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第57話『変化と曇天』

ギュナルスが剣を振るう手首をジークが抑えるという状態のまま2人は硬直している。
ジークが次の攻撃に移るために手首を握る力を少しでも緩めればその瞬間にギュナルスは手首を返し、ジークの腕を切断する。
先程からジークの脳裏にはそのイメージが焼きついていた。
対してギュナルスはそのプレッシャーを楽しむかのようにあえて動こうとしないようにしていた。
そのため、11人も武器を構えたまま下手に動けない。

「お父さん、もう止(や)めようよ……。こんなことしたってお母さんが帰ってこないことぐらい私にでも分かる!」

まくし立てるようにフィオナが怒鳴るとギュナルスは力を緩め、ジークの後ろにいる11人の仲の1人、フィオナの顔を見た。
その隙にジークはバックステップで背後に飛び、隊列に戻る。

「では逆に訊こう。何もしなければ母さんは帰ってくるのか?」

「それは……」

そんなことは有り得ない。
極常識なことである。
今している問答はそんな常識的な会話であり、逆にそんな常識的な会話をしなければならないほど既にギュナルスは壊れかけていた。

「私はなぁフィオナ、ヒトが憎いからユリスの元にいるわけではないのだよ。この世界が憎いんだ。お前の母さんがいなくても、私達にとって大切な世界の一部分だった母さんがいなくても平然と、何食わぬ顔で廻り続けるこの世界がどうしようもなく憎い。そしてこの世界は間もなくユリスの手によって一掃される。ならば今ヒトが1人死のうがそれは早いか遅いかの違いでしかないのさ」

「違う!!」

フィオナは拳を強く握り閉め、叫ぶように声を張り上げる。
フィオナはギュナルスを説得して一緒に帰るために旅をしてきた。
そしてようやくギュナルスと話す機会がまわってきた。
彼を説得するなら今しかない。
それが分かってるからこそヴェイグ達も攻撃をしかけないで待ってくれている。
フィオナは一生懸命脳を回転させ、自分の言葉を探し出す。

「私のお父さんは……私のお父さんはそんなヒトじゃない……少なくとも、ヒトを殺しても何も思わないヒトじゃなかった!」

ギュナルスは一瞬視線を上に上げる。
そして肩の力を抜き、やさしく微笑みかける。

「フィオナ、お前の言う父というのは誰だ?家庭を重んじ、誰よりも家族を愛する男のことか?」

「そうよ?私のお父さんは優しくて強い、私にとってのヒーローなんだから!!」

「……そうか」

ギュナルスは再び空を見上げる。
言葉は届いている。
フィオナは確信しながら言葉を紡ぐ。
が、その前にギュナルスが残酷な口を開く。

「ならば早々に諦めることだフィオナ。そのような男はもうこの世にはいないのだからな」

フィオナは涙を目に溜めたまま言葉が出せない。
何を言えば良いのか、否定してその後どんな言葉を紡げばいいのか分からない。

「ヒトは変わるのだよフィオナ。この世界、この雪の降らなくなった街のようにな」

その変化の象徴とも言える真っ二つになった人魚像の上半身をギュナルスは踏みつける。
まるで一縷の望みを信じていた心を踏みにじるかのように。

フィオナが両手で顔を覆い隠しながら地面に膝を着く。
その音と同時にジークはギュナルスの懐に入る。

「どうした?自慢のスピードも雪の上では出せないか」

ギュナルスは既に剣の切っ先をジークに向け眼球を突き刺す。
しかしジークは首を僅かに傾げながらそれでもスピードを緩めることなく切っ先を頬にかすめながら、右手をギュナルスの口へ伸ばす。
そして口を抑え込むようにギュナルスの顔面を鷲掴みにしたまま雪原に押し倒した。

「……もう黙れよ。フィオナが泣いちまう」

ギュナルスの顔からミシミシミシ!という骨の軋む音が鳴り始め、ギュナルスは仰向けになった状態のままジークを蹴り上げる。
ジークはギュナルスの膝が腹部に当たる寸前に後ろへ大きく跳躍し、ギュナルスはなおも平然な顔をして雪を払いながら立ち上がる。

「フィオナ!まさかもう諦めたんじゃねぇだろうな!?まだやれることは残ってんだろうが!!」

フィオナは膝を折ったまま立ち上がろうとしない。
その左右をルルやヒルダがギュナルスに向かって駆けて行く。

「ふむ、貴君等とは気が合いそうだ。話し合いよりも殺し合うほうが単純であり明快だ。貴君等を片付けた後の方が住民も殺しやすいだろうしな」

「勘違いをするな!」

ヴェイグは大剣を振り下ろすがギュナルスは横へ身をよじることでかわす。
直後剣を振ることで雪を巻き上げるとティトレイ、カイン、ユージーンの視界を塞ぐ。
そして大剣を振り上げようとするヴェイグの大剣を踏みつけ、剣で貫こうとするが突如後ろへ大きく下がりヴェイグとの距離をとる。
するとヴェイグの眼前に閃光の雨が降り注いだ。
舌打ちするヒルダの隣ではマオとブラ
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