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第56話『ノルゼンと想い出』

「それで、どうやって下山するんだ?」

ヴェイグ達は低空飛行するユーフォーを連行するかのようにプランターを引きずりながら、昨日ここにきた時に着地した魔法陣のような紋様が描かれている庭園の先端に来ていた。

「わ、私1人なら、何とかなるんですけど……あの、12人はちょっと……」

ニノンは申し訳なさそうにもじもじしている。
小屋を出発する前、ニノンにどうやって下山しているのか聞いてみると『羽』のフォルスを利用しているとのことだった。
自分の体を軽くしてから飛び出し、その後は自分の両翼を駆使して紙飛行機のように麓へ下山するという何とも大胆なことをしていた。
しかしそれは翼を持つニノンだからこそできる芸当であり、同じガジュマのユージーンやブライトもできるかと言われれば二人は首を横に振るだろう。
一番の問題はやはり高所に吹き荒れる風である。
今こうしている時も風の音が鳴り響き、ヴェイグの長髪もなびいたまま落ち着く様子がない。
そんな状況で羽のフォルスを使用し落下すれば紙吹雪のように全員明後日の方向へ舞っていってしまうだろう。

「来る時のようにブライトさんに風を遮断してもらえば良いんじゃないですか?」

「……あ?」

アニーは笑顔でブライトに言うとブライトはプランターに向けていた視線を上に上げた。

「昨日の今日でブライトには負担をかけてしまうが他に手はない。頼めるか?」

ユージーンの言葉を聞いてブライトは鼻で笑う。

「俺はなぁ、頼りにされるのは好きだが当てにされるのは大っ嫌いなんだよ」

「ごめんなさい!!わわわ、私がっ……もっとフォルスを、つ、使いこなせていれば……」

ニノンが羽をパタパタさせながら涙目になる。
するとブライトは舌打ちし、後ろ髪をかきながらニノンに歩み寄るとニノンの頭に彼の大きな手を乗せた。

「お前はもっと自信を持て!お前やカインとは逆に人を傷つけることにしかフォルスの使い道を見出せねぇやつだっているんだ。悔しいが俺よりこいつらの役に立つことだってできるんだ!この教師の俺よりもだ!だから……俺のためにもそんなに自分を過小評価すんじゃねぇよ」

ブライトは最後に優しく微笑んでから円陣が描かれている庭の端に立った。
眼科には垂直にも見える急勾配の山肌が広がっている。

「だがまぁ自信を持つったって難しいよな?特にニノン、お前はな。だったら作れば良い。壁ってのは壊すだけが全てじゃねぇ。それを階段にして進むのも俺はありだと思う。どんなに小さな壁だって構わない。ただ、お前が積んだ実績は確実に自信に繋がる。その証拠にヴェイグ達と仲良くなれた実績があったから街へ降りれた。自信があったからヒトと話せた。その実績と自信が今こうして俺達と一緒にいることに繋がっているとは思わねぇか?」

ブライトは両手を目の前にかざしてから後ろにいるニノンに振り返る。
もう風の音はしない。

「覚悟しろよ?実績がたくさんできすぎて笑い死ぬことになっても俺は責任をもたねぇからな。ただし、作り方が分からない時は俺に聞け。ヒントぐらいは出してやるからよ」

ニノンは体の中から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
全身の羽が逆立つような感覚。
これは以前まで毎日のように感じていた恐怖とは違う。
しかしニノンはまだその感情の正体を知らない。
いや、忘れてしまっている。

ニノンは羽を拳を握るかのように丸く握り締め、笑顔を浮かべる。

「は、はい!」

「良い返事だ!んじゃ、さっそく最初の仕事だぜ?」

ニノンに恐怖心はもうない。
彼女は一回深呼吸するとブライトが立っている調度前の辺りに翼をかざす。

「ねぇ、何時の間にか先生がニノンを元気付けてるけど、そもそもは先生がさっさとフォルスを使ってくれればニノンも困らずに済んだんじゃ……」

「尊厳とかあるんじゃない?ホント、世話が焼けるわね」

ジンとヒルダはやれやれといった感じで肩をすくめた。

「み、皆さん!ブライト先生の前から飛んでください!は、跳ねた瞬間にフォルスをかけるので一人ずつお願いします!」

「何時の間にか呼び方がブライト『先生』になってるな……」

ヴェイグは微笑ましくニノンの背中を見つめる。
しかし全員同じように見つめているため誰も飛ぼうとしないことにニノンは不安になりキョキョロし始める。

「てめぇら早くしろ!!俺のフォルスは無限じゃねぇんだぞ!?」

ブライトに怒鳴られたことでヴェイグ達はようやく我に帰り、ジークから順にブライトの目の前で踏み切り、ニノンのフォルスにより適度の重さになった体が風船のようにゆっくりと銀世界へと落下していく。

     *   *   *

最後にニノンが着地し、プランターがきちんと地面に接地していることを確認した後フォルスを解除する。
すると、体に重
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