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第20話『敗北と夕暮れ』

【Cチーム】

「そういえば、ティトレイと手合わせするのは初めてだね」

カインに言われて思い出してみると、カインを止めるためにヴェイグ達は何度も戦闘をしてきたが、カインと直接拳を交えたことがあるのはジークだけだった。
しかもジークと戦っていた時は無意識のうちに手加減をしていたらしく、本気のカインと戦った経験のある者はいない。

「確かに殴り合うのは初めてたけどよぉ、一緒になら何度も戦ったことがあるだろ?」

ティトレイはストレッチをして全身の筋肉を伸ばしながら言った。

「別に手合わせしなくたって分かることもあるんだぜ?」

同意を求めるように後ろにいるヒルダのほうへと振り返るとヒルダはカードを投げるための素振りを行っていた。
先程までの顔色の悪さは微塵も感じられない。

「ヒルダは大丈夫なのか?」

「愚問ね、ジーク。もし今バイラスかユリスが攻めてきたとして、負けたら船酔いを言い訳にすれば良いのかしら?生憎だけど、私はそんなの御免だわ。二日酔いも船酔いも気持ちの持ちようでどうにでもなるの。そう、スイッチの切り替えとでも言うのかしら?」

つい先刻まで二日酔いだの船酔いだのとグダグダ言っていたのが別人のようにヒルダの言葉にはいつもどおりの棘(とげ)が含まれていた。

「だから遠慮は無用よ。まぁ、あんた達にそんなことをしている余裕があればの話だけど」

「まっ、ジーク達じゃヒルダに指一本触れないだろうけどな〜」

多方ストレッチを終えたティトレイが腕を組みながらヒルダの挑発を煽ると、ジークとカインは拳を握りしめた。

「そうね、もし私に一撃も攻撃を与えられなかったら一日何でも言うことを聞いてもらおうかしら」

「罰ゲームか。上等だ!」

「だったら僕達がヒルダに一撃でも与えられたらそっちにも何か罰ゲームを用意してよ」

「その時は語尾にニャを付けて喋ってやるぜ!」

「・・・・・・は?」

こうして双方罰ゲームが決まったことでより一層気合が入るジークとカインだった。

「あんた、死ぬ気で守らないと後ろから撃つわよ」

「わぁってるって!」

「後悔すんじゃねぇぞ!!」

ジークは強く甲板の床を蹴ると持ち前の瞬速でティトレイとの間を瞬時に詰める。

(相変わらず速ぇ!!)

気付けばジークの拳が眼前に迫っており、ティトレイは即座に右手で受け止めた。

(今のを止めんのかよ!?)

奇襲に失敗したジークだったがそれでも構わなかった。
ジークはティトレイに抑えられた右手に更に力を加えていく。
するとティトレイは何かに気付いたのか、ふと上を見上げるともう片方の手でジークの胸ぐらを掴み上空へと放り投げた。

(まずい!)

放り投げられたジークは空中で身をよじりティトレイとは逆の方向を向く。
ティトレイがなげかけた視線の先には開始早々にヒルダへと攻撃をしかけようと鳳凰天駆で上空から斜め下方へと突撃しようとするカインの姿があった。
ジークはティトレイを足止めをする囮だったのだが、その囮が空に放り投げられたことで蹴りの体制で斜め下に突撃するカインと衝突し、ティトレイの目の前に落下した。
ぶつかった衝撃と甲板に打ち付けられた衝撃に苦痛の色を浮かべる二人だったが、その痛みに悶えている暇はなく、すぐにその場から跳ねのけた。
ティトレイのボウガンからの追撃がきたのである。
そしてこの間にヒルダはライトニング・ソーサリーにより詠唱時間の短縮をさせ、ライトニング・ローブにより一撃だけ攻撃を無効化させた。

「容赦無いっていうか、ティトレイ信用されてないね」

前衛のティトレイを信頼し本当に一撃も受ける心配をしないのならばライトニング・ローブで身を固める必要はないはずだ。
ティトレイもそれは感じたのかヒルダの方を見る。

「保険よ保険」

ヒルダは一枚のカードを口元に寄せて言うが、目は本気そのものだった。
最早二日酔いのヒルダはどこにもいない。
恐らく今彼女の頭の中にはどうやって罰ゲームを確実に回避するかということでいっぱいなのだろう。

「いくわよ」

ヒルダは短く牽制してから詠唱に入る。

「いくよジーク君!」

一瞬寒気を感じた後熱気を感じた気がしたがジークが頷くのと同時に二人はティトレイに向かって飛び、左右から空中で蹴り飛ばした。
しかしティトレイは左右からの攻撃を両腕でガードするとカインは顔をしかめ空中でそのまま反対の足で蹴りをくりだす。
今度は受け止めずにしゃがんでやりすごしたティトレイはそのまま右手だけで体重を支え、カインを蹴り上げた。

「チッ」

一度着地したジークはまだ右手だけで逆立ちをしているティトレイの右手を払おうと低い蹴りをいれたがティトレイは右手だけで跳ね回避し、そのままサマーソルトのように空中で縦回転し、つま先でジークの頭部
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