一同は病院へと向かう途中、意外な人物と出会った。
「あ…兄さん」
病院へ向かうには商店街を通る必要があるらしく、そこでは先程別れたはずのジークがイーリスと共に買い物をしていた。
「こんなところで何やってんだ?」
ブライトが訊ねると、ジークは口を尖らせながら答えた。
「晩飯の買い物に決まってんだろうが。つうか、俺は何人分作れば良いんだ?」
「お前は自分家の分、4人分作ればそれで良い。残りは俺の家に泊めるからよ」
どうやらこの集落に宿屋はないらしい。
「分かった。それと……」
ジークはおもむろにカインに近付くと彼の肩に腕を回し、顔を近づけた。
「余計なことすんなよ?」
「うん……分かってる」
カインが頷くとジークは再び買い物に戻り、一同も再び病院を目指した。
「ねぇカイン君。どうしてジーク兄さんは来ちゃダメなの?」
商店街の明るい喧騒を抜け、街灯がほのかに照らす夜道を歩きながらルルが問うと、カインは言い難そうに顔を顰めた。
「ルルの言うとおりだよ。折角兄さんとヴィーナさんが会うチャンスだったのに……」
ジンの話しによるとヴィーナはチャリティが死んでからというもの、ジークとは会っていないらしい。
カインは絞り出すようにして何とか声を出した。
「……だからだよ。ジーク君とヴィーナさんはまだ会わせちゃけないんだ……」
ルルは更に何でと聞きたかったが病院に着いてしまい、それどころではなくなってしまった。
病院は一階建てになっており、中に入るとすぐに受付があり、ナースはジンとルルの姿を見るやすぐに受付を通してくれた。
慣れた足取りで病室へ向かい、スライド式の扉を開くとそこには一つのベッドに上半だけ起こした犬のガジュマとその傍らにあるイスに座る青髪のヴィーナの姿があった。
ヴィーナはジン達の姿を見るとイスから立ち上がり、驚いたような表情を浮かべていた。
「あんた達、帰ってたの?」
「うん、さっき帰ってきたとこ」
ジンがヴィーナに挨拶をしている脇を通りぬけ、ルルはベッドに寄り添った。
「お父さんただいま!」
「おうお帰り!相変わらずうるせぇなぁ〜」
どことなくブライトと似た口調で話す犬のガジュマはどうやらルル達の父親のようで、とても優しそうな笑みを浮かべていた。
「ブライトも、俺の息子達が世話をかけたな」
「俺は教師として当然のことをしただけで、そんな大したことは……」
一方のブライトは無駄に恐縮していた。
リノアの時も敬語は使っていたがあの時とは違う、まるで憧れの人物と対面したかのような、そんな印象を感じさせた。
そんなやり取りを行っているうちに全員病室に入ると、足の踏み場もないほどに混雑した。
「お、大勢で来たのね……」
ヴィーナが呆れていると、ジンが全員を紹介した。
「は〜、あんたらがユリスをねぇ。なんつうか、英雄ってガキばっかなんだな」
それを聞いてアニーとティトレイが怒りそうになったが、ヒルダが手を刺し伸ばすことで制した。
その時2人はヒルダの表情が緩んでいるように見えたが、それは黙っていることにした。
「そういえば……」
病室内が普段より何倍も賑わう中でヴィーナは囁くような声を出しながら目を泳がせた。
「ジークはどうしたの?」
「ジークなら家で晩飯の準備をしている」
ヴェイグは腕を組みながら答えると、ヴィーナは胸に手をあてて安心するような仕草を見えた。
「そう、良かった。今あの子と会ったら私何を言ってしまうか分からないもの……」
ブライトの話しからヴィーナはジーク達にとって姉のような存在だと聞いていた。
勿論ヴィーナもジン達のことを慕っているのはこの病室に来たことで分かった。
しかし、ジークに会うことは拒否しているように見え、兄妹であるジン達もヴィーナの発言を聞いて困惑している。
「ジークが晩飯の用意をしてるんじゃ早く帰ってやったらどうだ?病院にいたって面白くねぇだろ」
その場に満ち始めた陰気な空気を払うかのようにジンの父親は大きな口を開けて笑いながら言う。
「そうだね!お父さん、私達また旅に出てくるけど寂しがっちゃダメだよ?」
「てめぇこそ、ジークに迷惑かけんじゃねぇぞ?」
父親が頭を撫でるとルルは頬を膨らませながら「迷惑をかけてくるのはジーク兄さんのほうだよ……」と言って目を逸らした。
そのままルルは不機嫌のまま病室を出て行くと、ジンも慌ててそれを追いかけるように出て行く。
そして、他の者もそれに続いて出ていこうとしたが、父親に呼び止められた。
「すまんが、ジークのことをよろしく頼む」
振り向くと、そこには頭を下げた父親の姿があった。
突然頭を下げられたことに当然困惑したが、ユージーンは平然と質問を投げた。
「ジークのこととはどういう意
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME