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第33話『家族とピクニック』

「ワッシー先輩急いで!!」

チャリティとジークを足の鈎爪に引っ掛け、ワッシー先輩は大きな翼を2回、3回と羽ばたかせた。
羽が羽ばたく度に加速するのが分かる。
本来トンビやワシのような鳥類は大きな羽のおかげで風を捉えることができるため、滅多なことが起きない限り羽を動かすことはしない。
それが羽ばたくというのだからジークとチャリティのために最善を尽くそうとしてくれているのだろう。

「見えてきたぞ」

そうこうしているうちに港が見え、烈風を巻き起こしながら着地すると何やらざわついていた。

「兄さん!?姉さんも!」

港入口のゲートにてジンと運良く鉢合わせることができたが、ジンはえらく慌てており額にはびっしょり汗をかいている。

「ジン君、どうしたの?」

「ルルが・・・・・・」

あちこち走り回ったのか息も絶え絶えに何とか言葉を搾り出す。

「ルルがいないんだ!」

「マジかよ・・・・・・」

ジークはチャリティを見ながら驚いたような呆れたような奇跡のような複雑な心境だった。
しかしチャリティはみるみるうちに顔が青ざめていった。

「そんな・・・・・・じゃあさっきの夢はやっぱり・・・・・・。ねぇジン君、何か心当たりとかないの?」

「確証は持てないけど、さっき水の音が聞こえたんだ。もしかしたら・・・・・・」

それを聞いて4人はすぐ後ろを流れている川の橋の上に向かった。

「ここに落ちたってことか」

「いや、ただの石の音かもしれないし・・・・・・」

「んなことねぇだろ」

「そうね、ここで間違いないわ」

二人は確信していた。
ジンは気付いていないかもしれないが、ジンの耳は4姉弟の中で1番良く勘も鋭い。
常に全体を見ているため、ジークとチャリティは安心してルルを任せることができたのだ。

「ワッシー先輩、俺を下流に向けて投げてください。多分、飛んでいくよりそっちの方が速い」

ジークが言うとワッシー先輩は了解したと言わんばかりにジークを肩に乗せた。

「ジーク・・・・・・」

不安そうに見つめる姉をジークは見下ろす。

「そんなに心配しなくても・・・・・・」

「ルルちゃんを見つけても怒ったり、怒鳴ったりしちゃダメだからね!帰ってきた時にルルちゃんが泣いてたらぶっ殺すからね!」

「・・・・・・覚えてたらな」

ジークの中の何かが白けたがワッシー先輩は砲丸投げのようにジークを投げ、ジークは弾丸の如く下流へと飛んでいった。

川は思ったより深く、そして流れも速かった。
一度潜ってしまえば足が着く程度ではあったので着地した後、飛び跳ねて息継ぎをすることでなんとか凌ぐことはできる。
しかし川の流れとは海のものとは違い横だけではなく縦もあるため跳ねようとした瞬間下へ向かう流れに飲み込まれ、水を飲みそうになったりした。
そんな工程を何回も続けていれば体力の限界も近づいてくる。

「だ、誰か・・・・・・」

助けを請おうと口を空けた所為で水が口に入り呼吸が苦しくなる。
そんな時ちょうどジークが川の中を流される少女を見つけた。
あとは投げられた勢いを殺して川に飛び込めば助けることはできる。
ジークは空中で屈み、自分の足に手をかざして分解のフォルスを送る。
別に自分の足や靴を分解する訳ではない。
ジークは物質ではなく投げられた時に足に加えられたベクトルの向きを分解した。
下流方面へと向いていたベクトルを四散させると、まるで空中で止まっていたかのように真っ逆さまに川へと落下した。
しかしこれで良い。
ベクトルを分解している間にルルの真上まで来ていた。

(もう・・・・・・駄目・・・・・・)

最早川底を蹴る力も無く、ルルは上に手を伸ばしながら沈んでいった。
そして目を閉じようとした時、ドボンという音と共に水しぶきにより大量の小さな泡がルルの視界を覆った。
そしてその泡の中でルルは腕を強く握られる感触を感じた。
そのまま腕を引っ張られ胸に抱かれ川面へと浮上する。

「しっかりしろ!!」

声が聞こえたのと同時に空が見え、ルルは飲んだ水を吐き出しながら酸素を肺にかきこんだ。
ジークはルルを背中から羽交い絞めするような格好ながらも妹の無事を確かめると流れには逆らわないようにしつつ岸へと近付き、片手で岸部を掴んでからルルを陸へ上げた。

「ったく・・・・・・」

何で川の近くを歩いていたのか、何故ジンの側(そば)を離れたのか、等、怒鳴りたいことは沢山あった。
しかし姉に釘を刺されていたことを思い出し歯痒そうに後ろ髪をかいた後、ジークは膝を地面に付き、背中をルルに向けた。

「・・・・・・戻るぞ。どうせまだ歩けねぇだろ」

ルルの膝はガクガク震えていた。
ルルは座ったまますがるようにジークの肩に手を伸ばすとジークはルルの太ももまで腕を伸ばして立ち上が
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