リビングにはジン達と同様の黒髪を肩まで下ろしたチャリティが居た。
「ヴィーナ〜、お客帰った〜?折角話す気になったんだから早く聞いてよ〜」
こちらに背を向けるようにソファに座っていたチャリティだったがソファの上で反転すると、ルルとジンの姿を見て目を丸くした。
「何々?ルルちゃんったらお姉ちゃんのことを心配して迎えに来てくれたの!?キャー嬉しい!!」
チャリティはルルに抱きつくと、ルルはそれを迷惑そうにはがした。
「一応、俺達もいるんだけど……」
ジンはオーちゃんを指差しながら言うがチャリティは構わずソファに深く座り込んだ。
「まっ、誰が来ても当分帰らないけどね。見てなさいよ?ジークが寂しくなって泣きながら頼みにくるまで帰ってやらないんだから!!」
チャリティが鼻を鳴らす傍らでヴィーナは人数分の紅茶をテーブルに置き、ルル達もソファに座った。
「それで?喧嘩の理由を話してくれるんでしょ?」
ヴィーナは優しく言うと、チャリティは掴みかかるように話し始めた。
「そうなのよ聞いて!?事の発端は昨日まで遡るんだけど、昨日ピーチパイの特別販売をやってたじゃない!?」
「あぁ、外からのレシピが手に入ったってやつね」
ヴィーナは紅茶をすすりながら聞き続けた。
「それをね、私は苦労してなんとか一個だけ買えたの!でもすぐに食べるのは勿体無かったから明日みんなで食べようと思って冷蔵庫に入れておいたのね?そしたらジークが今朝全部食べちゃったのよ!信じられる!?1ホール丸ごとよ!?」
チャリティはテーブルをバンバン叩き、4人は紅茶を膝の上に避難させた。
「それで私は何で残しておかなかったのかって聞いたの。そしたらあいつ何て言ったと思う?「気付いたら全部食べてた」とか言いやがったのよ!?気付くでしょ普通!!バカなの?ねぇバカなのあいつ?」
ヴィーナはコトっと紅茶の入ったカップをコースターの上に置いた。
「確かにそれはジークが悪いわね。私だって並んだのに買えなかった物をまさか1人で食べちゃうなんて……」
「でもジークお兄ちゃん、お姉ちゃんにぬいぐるみを壊されたから怒ったって言ってたよ?」
ここまでぬいぐるみの話が出てこなかったことを不信に思ったルルが言うと、チャリティは眉をピクっと動かした。
「た、確かに無くなったピーチパイに夢中で、ぬいぐるみを踏んだら腕がもげたわね……」
「ぬいぐるみって?」
ヴィーナは何気なく質問したが、チャリティの顔色は更に悪くなった。
「あ、あいつがお母さんからもらったクマのぬいぐるみ……」
「ちょっとそれって大問題じゃない!バカはどっちなのよ、このバカ!」
ヴィーナが怒鳴るとチャリティは子犬のように小さくなった。
「なんだ、母上からいただいたものならば、また買っていただけば良いではないか」
オーちゃんが言うと、場の空気が一瞬にして重くなった。
「この子達のお母さんはもういないのよ。だから、ジークのぬいぐるみは形見のようなものだったの」
「そう……だったのか」
オーちゃんは聞いてはいけないことを聞いてしまったことに気付き、俯いてしまった。
確かにそんなに大切なぬいぐるみを壊されたのであれば怒る気持ちも分かるが、チャリティが苦労して手に入れたピーチパイを皆で食べたかったという気持ちも無碍(むげ)にすることはできない。
「紅茶、なかなかの味であった。礼を言う」
オーちゃんは立ち上がると、それだけ言い残して外へと出て行った。
ルルとジンは慌ててそれを追いかけ、外へと出た。
「それで、これからどうする?」
「分からん……」
ジンの質問に力なく答えつつも、オーちゃんは歩きながら考え続けた。
すると、学校の校門前で女性とぶつかってしまった。
「むっ、すまない!ボーっとしていた」
「ううん、こちらこそごめんね?」
その栗色の髪を腰まで伸ばした大人のヒューマの女性は豊満な胸を揺らしながらしゃがんだ。
「あっリノア先生こんにちは!」
ルルとジンがその女性を見て挨拶すると、リノアと呼ばれた女性も挨拶を返した。
「あら、ルルちゃんとジン君。こんにちは。この子、見ない顔だけど新しいお友達かな?」
リノアは優しい口調で訊ねると、ルルは笑顔で頷いた。
よほど信頼されている先生なのだろう。
ルルはオーちゃんの事を話すと、リノアも自分はここの学校で教師をやっており、もう1人別の先生がいることを教えてくれた。
「なにか考えごとをしてたのかな?良かったら先生に教えてくれると嬉しいな」
リノアは微笑みながら言うと、オーちゃんは頬を染めながら言った。
「う、うむ。実は訳あって今喧嘩している2人を仲直りさせたいのだが、両方に正当な理由があるためにどうしたら良いのか分からんのだ……」
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