「グラビティ!!」
ブライトは詠唱を終えると銃口をリヒトモスインセクトへ向ける。
瞬間、全身銀色の蝶は前へ風に送るように大きく羽を動かすとその翼力により一度の羽ばたきで大きく後退した。
すると重力震は蝶の眼前に発生し先程までリヒトモスインセクトが飛んでいた箇所の地面をへこませた。
「外したのか!!」
グラビティで落ちてきたところを狙っていたジークは口に出さずにはいられなかった。
重力震が消えた直後、リヒトモスインセクトは今度は自分の番だと言わんばかりに体勢を斜め下に向け始めた。
頭の触覚がジーク達に向いている状態に彼等の脳裏に嫌な予感がよぎる。
その予感を裏切ることなくリヒトモスインセクトはジェットエンジンを積んだジェット機のように羽を広げた状態で突進する。
下からみる巨大な蝶が迫ってくる様子はジャンボジェット機が迫ってくる様子そのもので大量の空気が上へ押しあげられるため突風が吹き荒れる。
しかし突風に耐えているだけでは迫る銀翼に切り裂かれるか、巨体と衝突してミンチになってしまう。
だったらどうするべきか。
ジーク達は少しでも横に回避しようと左右それぞれへ跳躍する。
その際上へ上がる突風に巻き込まれ一人残らず上空へと舞い上がる。
そのおかげでリヒトモスインセクトは舞い上がったジーク達の下を素通りしていくが、風が突然止むとジーク達は地面に強く叩きつけられる。
そしてリヒトモスインセクトは空中で旋回しジーク達に向き直ると銀翼から突風を巻き起こす。
今度は先程の竜巻ではない。
攻撃のための突風であった。
フィオナが打ち消そうにも地面に打ち付けられた痛みからまだ扇を開けていない。
突風がジーク達を包むとその中には銀色の刃、おそらく蝶の羽の破片が混ざっており服を切り裂き肉までも切り裂いていった。
「はぁ…はぁ……」
ユージーンが立ち上がると全員所々から血が流れ、肩で息をしていた。
「さすがに次同じ攻撃がきたらやばいかも……」
カインが苦笑いしながら言うと、ブライトは悔しそうに俯いた。
「すまん。次は当てる……」
自分で言って嫌になるほど自信の篭っていない言葉だった。
当てられる保障はどこにもない。
先程のグラビティも詠唱はとっくに終え、絶対に当たるタイミングを見計らってからの発動だった。
最高のタイミングで放った自慢の一撃を軽々とかわされた精神的ダメージは計り知れないものだった。
「先生、当てなくても良いよ?」
弱々しく、傷だらけの体で、恐怖心と戦いながらルルは言う。
「わ、私が、何とかするから!!」
「……ルル」
ブライトは無意識に小さな背中の女の子の名前呟いていた。
すると、ジンが震えるルルの肩に手を添える。
「さっきも言っただろ?俺も手伝うって」
ブライトはふっと笑う。
直後、拳銃を持つ手で自分の顔を殴った。
その様子を見てついに頭がどうかしてしまったのかと全員ぎょっとした顔でブライトを見た。
「てめぇら俺を誰だと思ってんだ?二回も外さねぇよ」
ブライトは鼻血を垂らしながら言い切った。
「ブライトさん」
隣にいるアニーに呼ばれ、右を向くと二人はアイコンタクトを交わした。
そうこうしている間にもリヒトモスインセクトは再び突風を送ってくる。
「えぇぇい!!」
今度は扇を開ききっていたフィオナは負けじと突風を送る。
しかし肩の傷が痛んだのか顔をしかめるとリヒトモスインセクトの出した突風の半分にしか満たなかった。
「切り裂け!ウィンドスラッシュ!」
マオが咄嗟に詠唱に入り援護するとフィオナの突風と交わり巨大化し、リヒトモスインセクトの突風を打ち消した。
「お願いします。パワークラフト!」
アニーは誰もいないところで陣を展開し布石を打つ。
そしてブライトも既に詠唱に入っていた。
「はぁぁぁ……」
アニーは一度神経を集中させると先程展開した陣が収束するように消滅する。
そして、くるっと一度回転した後杖を地面に突き立てる。
「お願い!」
アニーの周囲から風が巻き上がるが陣は展開されない。
その代わりに巨大な雨雲が辺り一体に急速に広がったかと思うと土砂降りの雨が降り出した。
「なるほど、そういうことか」
アニーの意図を理解したヴェイグはリヒトモスインセクトの真下へ潜り込んだ。
それに倣いジーク達も真下へ集結する。
肝心のリヒトモスインセクトはアニーの奥義、ペイン・レーゲンにより動きが止まっていた。
「深淵に誘いし星の力。グラビティ!!」
雨が降りしきる中、ブライトが銃口を向けると同時にリヒトモスインセクトは見えない力に押さえつけられるかのように地面に叩きつけられた。
大きな重量が沈んだだけあって激しい地響きと地鳴りがあったが雲が消え、重力波が消えた瞬間を狙ってヴェイグ達が一
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