左半身が凍結したリヒトモスインセクトがゆっくりと降ってくる。
地面では落下してくる女王の氷を溶かして更に鋼のコーティングを施すためにリヒトワームが炎系の導術を詠唱している。
相手は体育館程の体長をもち、最早視界に全長は収まりきらないがそれでもティトレイ、カイン、ジークの三人はティトレイを中心にして跳躍した。
「翔連脚!」
ティトレイは最早視界が紫一色にそまる中その広大なボディに空中で回転しながら右足のカカトで蹴り飛ばした後左足のつま先で同じ箇所を蹴り飛ばす。
「飛燕連脚!」
ジークはティトレイの右側、まだ生きている右翼の付け根に三連の蹴りを叩き込む。
「連牙弾!」
カインはティトレイのすぐ左側、ボディの凍っている部分との境目に散発の蹴りを入れる。
三人の下からの同時攻撃によりリヒトモスインセクトの落下が一瞬止まる。
そして、足を負傷しているジークとカインは顔をしかめるとそのまま地上へ着地するため落下するがティトレイの体が熱くなる。
今回ユージーンが提示した作戦はまずジンが道を切り開き、その道を閉じさせないようにユージーンが先導するというものだった。
そしてジンが作った道とリヒトモスインセクトが重なった時、ブライトが敵の動きを止め高度を下げさせる。
そうしたらヴェイグが敵の動きを封じる。
ここまでは作戦通りに進んだ。
そしてここからが重要なポイントになる。
ヴェイグが敵の動きを止めることにより落下すると再びリヒトワームに溶かされるため、ジークとカイン、ティトレイの三人で止めるのだが最終目的はそれではない。
リヒトモスインセクトの落下を止めた直後、今度は打ち上げ天井へ打ち付けることで洞窟を崩壊させることが今回の作戦の最終目的である。
しかしジークとカインはリヒトワームの攻撃により足を負傷しているため高い攻撃力は望めない。
そのため、この作戦におけるキーマンはティトレイであった。
この責任重大ともとれる状況にティトレイはワクワクしていた。
作戦の成功も失敗も自分にかかっている。
こういった状況になると俄然燃えるのがティトレイという男である。
ティトレイは自分の体の奥から熱いものがこみ上げて来るのを感じながら空中で更に体を回転させる。
「飛連!斬空脚!!」
カカト、つま先とティトレイの奥義がリヒトモスインセクトにヒットするたびにピストルが撃たれたかのような音が洞窟に木霊し、巨体がくの字に屈曲しながら天井へと登っていく。
「うおおおおおお!!!」
リヒトモスインセクトの背中が天井スレスレまで届いた時、ティトレイは渾身の力を振り絞って胴体を蹴り上げる。
「ぐぅっ!!」
しかし天井を打ち破れない。
更に腰に痛みが走り足に力がうまく伝達しない。
そこでようやくティトレイは自分もリヒトワームの鋼の頭突きを腰にくらっていたことを思い出した。
「ちっくっしょおおおおお!!!」
そろそろ助走した勢いが消える。
ティトレイは悔しさのあまり奥歯を噛み締める。
「ティトレイ!!」
不意に、背後から声がした。
直後、ティトレイの両脇からジークとカインがリヒトモスインセクトを蹴り上げる。
地上ではヴェイグとユージーンが見上げている。
二人がジークとカインを上へ飛ばしたのだろう。
「「「ォォォおおおおおおおお!!!!!!」」」
三人の咆哮が洞窟内に木霊し、天井はミシミシと音を立てる。
そして、ついに亀裂が入るとあっという間に広がった。
三人は着地すると、ヴェイグ達は既に来る時に通ってきた小さな洞穴へ向かっていた。
「急げ!崩れるぞ!!」
ユージーンに言われるまでもなく三人は洞穴へ走り、トンネルへ入った直後に重い音と地響きを立てながらリヒトモスインセクトが落下した。
同時に洞窟の崩壊も始まり大きな岩がリヒトモスインセクト達を押し潰していく。
だがそんな様子を観察している暇はなくトンネルが塞がれる前にヴェイグ達は縄梯子があった地点まで全力疾走する。
地響きでバランスがとりにくく、ヴェイグ達を追うようにトンネルは崩壊していく。
そして、縄梯子のある地点まで辿り着いてみると崩壊の影響か来た時よりも穴が広がっていた。
入る時は人一人分が通るだけで精一杯の穴だったが今は8人全員を太陽が照らしている。
「梯子が……ない……」
カインが絶望する足元に縄梯子は転がっていた。
穴が広がった時に落ちてしまったのだろう。
だが今から地上へ投げてる時間も余裕もない。
「全員固まれ!!」
ユージーンの号令に従い、7人は組み合うようにユージーンの周りに固まった。
「むぉおおおおおお!!!!!」
ユージーンが地面に手をつき、フォルスを急速に流す。
すると、地面が隆起しエレベーターのように上昇した。
まるで穴を塞ぐように隆起した鋼の地面
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