翌朝、大剣といった各々の武器を携えたヴェイグ達は船の甲板に集合した。
長距離用の大型船なだけあり木製の甲板は100m四方はある。
空を見上げると一面の青空が広がっており海面はギラつく太陽の光を反射し宝石のように輝いていた。
「気分悪いわね……」
冒頭の描写を台無しにしたヒルダの顔は眼下に広がる海に負けず劣らず青ざめていた。
「ヒルダ……一応訊くが船酔いと酒酔いのどっちだ?」
「そうね、両方……かしら」
呆れるユージーンの問いに対しヒルダは口元を抑えながら答える。
「お前、うちであれだけ飲んでおいてまた飲んだのかよ?」
「うるさいわね。船の上で飲むお酒はまた別なのよ」
「そういや、ミナールで初めて会った時も二日酔いだったよな?」
ジークはカインを止めるために仲間集めをしていた時、ヒルダがミナールに診療所を構えるアニーに二日酔いに効く薬をもらいに来ていたことを思い出した。
「ヒルダってお酒弱いの?」
「いえ、ヒルダさんの場合雰囲気に酔ってしまうのが大きな原因だと思うんです。ほら、ヒルダさんって何かと格好付けたがるじゃないですか」
「あぁ確かに。たまに勝ち台詞で何言ってるか分からねぇ時があるもんな!」
「え?ティトレイ知らないの?あれは古代カレギア語なんだヨ?」
「そう俺が教えたんだったな」
「あんたら……ぶつよ?」
「ちなみにチャンポン飲みという飲み方をすると酔いやすいって言いますけど、あれは味が変わるから飽きずに飲み過ぎてしまうだけで同じ種類のお酒を同量飲んだ時と酔い加減は変わらないんですよ」
「チャンポンって何?鍋?」
「この場では違う種類のお酒を気の向くままに飲むことをチャンポンと言うのよ。まぁ、少なくとも私はそんな飲み方はしないわね」
「チャンポンでは無くてもそこまで酔っていては世話ないな」
「そういうヴェイグはまだお酒を飲まないのね。寒い地方では体を温めるために好んで飲まれると聞いたことがあるわ」
「俺はポプラおばさんのピーチパイがあれば十分だ。勿論クレアが作るものも絶品だ」
「確かにあれは上手かったな」
「ジークあんた食べたの!?じゃあ作りなさいよ!」
「あれは無理だな。昔クインシェルにレシピが流れ着いたとかで食べてみたけど全く別物だった」
「フィオナもスールズに来てみると良い。何も無いところだがクレアも喜ぶだろう」
「その時は俺も行く」
「何でジークも行くのよ?招待されたのは私だし、そもそもあんた寒い所苦手じゃなかった?」
「れ、レシピを盗みに行くんだよ文句あんのか?」
ふと、ジークはブライトを見た。
というより視界に入ってしまった。
無駄話ばかりが進み、全く本題に入ろうとしない現状に怒りの表情を浮かべるブライトがグラビティの詠唱に入っていた。
「特訓……するか」
ジークに言われて気付いたのか他の面々もわざとらしく大袈裟に準備体操を始めた。
「ったく、気付くのがおせぇんだよ」
ブライトはため息を吐きながら詠唱を中断し、腰に手を当てた。
「特訓の内容を今から説明するから、よく聞くように」
低いが全体に良く響き渡る声は教室でよく聞いていた先生の声だった。
「まずは4人ずつ3チームに分ける。そしてチーム内で2対2の模擬戦闘を行う。戦闘の経験において実戦にかなうものはないからな、これが特訓内容だ」
そして、ブライトからチームの振り分けが発表され、便宜上A・B・Cというチーム名が振られた。
【Aチーム】
ヴェイグ・アニー・ジン・ルル
【Bチーム】
ユージーン・マオ・フィオナ・ブライト
【Cチーム】
ティトレイ・ヒルダ・ジーク・カイン
この3チームの中で更に2人でタッグを組む。
だがそのタッグも任意で選べる訳ではない。
そもそもチーム分けの時点でブライトがアミダクジ等で適当に決めたのではなく、きちんとした理由に基づいて振り分けたのだ。
したがって既に組むべきタッグも決まっている。
「なるほどな。俺とカインが組んでティトレイをボコボコにすれば良いわけか」
そう、各チームには2人ずつ英雄が組み込まれている。
なので残りの2人がタッグを組み、かつてユリスを倒した英雄2人に実戦を交えた特訓を行おうというのが今回の趣旨なのである。
「やれるもんならやってみろジーク!」
こうして12人は3チームに分かれて特訓を開始した。
【Aチーム】
「これだけ離れれば大丈夫だろう」
まずヴェイグ達を含め3チームはチーム間との距離をとり、他のチームのユージーンやジークが米粒程度に見える程度に離れた。
「これはさすがに大袈裟じゃない?」
ジンは米と化した兄を見ながら言うが、ヴェイグは首を横に振った。
「マオやヒルダの導術に巻き込まれたら特訓どころの話ではな
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