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第46話『イゴルとクウ・ホウ』

ヴェイグ達は湿地帯を抜けると木製でできた小さな橋を渡ると緑の新芽が芽吹く緑の大地へ足を踏み入れた。

「やっと湿地を抜けたか〜」

ジンは橋の向こう側を振り返りながらブーツの泥を落とすが、ヴェイグ達6人に加えジークとカインの8人は不思議そうな顔をして足元とその先にある渓谷を見つめていた。

「何か気になることでもあんの?」

ジンはジークに訪ねるとジークはカインを見た。

「俺達が前に来た時は杉が多かったっつうか、もっと茶色だったよな?」

「うん」

ジークとカインの問答を聞いてユージーンが唸る。

「やはり俺達の予想通り、ここでも季節の変化が生じてるようだ。しかも、つい最近にな」

ジークがカインを追ってここを通ったのは2、3週間前の話だ。
その時はまだヴェイグ達の知るキョグエン近郊の季節の風景だったことから、ここの季節が変化したのは少なくとも3週間は前だということが分かる。

ヴェイグ達12人は暖かい風を肌で感じながら夕日を背に渓谷を抜け、半分の月が昇る頃キョグエンへと到着した。

「やっ……なんだこりゃー!?」

ティトレイはキョグエンに着いてそうそう「やっと着いたぜ!野宿しなくてすんで良かったな!」と言う気持ちでいた。
しかし街に着いて早々ティトレイの目に入ったのは桃色や紅色といった鮮やかな色の木々が並ぶ夢のような風景だった。
普段ならば枯葉が舞い散り地面には紅葉の絨毯がしかれているのだが、今は桜の花びらが月の光の下でヒラヒラと舞っていた。

「……きれい」

幻想的な景色を前にアニーはつい言葉に出してしまう。
ルルもまるで吹雪のように舞っている花びらの一枚を掴むと掌の上に乗せ目を輝かせた。

「こんな中でお酒を飲んだらさぞや美味しいでしょうね」

「うわ、なんか台無し……」

ヒルダの一言で一気に興が冷めたフィオナは肩を落とした。

「これで黒い霧がかかっていなければ最高だっただろうな」

今まで気にしないようにしていたがヴェイグの一言で今まで見えるか見えないか程度だった黒い霧を急に意識してしまい、月下に照らされる桜が黒くくすんで見えるようになってしまった。

「ヴェイグ、あんた……」

さすがのヒルダの興も冷めたようでヒルダは額に手を当て呆れた。

「おい!さっさと宿屋へ行って休もうぜ!もうクタクタだぜ〜」

ブライトは既に入り口から遠く離れた赤い橋の上からこちらに声を張り上げており、気付けば男性陣は全員橋の上にいた。
何ともデリカシーの無い男性陣に女性陣は溜息を吐きつつ、桜並木の間の道を歩き始めた。
左手に広がる湖畔を視野に入れながら並木道をほどなく歩いていくと分かれ道があり、ここを左に曲がればブライト達が待っている赤い橋があり、まっすぐに行けばオークション会場等がある。
今回は左に曲がると直後に赤い橋がかかっており、湖畔の中央に浮かぶ島へかかっていた。
橋の中央にて男性陣と合流し、湖畔の北側を見ると湖の畔(ほとり)に設置されていたのであろう倉庫が、瓦礫の状態のまま放置されているのが気になったが橋を渡り切るとすぐに宿屋が待ち構えていた。

「まだ空いていると良いんだが……」

時間も時間なため、12人が泊まるスペースがあるか稀有しつつもヴェイグは横開きの木製扉を開く。
ドアを開くだけでキョグエン名物の中華まんを蒸かす香りが漂ってきた。
しかし、ヴェイグは扉を開けたまま中に入ろうとはしなかった。

「どうしたの?ヴェイグ」

マオは小さい身長を活かしてヴェイグの腰辺りから顔を出し、中を覗いた。
すると、宿屋の中はロビーから既にガジュマで埋め尽くされていた。
さらによく見てみると全員高級そうな服が汚れており、怪我をしているヒトさえもおり宿屋は殺気で満ちていた。

「ヒューマの姿がないね」

マオはヴェイグを見上げながら言うがその瞬間に小さく開けていた扉が中から大きく開かれた。

「何の用だい?」

扉を開けたガジュマのおばさんはエプロンをしており、どうやら宿屋の店員のようだった。
しかしガジュマのおばさんはヴェイグとマオ、その他面々を眺めてから眉を吊り上げた。

「うちはヒューマはお断りだよ。勿論ハーフもね。どうしても泊まりたいってんなら裏を訪ねるんだね」

おばさんは今ヴェイグ達の後ろにある赤い橋のある方角とは逆の方角を親指でさしてから扉をピシャリと閉めた。

「なっ!?」

フィオナは怒りが爆発し、怒鳴ろうとしたが砂漠と湿地越えで怒鳴る体力はさすがになかった。

「や、やってらんないわね、もう……」

とりあえず大きく開けた口の体裁を保つため、苦し紛れに愚痴を漏らしてからフィオナを先頭にして宿屋の裏へ周り込み、対岸へと繋がれた赤い橋を渡った。
橋は巨大な民家の入り口と繋がっており、その民家に扉というものはなく全
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