声の主はゆっくりと姿を表すと三日月の光に照らされた。
「あ、アニー!?」
フィオナは驚いて扇を落としそうになった。
それに対して声の主のアニーは眉間に皺を寄せた表情のままジークに詰め寄った。
「自主練習するのは結構ですけど、今からというのはどうかと思います!」
「い、何時から聞いて……」
「最初からです!散々ジークさんの相談に乗ってあげたんですから、少しくらい盗み聞きする権利はあるはずですよね?」
「お、おまっ、おあいこだって言ったじゃねぇか!!」
「言いましたっけ?」
すっかり蚊帳の外なフィオナはポカーンとしていた。
何故アニーが盗み聞きしていたのかも気になるが、ジークとアニーが何時の間に相談事をするような仲になっていたのかという方が気になって仕方なかった。
「そもそもジークさんは周りが見えてなさすぎです!あの時ロビーにフィオナさん以外いなかったとでも本気で思っているんですか?」
確かにあの場には誰もいなかったわけではない。
少なくとも他の利用客は数人いた。
しかし詳しくはフィオナも把握していなかった。
「確かに夜の時間をどう使おうと自由ですけど、今日は休むための時間なんですよ?ただでさえ今日は一度死に掛けてるのにここで無理をして明日に響いたらどうするんですか?ジークさんはもし襲ってきたバイラスが徹夜明けで眠そうにしていたら手加減してあげるんですか?」
「バイラスは徹夜なんてしねぇだろ……」
前のめりになって質問攻めしてくるアニーにジークは胸を反らして引き気味に返答する。
するとアニーのこめかみに青筋が入る。
「ティトレイさんみたいな屁理屈言わないでください!」
その一言はジークの胸に突き刺さり、フィオナは思わず噴出した。
その所為でアニーの視線がフィオナにも向く。
「フィオナさんもですよ?休むのも特訓の内ってよく言うじゃないですか」
「ご、ごめんなさい……」
フィオナがしょんぼり謝罪すると、アニーは溜息を吐きながら腰に手を当てる。
「仕方ないですね。明日からお2人の自主練習には私も付き添います」
「ぇえっ!?」
フィオナは目をまん丸にして驚いたがジークはキョトンとしていた。
「……良いのか?」
「へ!?」
予想外のジークの反応にフィオナの顔が瞬時にジークへ向く。
「乗りかかった船ですし、私が居たほうが怪我とか気にせずに思いっきりできるでしょう?」
アニーは微笑みながら小首を傾げる。
確かにアニーの言うとおりだ。
今までは怪我を恐れてお互い気を遣いながら特訓をしていたがアニー監修の元なら手加減せずに本気の特訓ができる。
それは喜ばしいことのはずなのに、何故かフィオナの心はモヤモヤするばかりだった。
「で、でも!それだとアニーは見てるだけになってしまうわよ?退屈じゃない?」
フィオナは引きつった笑顔で言うとアニーは下唇に人差し指を当てながら眉をひそめた。
「そうですよね、私が参加しただけでは結局お2人が組み手するだけでこれまでと何も変わりませんよね……」
どこかわざとらしさを感じさせつつアニーは何か閃いたかのように両の手を胸の前で合わせた。
「ではもう1人特訓に加わってもうらうのはどうですか?」
「いや私はそういう話をしているんじゃなくて……」
フィオナの言葉が届いていないのかアニーはさっきまで自分が隠れていた塔の扉と壁の隙間の影へ振り向いた。
「カインさん!もう出てきて良いですよ!」
「……は?」
思わず声を漏らしたのはフィオナではなくジークだった。
アニーの言葉に呼応するように扉の影からまた一つ人影が出てくると、白い髪をもつカインが月下に照らされた。
「お前も聞いていたのかよ……」
「カインさんには私の護衛として付いてきてもらったんです。流石に私1人で夜にこんな所まで来るのは危険ですから」
再びジークに向き直るアニーの後ろではカインが苦笑いをしており、ジークの後ろではフィオナが口をぱくぱくさせていた。
「確かに特訓するなら多い方が良いかもな」
「えぇっ!?」
人数が増えればそれだけ攻撃パターンにバリエーションが増える。
しかしフィオナは納得できないのかジークが振り返る。
「何だよ?別に増えても困らねぇだろ?」
「そ、そうだけど……(2人じゃないの……?)」
「それでは、明日から特訓開始ですね!」
アニーが言ってから今日は大人しくピピスタに戻ることにした。
* * *
ピピスタの正面ゲートから入ると、民家から漏れる明かりや申し訳程度に配置された燭台が街を淡く照らしていた。
昼間に比べて肌寒くなった街中を、先頭をフィオナとアニーが並んで話ながら歩いており、その後ろをジークとカインが並んで歩く。
ジークは夜空を見上げ
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