「ねぇ、ジークは?」
フィオナはカインに訊ねると、期待通り答えはすぐに返ってきた。
「ティトレイと買い出しに行ったよ?」
「買い出し?・・・・・・どこに?」
フィオナの脳内に?マークが浮かぶ。
ここは宿屋のロビーだが、食材もアイテムも全てここで売っている。
買い出しと言っても何処へ何を買いにいくというのだろうか。
「僕も同じこと聞いたんだけど、ここら辺のバイラスから取れる素材も集めにいくんだって」
「それって!!」
フィオナは宿屋を飛び出して行った。
(それってつまり特訓ってことじゃない!!)
フィオナは昨晩、結局二人の特訓はどうするのか答えをハッキリ聞いてない。
それを聞くためにジークを探していたのだが、自分を差し置いて特訓に行ったことにどうも苛立ちを覚えていた。
(でも本当に素材集めのためだけなのかしら・・・・・・)
そう思うとフィオナの足は止まりそうになる。
(本当に素材集めだけなら手伝えば良いのよね!)
自己完結させ、少し遠くに見える大きな塔をとりあえず目指すことにする。
そしてその塔の真下ではジークが口を開けて見上げていた。
「うっし!扉は空いてるみたいだな!」
ティトレイは中を確認するなり入るように手で招いた。
「ここが神殿なのか?」
「クインシェルでケナードさんが聖獣の話をしてただろ?ここは聖獣の1人、フェニアがいたところなんだぜ?」
「なるほどな・・・・・・」
以前にピピスタを通った際、ナッツに化けていたヤコに巨大な鳥が住む聖殿があると聞いたが、ここのことだったのかとジークは何か感慨深い気持ちになった。
これが恐らく遺跡巡りをする旅行者の気持ちなのだろう。
「フェニアの像とか無いのか?」
「像はさすがにねぇな〜。あ、でも紋章みたいのなら最上階にあるぜ?」
「ゴールは最上階か。修行っぽくて良いんじゃねぇの?」
ジークが気合を入れるようにリストを締め直すと、ティトレイもにかっと笑った。
「この先の部屋は仕掛けがあるんだ。それを解除してくるからジークは待ってな」
どうやらその部屋だけはバイラスも出ないらしく、ティトレイは1人走って行ってしまった。
「やっ」
待っている間どうしようかと思ったが、不意に九本の尻尾を揺らすヤコがジークの隣に出現した。
「・・・・・・ホント、唐突に現れるよな」
「じゃあ今度は耳元で囁いてから具現化しようか?」
「それは遠慮する」
「そう。それより、さっき私のこと考えてたでしょ?」
ヤコは頭だけを残してお辞儀をするように状態を曲げ、悪戯っ子のような笑みを見せる。
「・・・・・・ヤコって本当は相手の心を読むフォルスなんじゃねぇの?」
「あら?当たっちゃった?」
ヤコは姿勢を戻すと口元に指をあて、クスリと笑った。
「ちょっと嬉しいかも」
ジークは決まりが悪いように舌打ちをして目を逸らした。
「つうか、こんな堂々と姿見せて良いのかよ?影の中からナイラが監視してたらどうすんだ?」
「それは多分大丈夫かな。今は」
ヤコはジークの影に視線を落とした後、またすぐジークの目を見つめた。
「それより今は君。どうしても今、君と話さないといけないの」
「・・・・・・どういうことだ?」
ジークが眉をひそめて訊ねると、ヤコは一度自分たちの右手にある入口の扉を見た。
左手の通路の先にはティトレイが向かった仕掛けのある空間がある。
ヤコは再び、ジークに視線を戻すと憂うように手を頬にあてた。
「今の状況のほうが私にとっては嬉しいけど、それだとユリスが滅ぼす前に世界が滅んじゃうから」
よく分からないがヤコが呆れていることだけは分かり、それだけにジークは腹が立った。
しかしヤコがおもむろに腕を伸ばし、ジークの手をそっと握ると胸の鼓動が高まるのを感じた。
「だから、今は君が1番やりたいことを、してあげたい人のためにしてあげて。自分の気持ちに嘘をつくのも、誤魔化すのもダメ。私のことはジークの心の整理が付いてからで良いから」
ヤコは少し残念そうに微笑む。
すると紅塗りの赤いクマが際立って綺麗に見える。
「ヤコ・・・・・・」
なんだか、胸の中の霧が晴れたような気分だった。
一方、フィオナは塔の前で誰かさんと同じように口を開けて見上げていた。
(高・・・・・・。ようやくカイトから開放されったってのに、ここに居なかったらどうしてくれようかしら?)
確かにカイトとの久しぶりの会話はとても楽しかった。
しかし流石に1日中ともなるとフィオナも疲れてしまう。
ちょっと水を飲んでくると言って抜けてきたものの、何故私がそんな嘘をつかなければならないのか。
そもそも昼間もジークがパーティを離れ、ルルとジンが手伝いに行くのをチラっとだけだが見ていた。
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