ?」
「だって、フィオナのお父さんが今こんな事になってるのって僕の所為だし……
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