夏のフォルスの使い手アルティスとマティアスの戦闘によりボロボロになった船は運行が不可能という状況になっていた。
しかし幸いにも乗船客の中に職人がおり、応急ではあるが修理を請け負ってくれた。
その職人は船大工という訳ではないが金槌さえあれば大抵のことはできると言い、代わりに多額の報酬を要求されたとヴェイグ達は船長から聞いた。
「軍の関係者が半分壊したようなものだし、その報酬は国から出すよ」
「それはありがたい!」
マオが言うと船長は深々と頭を下げた。
そしてユージーンがその額を聞くと、マオは顔が青くなった。
「元老院のおじいちゃん達に頼めば出してくれるかな・・・・・・?」
「孫を可愛がるタイプなら良いがな」
一方フィオナとヒルダは船内に残された食料の確認と保護のために倉庫へと向かっていた。
これから何日間漂流生活をすることになるのか分からないうえにマジカルポットから支給される食材では船客全員の食事はまかえない。
そのため食料の確保は優先事項となる。
「あら?」
倉庫へと向かう途中、ヒルダが途中で立ち止まった。
「どうしたの?」
「あんた、香水ってつけてないわよね?」
「たまに付けるけど今日は付けてないわよ?」
「じゃあこれは・・・・・・」
そう言ってヒルダはフラフラと歩き始め、倉庫を通りすぎた後廊下を何回か曲がっていった。
フィオナは不思議に思いながら黙ってついていくと、しだいに工具が打ち付けられる音が大きくなっていった。
そして最後の角を曲がると緑色の短髪で前髪が目にかからないようにバンダナを巻いたヒューマが壁に貼った鉄板を打ち付けていた。
恐らくマティアスが空けた穴だろう。
「薔薇の香水の正体はあなただったのね。滅多に売っていないのによく手に入れられたわね」
「え!?このヒトが香水付けてるの!?」
「ぁあ?」
フィオナはヒルダの発言に驚いたが、緑色の短髪ヒューマが振り返ったことで更に驚愕した。
「お、女!?」
口は悪く服装はタンクトップだったが、そのタンクトップから溢れんばかりのメロンが性別を雄弁に語っていた。
「別にあたしは香水なんて付けちゃいないよ。あたしの街、最近になって薔薇の養殖始めて薔薇だらけなもんだから染み込んじまってるんだ」
「そんな街あったかしら・・・・・・」
ヒルダは唇に指をあて、思考を巡らせてみる。
1年前に世界中を旅したがそんな街に心当たりはなかった。
「最近だって言ったろ?知られてなくて当然さ」
緑の女性は鉄板をさすりながら答える。
どうやらここはもう終わりのようだ。
「よし!あとはエンジン部だけだな!あと1日もあれば終わるから気長に待っててくれよ!」
「そんなに早く終わるの!?」
「あたしをなめんじゃないわよ。それに、早く帰って大事な妹を安心させてやりたいしな」
(大事な妹ねぇ〜・・・・・・)
フィオナは妹に対して過保護なジークを思いだし肩を落とした。
そしてそのジークはというと拳を壁に殴り付けていた。
「くそっ!」
ジークの拳は固く握られ、心は悔しさで埋め尽くされていた。
タイダルウェーブを前にした時、フィオナの異変には気付いた。
だが何もできなかった。
何も言うことができなかった。
反対にマティアスは簡単にソレをやってのけた。
別にマティアスに嫉妬している訳ではない。
ジークは彼女の努力を知っている。だからこその結果なのだと。
だから余計に自分の無力さが悔しかった。
ジークはより一層拳を強く壁に押し当てると突然壁が開き顔面にぶつかった。
「うっさいわね!喧嘩売ってきたのはどこの誰!?」
出てきたのはマティアスだった。
どうやらジークが殴ったのは壁ではなくドアだったようだ。
「すまん・・・・・・」
ジークは一言謝るとさっさと立ち去り、マティアスは首を傾げるだけだった。
とりあえず甲板にいこうと思ったジークだったが途中でティトレイに捕獲されてしまう。
「ちょうど呼びに行こうと思ってたんだ!ブライトがフィオナとヒルダの帰りが遅いから手伝ってこいってよ」
「確か倉庫だったな」
そういえばあそこでティトレイをボコボコにした時のことを思い出してジークは吹き出した。
「どうした?」
「いや、なんでもない」
ティトレイにはヒトを明るくする不思議な力がある。
ジークは言うか迷ったが、しゃくなので心にしまっておくことにした。
そして倉庫に着くとフィオナとヒルダが食材のチェックをしていた。
「何?あんた達暇なの?」
「ちっげぇよ!いや違わないけどよぉ!お前らが帰ってくんの遅いから手伝いに行けって言われたんだよ!」
「あ、そう」
ヒルダが茶化し、ティトレイが遊ばれる。
相変わらずの2人であった。
「あ、そうそう」
何かを思
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