「あんたらとはもっと早く会うべきだったぜ。まさかあのフィレンツェって娘がユリスの仲間だったなんてな……」
イゴルは悔やむように額の黄色いバンダナをクシャっと握った。
「この街の気候がおかしくなったのもユリスの影響なのか?」
クウ・ホウが訪ねるとユージーンは首を横に振った。
「いや、それはまた別の問題が起因していてだな」
「フィレンツェは今どこだ?」
ティトレイが苛立ちを隠そうともせず問いかけるがクウ・ホウは首を横に振った。
「ヒューマとガジュマが乱闘を始めた辺りから何処かに姿をくらましたのか見ていない」
ティトレイは舌打ちしながら掌に拳をぶつける。
「だがヤツは明日必ずオークション会場に現れるはずだ」
「なぜ言い切れる?」
ユージーンが問うと、イゴルはまた悔しそうな表情をして奥歯をかみしめた。
「議論の続きと人質の受け渡しがあるんだ。議論の続きと言っても、こっちはもう無条件であっちの提案を呑むしかないんだけどな」
「人質?」
マオは首を傾げる。
「二つの種族の間に入って乱闘を止めてくれたハーフの男がいたんだ。そいつのおかげで俺達は誰も死人が出ずにすんだんだが、一瞬の隙をつかれてそのハーフがガジュマ達に捕まっちまったんだ」
この時、ヴェイグ達はそのハーフの男に感心し、興味を抱いた。
乱闘にフィレンツェが関わっているということは思念が影響していることは間違いない。
ヴェイグ達は思念によって突き動かされたヒト達とバルカにて対峙したがとても止めるどころの話ではなかった。
それをハーフの男は1人でやってのけたというのだ。
結局捕虜になってしまったことを考えると少し抜けているところもあるようだが、一度会ってみたいと思った。
「そのハーフはどこで捕まってるか分かるか?」
ヴェイグは助けに行く気満々の調子で訪ねた。
表情はクウ・ホウと良い勝負ができる程に変わらないが、言葉の抑揚から気持ちが出ていた。
クウ・ホウは頷く。
「あんたらがここまで来るまでに宿屋を通ってきたと思うんだが、今そこはガジュマ達が占拠している。そこにハーフもいるはずだ」
「さっきの中に居たんだ。無理してでも入っちゃえば良かったね」
ジンが冗談半分に言うと、イゴルは首を横に振った。
「いや、そうしてまた騒ぎを起こすと彼が人質になった意味がない。悔しいが明日まで待ってくれ」
明日オークション会場にて行われる取引にはフィレンツェももう一度乱闘を起こさせ、思念を膨張させるために必ず現れる。
今はその時を待つしかない。
「それに、結果はどうなろうが決着は明朝の取引で着く。午後からは外部の客も招いたオークションが控えているからな」
「こんな時にもオークションやるのか?」
ブライトが呆れながら言う。
「貴重なお宝が流れてきたのでな。むしろ明日も再び乱闘になった場合、商品が巻き添いを食わないかのほうが不安だ」
そんな話をしていると、カランコロンと草履の音を立てながらピンクの着物を着たヒューマの女性がこちらに歩み寄ってきた。
「話は聞かせてもろたわ。うちも手伝わせてもらおうかしら?」
ピンクの髪を揺らしながら小首を傾げる女性の着物には桜の木の刺繍が入っており、生地の染め上げ方、質感からして高級なものだということはすぐに分かる上物だった。
「あんた、ここの人間じゃないな」
クウ・ホウが言うと女性は片手で口元を隠しながらクスリと笑った。
「そないよ。ウチもオークション目当てに来やはったんやもん。せやかて、そんオークションが危うい言うならあんたらに協力させてもらうって言うてるんやないの」
「しかしあんた協力するって言っても何ができるんだ?乱闘になったら女のあんたじゃかえって危険だろ」
イゴルが男女差別的なことを言うと着物の女性は困ったように頬に手を当てた。
「そやねぇ、もともと暴力は好きではおまへんし……。やて商品を護るくらいはできると思うわ」
「そ、そうか。ならば対談中は倉庫の前の警護を頼む」
さすがのクウ・ホウも動揺しながら依頼すると、着物の女性はニコリと笑って了承した。
「でも人質さん、大丈夫かな?今頃乱暴とかされてるんじゃ……」
「それなら大丈夫だと思うよ?人質は明日の交渉のために必要なんだし、向こうも下手なことはできないはずだよ!」
マオは宿屋の方を見ながら言うと、ルルは胸を撫で下ろした。
「とにかく問題は明日だ。今日は休んでいってくれ」
クウ・ホウの言葉にヴェイグ達は頷いたがどうも落ち着かないため一通りアニーの手伝いをした後、床に着いた。
そして明朝、宿屋からガジュマ達が赤い橋を渡りオークション会場に向かうのを見計らってからヒューマ達もオークション会場へと向かった。
オークション会場の外見は天下一武
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