ルルは無言でジンの服の裾を引っ張った。
「ん?」
振り返るとルルは今通ってきた道を指差しており、その指の先には通ってきた道を戻るようにしてバシャバシャと深い泥沼へと逆走していく兄の姿があった。
「あぁ・・・・・・」
考えることもなくジンは納得した。
こうしている間にも迷いなく泥沼に沈みながらも進んでいくジークの先にはもがき苦しむバイラスがいる。
ジークはあのバイラスを助けるつもりなのだろう。
ジンとルルは今最後尾列にいる。
ほんの少し別行動をとっても誰にも気付かれないだろう。
(兄さんの手伝いをしたいなら俺なんかを巻き込まないで素直に行けば良いのに・・・・・・)
一度溜息を吐いた後、方向転換する。
「兄さんが大変そうだから手伝いに行こっかな。ルルも行く?」
ジンは白々しさ全開で言うがルルは裾を掴んだままそっぽを向いた。
「2人だけじゃ大変だろうから・・・・・・行ってあげなくも・・・・・・ない」
ジンは笑いながらルルの頭を強く撫でた後、手を繋いでジークのあとを追った。
ジークとの距離はそんなに離れていなかったためジークが暴れるブラキオサウルスを押さえ込んでいる間に追いつくことができた。
「この・・・・・・大人しくしやがれ!!!」
必死に押さえ込むジークに対してブラキオサウルスのようなバイラスはなおも暴れ続けた。
そんな様子を見ながらルルは昔川で溺れた時、ジークに助けてもらったことを思い出していた。
あれが何時のことだったかは忘れてしまったが、当時はとても嬉しかったことは覚えている。
「死ね!」
面倒になったジークはブラキオサウルスのようなバイラスの頭を殴ると「キュイ!」と唸り声を上げて怯んだ。
その隙に手足を掴み、浅瀬へと放り投げた。
「強引だなぁ・・・・・・」
呆気にとられながらもジンとルルが眺めていると、ジークがこちらに気付いた。
「何しに来たんだ?」
「何って、手伝いにきたんだよ」
ね?とルルに同意を求めるがルルは顔を背けてしまった。
「お前、ルルまで巻き込んで手伝いに来たのかよ。すっげぇ機嫌悪そうじゃねぇか」
無言でアヒルようなバイラスを抱きかかえるルルを見てジークが言うと、ジンも首を傾げた。
「あれ?何でだ?」
どちらが巻き込んだのかは兎も角、ジークと合流した直後までは機嫌が良かったはずだ。
にもかかわらず今のルルはジンから見ても機嫌が最高に悪いように見える。
しかしいくら考えてもその原因が分からなかった。
「まぁいい。小さいバイラスを全部そこで気絶してるバイラスに乗せろ。そうすればそいつが気が付いた時に一緒に運んでくだろ」
「了解」
流石に湿原一帯全てのバイラスを救うことはできない。
しかし助けることができる範囲のバイラスだけでも何とかしようとフリィース兄妹は泥沼の中を歩き回った。
羽が泥を吸って飛べなくなった羽虫のバイラスも浮き藻の上に乗せ、羽を乾かさせる。
泥さえ乾いてしまえば後は自分で何とかするだろう。
「あっ!」
泥沼に足をとられ、ルルが転びそうになる。
するとそこへ咄嗟にジークが腕を伸ばしてルルの腕を掴み、自分の体へと引き寄せる。
「また溺れるなよ?」
「も、もう溺れないもん!!」
ルルは慌ててジークを突き放した。
バイラスを助ける時、昔は優しく助けてくれたというのに今では殴って大人しくさせる兄の行動に腹が立った。
しかし、過去に助けてくれたことを覚えててくれたということが嬉しくもあり、ルルとしては複雑な心境だった。
「そうだな・・・・・・昔とは違うもんな・・・・・・」
突き放したものの、何時もの、と言っても極最近の何時ものジークならば拒否しても気にも留めない表情をして頭を撫でてくるものだと思っていた。
しかし、今ジークは感傷に浸るかのように俯いている。
「もう良いだろう。流石にこれ以上ヴェイグ達と離れると心配かけちまう。俺達も先に進もう」
ジークはそれだけ言うと浅瀬へ歩いて行き、ルルも後を追うようにして浅瀬へと向かった。
「ジーク兄さん・・・・・・?」
何時もと違うジークに違和感を感じルルは首を傾げる。
その後暫くしてビビスタへと続く砂丘と湿原の境目の、大地が安定している地点にてフリィース兄妹はヴェイグ達と合流した。
「ティトレイにも言ったが、あまり離れるなよ?」
心配をかけてしまったようでユージーンに説教されたが、どうやらティトレイも離れていたらしい。
笑いながら謝るティトレイを見てみると彼もジーク達同様に泥まみれになっていた。
「ジークさん達もティトレイさんと同じで転んだんですか?」
「は?」
アニーの質問にジークとルルは首を傾げる。
が、そこへすかさずジンが割って入った。
「そ、そうなんだよ!突然兄さんが転ぶ
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