既に日課となった授業が終わり、少し頭を冷やそうとジークは二階の小さなテラスに出た。
黒い霧が薄くなったとはいえバルカ特有の霧も手伝って空を仰いでも星は一つも見えなかった。
「やっぱりここにいたんだ」
振り返るとジンがテラスへの入口のガラス戸を開けていた。
「やっぱりって何だよ?」
ジークは手すりに背中を預けると、ジンも同じように隣で背中を預けた。
「兄さんってよく夜になると外に出て行くクセがあるんだよね」
「そうか?」
言われて思い返してみれば旅に出てから結構な出没率だったことに気付く。
「・・・・・・よく見てんな」
「長い間一緒にいるしね。よく見てれば分かるっていうか、分かっちゃうこともあるんだよ」
「まぁ、そうかもな」
返事はしたものの生返事だった。
フィオナのことはよく見ているつもりだが未だに何を考えているのか分からない時がある。
たまに彼女のフォルスで心の声が聞こえてしまう時もあるが、それでも分からない時は分からない。
そんなことを思っていると、ジンが何かを言いたそうにチラチラとこちらを見ていた。
「言いたいことあるならさっさと言えよ。溜め込んでても気持ち悪いだろ?」
「あぁ、うん。えっと、昼間はありがとう。フォルスのこと黙っててくれて嬉しかった。俺もあの時どうしたらいいか分からなかったから」
「お前はいつも落ち着いてるくせに土壇場に弱いからな」
ジークは笑うとジンも苦笑いした。
「あと、俺がヒューマのヒトを殴った時かばってくれたでしょ?覚悟はしてたけどハーフを蔑むあの目を直接見てたら正直キツかったと思う」
「ハーフが蔑まれてるって知ってたのか?」
「俺はクインシェルを出た後カイン君と一緒にいたからさ。サレやトーマからいろいろ聞いた」
「そういやそうだったな」
カインがユリスを再生して世界を滅ぼそうと6芒星を引き連れていたことがもう遠い昔のように感じる。
「イーリスに会いたくなっちゃったな。今頃何してるんだろ」
「帰るか?」
これはジークの些細な嫌味だった。
たとえ弟だろうと幸せ発言には苛立つものがある。
「こんな中途半端なところで帰ったら嫌われるだろうね」
イーリスの人格には二つあるが、どちらが出てきても結局は優しく軽蔑されるか、散々に罵られるかのどちらかで、ジンにとっての明るい未来等待っていなかった。
「それとさ」
ジンは話の流れを変えるかのように、体をジークの方へ向けた。
「兄さんはいつまでシスコンのフリを続けるの?」
「・・・・・・は?」
ジークもジンの方へ体を向ける。
「これまで黙って見てたけどさ、やっぱり無理があるんじゃない?」
「意味分からねぇな。シスコンかどうかは兎も角として俺はルルを大事にしているだけだ」
「だからそれが無理あるんだって。ルルも迷惑してんじゃん」
「あれはただの反抗期だ」
「じゃあさ、もしルルに好きな人ができたらどうする?いや、できてたらどうする?結婚したいって言ったら?」
「まずは相手を殴る。話はそこからだな」
「それはテンプレ・・・・・・いや、ただの受け売りにすぎないよね」
「なんだと!?」
ジークは拳を強く握りながら怒鳴るがジンは一歩も引かず冷静なままだ。
「ルルはもう1人でも大丈夫だよ。性格はあんなだけど、それでも兄さんを追って1人で集落を出たんだ。昔のルルなら考えられないだろ?」
「てめぇは迷いの森でルルに会わなかったからそんなことが言えるんだろうが!!」
何が起きたかはあらすじ参照です。
ジークとジンは睨み合い、しばらくその均衡が続いた。
しかし一瞬だけジンの耳がピクッと動くと彼は溜息をついてテラスから宿屋の廊下へと繋がるガラス戸をくぐった。
「言いたいことは言ったよ。あとはごゆっくり」
ジンはそのまま階段を下っていくとフィオナとすれ違った。
一方でジークもヒートした呼吸を沈めようと海を見ながら深呼吸した。
「こんなところで深呼吸?煙吸うわよ?」
ジークが飛び跳ねるように振り返ると、そこにはフィオナがいた。
「何でここに・・・・・・?」
「ん?あんたならここかな〜と思って」
フィオナにも読まれていた。
しかし彼女の場合ジークと同じで勉強で熱くなった頭を冷やしにきたら偶然会ったという可能性も否定できない。
「今日は自主練どうすんの?」
フィオナの言う自主練には特訓と勉強会の二つの意味が込められている。
しかし今日はバイラスの大群を退治したうえにサレとトーマとも戦い、そこまで体力は残っていない。
それを察して今日のブライトの授業も少し短目だったぐらいだ。
「今日はいいんじゃねぇか。それにもう勉強の方は大丈夫そうだしな」
ジークは授業中フィオナの様子を見ていたがきちんと付
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