「何?」
フィオナはとりあえず聞いてみたが聞かずとも自分を心配して追ってきてくれたことくらい分かっている。
では何を期待しているのか。
これ以上、一体なにを。
「お前、1人で抱え込んでねぇか?」
フィオナの鼓動が一瞬強くなる。
「また……私のフォルスで聞こえちゃったのね……」
いつもジークのフォルスは不安定だと言っているが、フィオナも安定しているわけではない。
予想外のところで心の『声』が周囲に聞こえてしまい、それで助かった時もある。
しかし、今のように余計なところで聞かれては迷惑なだけである。
だがジークは首を横に振った。
「違う。聞こえねぇからこうして直接聞いてんだ。俺はいつもフィオナの『声』を聞けるわけじゃねぇんだぞ」
「そっか……」
何故か、少し寂しさのようなものを感じた。
さっきまで『声』が勝手に聞こえてしまうのは迷惑だと思っていたはずなのに。
しかし、ジークはこうして直接聞きに来た。
ならば、その誠意には応えても罰は当たらないだろう。
「でも、私も分からないの」
「自分の気持ちがか?」
「それもあるけど……どうするべきなのかも」
「お前はギュナルスを説得して連れて帰るって何回も言ってたじゃねぇか。それなのに何を今更悩むんだよ?」
「今更じゃない……今だからよ」
フィオナは拳に力を込める。
「だって『あの』お父さんよ?今のお父さんは話が通じる相手じゃない。それが今回戦ってみてようやく分かった。だったら捻じ伏せてからじっくり話そうっていうヒルダの言い分にも賛成できてる。でも……それじゃだめなのよ」
フィオナは悔しさを隠すように目を伏せると、ジークが歩み寄る。
「ダメって、何で?」
「そんなの、みんなが優しすぎるからに決まってるじゃない!!」
ジークを近付けさえないように、胸にしまいこんでいた爆弾が爆発したかのようにフィオナは叫ぶ。
「生捕りにするとかそんな甘い考えじゃダメなのよ!!優しさじゃアイツには勝てないの!!命を奪う覚悟がないと……息の根を止めようとしなきゃ、今度こそみんなが死んじゃうじゃない!!!」
父親を大犯罪者にしたくない。失いたくない。
だが、目の前にいる彼も同じぐらい失いたくない。
アニカマルで助けてもらってからヴェイグやヒルダといった沢山の仲間ができた。
沢山笑ったし、沢山怒りもした。
ラジルダが沈んでからまたこんな日々を過ごせるなんて夢にも思っていなかった。
だが、フィオナにとって大切であった存在が大切な存在を消そうとする。
それだけは絶対に耐えられない。
絶対に許さない。
だから彼女は決意する。
「私はお父さんを……」
「フィオナ……?」
フィオナは俯いたまま掌に爪が食い込むほど拳を握りしめる。
それに対してジークはフィオナに手を差し伸べようとする。
そして、決意を固めたフィオナが顔を正面に上げる。
「私は……ギュナルスを殺すわ」
刹那、パァーン!という乾いた音が白い粉雪が舞い散る白い空に木霊する。
* * *
テーゼンは目をぎゅっと閉じて耳を塞いでいた。
隣ではブライトが銃口を斜め下に向け、トリガーは引き終わった後だった。
直後、2人の前に立ちはだかる倉庫の入り口の南京錠がカランと音を立てて地面に落ちた。
「ちょっ、あんた急に何すんねん!?」
「何って、鍵がかかってたけど合鍵もなくて困ってたから壊してやったんだろうが」
「そやかて一言あるやん!急にぶっぱなされたら驚くわ!!」
テーゼンがブライトに掴みかかるのをよそに、レベッカは倉庫の扉を開けた。
中は密閉されており暗闇が広がっていた。
長く放置されていたのか湿った空気が充満しており、木と土の臭いが混ざっていた。
レベッカは入ってすぐに回れ右した所にあるスイッチを入れると天井の照明に明りが灯る。
光に照らされた倉庫の中は大体9帖の縦長になっており、幸いなことに何も無かった。
何も無いというのは本当に何も無く、床さえもなかった。
そう、茶色い土が剥き出しの状態だった。
おそらく牧畜用に設計されたものだったのだろう。
菜園には打って付けである。
「で、でもやっぱり寒いですね……」
「天井があるからたまに晴れたとしても日光は届きそうにないですね」
ニノンが不安気に言う傍らでアニーも上を見上げながら追い討ちをかける。
だがテーゼンは「えぇからえぇから」と言ってプランターを並べるよう指示する。
それから暫くしてニノン監修のもと種類毎にプランターを並べ終わると、全員入り口付近に集まった。
「ほな、いくで?」
テーゼンはポンと両手を合わせるように叩く。
すると淡く発光する球体がふわりとテーゼンの目の前に出現した。
その球体からは暖かいものを感じ、テーゼンはその球体に息を
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