ジークは船室にてルーベルトから借りたハリセンをゆらゆらと揺らしていた。
ルーベルトは「フィオナを追うのならば必ず必要になる」と言って強引に渡してきたが、彼の言うとおり使ってしまった。
もしこのハリセンがなければジークは自の手でフィオナを叩いていただろう。
それを見越して女性に手を挙げることを許さないルーベルトはジークにこのハリセンを渡したのかもしれない。
それに、このハリセンのおかげで険悪な雰囲気にもならなかったうえに、しこりも残らなかった。
「返す時にお礼を言わねぇとな……」
「そのハリセン使ったんだ」
ジークが1人で呟いていると、何時の間にかカインが隣にいた。
「何で分かったんだよ?」
「そりゃあハリセンを見つめながらニヤニヤしているところを見れば誰だって分かるよ」
「……ニヤニヤしてたか?」
「見たのが僕じゃなかったらドン引きするぐらには」
ジークは眉をひそめながらハリセンをしまった。
「お前が寛大な性格で助かるよ」
「でしょ?」
カインは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
* * *
「で、フィオナが何でまたここにいんの?」
漆黒の翼の紅一点、ユシアは操舵室で相変わらず信号マニュアルを広げながら素朴な疑問を投げ掛ける。
「もしかしてここって立ち入り禁止だった?」
フィオナは申し訳なさそうに辺りを見回すがユシアは「別に〜」とだけ答えて視線を教本に戻した。
「その……ちょっと相談したいことがあって」
「オイラにでやんすか?」
「違うわよ!」
少しキメ顔で振り向いたドルンブだったが強く否定されて少なからずショックを受けたのか舵をとる背中が少し寂しそうに見えた。
「……俺にか」
船を出してくれと突然フィオナに頼まれた後のため、ギンナルはフィオナの相談事というものに悪い予感しか抱けなくなっていた。
いつもなら頼られることに嬉しく思い調子に乗るところだが、彼女の前ではそうもいかない。
ギンナルは渋々といった様子で地図から顔を上げるとフィオナは何故か恥ずかしそうに小さく頷いた。
「あのさ……例えばだけど、異性に好きって言われたら……どうする?」
フィオナはノルゼンでジークに言われてからというものずっと気にしていた。
しかしこの相談を仲間の中の誰かに持ちかけようものなら勘違いされるのは目に見えている。
だから比較的関係の薄い漆黒の翼に相談に乗ってもらおうと思ったのだが、ギンナルは腕を組み難しい顔をしていた。
「それはどういう意味でだ?友達としてか?それとも、何だ……こ、恋人として……か?」
こういった話には疎いのかギンナルは顔を赤くしながら訪ねるとフィオナの顔もみるみるうちに紅潮していった。
「そ、それは分からないけど……ていうか、あんたが邪魔さえしなきゃ悩まずにすんだのよ!!」
「例えばの話ではなかったのか!?」
「あ……そ、そう!例えばの話よ!」
「訳の分からんヤツだ……。だがまぁしかし、まずはどういう意味で言ったのか確認することが先決ではないのか?言葉とは曖昧なものだからな、真意を確かめなければ元も子もないだろ」
「そう……よね。やっぱり本人に確かめるほうが手っ取り早いし確実よね!ありがとう!」
フィオナは吹っ切れたように笑顔で礼を言うと操舵室を飛び出して行った。
「結局あいつは何をしに来たんだ?」
ギンナルはドルンブとユシアに問うたが2人共首を傾げるだけだった。
* * *
「ジーク居る!?」
フィオナは船室の扉を勢い良く開けると、その音に驚いたカインがこちらを見ているだけで他には誰もいなかった。
「ジークは?」
その時、決意を宿した瞳をしたフィオナを見てカインは確信した。
これはいよいよ時が来たのだ、と。
「ジーク君なら軽食を作るって言って厨房に行ったよ」
カインはマジメな表情で言った。
顔が引きつりそうになったが、それを何とか抑えて彼女の探し人の居場所を伝えた。
「厨房……ちょっと遠いけど仕方ないか。ありがとう!」
フィオナは礼だけ行って即座に厨房へ向かう。
「ば、ばれなかったかな……?」
* * *
「ジーク!!」
「ひゃあっ!!」
厨房の扉を開くと、そこにはルルとマオ、ニノンの三人が居た。
どうやら食材のつまみ食いをしていたらしく悲鳴を上げたルルがリンゴを落としてしまった。
「ふぃ、フィオナ!?このことは内緒にしてほしいんだけど……」
マオが困ったように苦笑いしながら懇願するがフィオナは聞こうともせず厨房の中を見回した。
「ど、どうかしたんですか?」
「ここにジーク来てない?」
ニノンは「いいえ」と首を横に振った。
その瞬間、何かに気付いたフィオナはハッと息を呑んだ。
「か
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