「第2王子というとアガーテ陛下の親族か。陛下にご姉弟がいたことなど、俺は初耳だが?」
ユージーンは拳を顎にあてながら言うと、レラーブは相変わらず笑顔で返した。
「うん、暗殺の可能性もあるから本当は内密なんだ。だから、君達も誰にも言わないでね」
「姉弟といっても腹違いなのよ。ちなみに、他にあと3人王子と王女がいたのだけれど両方とも既に暗殺済み。第2王子は私の仕事だったのだけど、こいつに邪魔された所為で失敗に終わったって訳」
マティアスはレラーブを睨んだが、レラーブは表情を微動だにさせなかった。
そもそも先程からこの2人は顔見知りのような素振りをみせていたが、どうやらマティアスが王子暗殺の命を受けた際に、そのお目付け役と刃を交えていたとのことだった。
更に失敗に終わったという言動から、マティアスはレラーブに負けたということが分かり、一同はレラーブの実力の程を測りかねていた。
しかし、一つ疑問が浮かび上がる。
「第2王子の暗殺にマティアスが係わっているということは、王の剣が関連しているのか?」
ヴェイグが疑問を投げかけると、マティアスは何食わぬ顔で答えた。
「そうよ?ラドラス陛下の尊厳を守るために元老院から命令されたの。おかげで失敗した私は酷い目にあったわ……」
マティアスは自分の体を強く抱きしめながら言い、彼女達が任務を第1に考える理由がなんとなく分かった気がした。
しかしマティアスはすぐに冷静な表情になると、レラーブに詰め寄った。
「というか、未だに王子を見つけられない貴方はこんなところで機密事項をベラベラと喋ってる暇があるのかしら?」
「うん、そうだね。王子を探し始めてからもう1年がたってしまった。いざ探してみると意外と見つからないものだね……」
そんなに長い間探しているのかと呆れるマオ達を無視して、レラーブは再び海へと飛び込んでいった。
「お、おい!!」
ティトレイは急いで手摺から乗り出し眼下で波打つ海を見ると、レラーブは平然と手を振りながらこちらを向いていた。
「君達ももし王子を見つけたら僕に知らせてね。王っていう言葉が口癖みたいな人だから、会えばすぐに分かるよ」
それだけ言い残してレラーブは夕日に染まる海の上を走り去って行った。
「どうやって海の上に立っているんでしょうか?」
先程レラーブの足元を確認したが下駄という特殊な物を履いてはいたが、別段特殊な加工を施してあるようには見えなかった。
アニーが小さくなるレラーブの姿を見送りながら疑問を口にすると、マティアスが髪をかきあげながら機嫌悪そうに答えた。
「どういう原理かは私も知らないけど、秋のフォルスのおかげだって昔自慢気に言ってたわ」
どうやらレラーブは秋のフォルスを持っているらしい。
アニーが「素敵なフォルスですね」と言う傍らで、マオは腕を頭の後ろで組んだ。
「ていうかさ、マティアスとレラーブって仲良いよネ」
それを聞いたマティアスの表情は途端に黒い物へと豹変した。
「次つまらないこと言ったら、消すわよ?」
「は、はい……」
何時にもまして機嫌が悪く、その低い声はマオを脅すのに十分すぎた。
そしてしばらくすると船は再び動き始め、冷たい風が頬を撫でた。
「冷えてきたわね」
ヒルダが自分の腕をさすりながら言うと、ユージーンは大陸方面を見た。
「そろそろビビスタ地方にさしかかるのだろう。あの辺りは夜になると冷えるからな。早めに船室に戻ったほうがいいだろう」
ユージーンが視線を中間達に戻すと、一人足りないことに気付いた。
「ジークはどうした?」
「兄さんならついさっき船室に戻ったみたいだけど?」
本当に寒いのが苦手なやつだと一同は思いながらも、気温は日が沈むにつれて少しずつ下がってきたため、ヴェイグ達も船室へ戻ることにした。
「そういえば、ブライト達の街まであとどれくらいで着くんだ?」
ヴェイグはまだ聞いてなかったと思いブライトに訊ねた。
「定期船だと1日かかるからな。明日の夕方頃には着くんじゃねぇか?」
それを聞いてヴェイグ達は絶句した。
「そんなにかかるの!?ちょっと、聞いてない!!」
フィオナは怒鳴るが、仕方ないものは仕方なかった。
それでもブツブツと文句を言い続けるフィオナをよそにヴェイグ達は濡れた体をなんとかするために一旦シャワーを浴び、その後大客室の扉を開いた。
この定期船には小さな船室の他に、お客が全員で食事をするための大客室が用意されている。
他の定期船に比べ長距離用の船のため他にも色々と用意されているのだが、そのため何隻も長距離用の定期船を造ることはできず、1日に出航する便も限られているのである。
マティアスは機嫌が悪いため、別室にいるといって別行動をとり、大客室の中央に設置されている
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME