ヴェイグ達がアニカマルに駆け付けると、村のあちこちから黒煙が上がっていた。
「こいつはひでぇ……」
思わず口に出したティトレイの前にはヒューマやガジュマがまばらにうずくまって倒れている光景が広がっていた。
ピピスタで聞いた噂では喧嘩が起きていたとのことだったが、もしそれが真実なら勝った方が立っていなければおかしい。
だが今は両種族ともうめき声を上げながら横たわっている。
所詮噂は噂、伝言ゲームとはやはりどこかで歪曲してしまうものだろう。
ならば一体ここで何が起きたというのか。
容易に想像がついたヴェイグは拳をギリギリと強く握り締めた。
「ファルブのしわざか……!!」
「一刻も早く手当てを!」
幸い、今はファルブの姿は無い。
アニーは倒れているヒューマの元へと駆け寄るとカインも羊のガジュマの元へと駆け寄った。
カインは膝を突いて至近距離でガジュマの容体を観察すると、角が片方折れ、出血も激しく貧血状態になっていた。
早く治療をしなければ命にかかわるがアニーが診ているヒューマも同じような容体らしく陣を描いている。
ならば、とカインは決心してガジュマに両手をかざす。
「おい!」
近くの宿屋の中を調べるため入ろうとしたジークが止めに入ろうとするがカインは躊躇することなくフォルスを発動させた。
「大丈夫だよジーク君。ここまで来るのに僕も結構成長したみたいでさ、これぐらいなら寿命を代価にしなくても治せそうなんだ」
カインは声を潜めてなるべく周囲に聞こえないように言いながら極限まで一点に濃縮したフォルスを流し続ける。
「ジーク、ここはカイン達に任せて俺達はファルブを探そう」
肩を後ろから叩かれ肩越しに振り返ると、そこには眉間に皺を寄せたヴェイグとティトレイが立っていた。
「ここは俺達が探すからよ、ジーク達は他のところを頼むぜ?」
既にマオとブライトが宿屋や近くの民家の中等の捜索を始めていた。
ニノンとカイトもアニーの指示に従って軽傷者を宿屋の中に誘導しており、ここでのやることはなそうだった。
「ジーク、俺達は村の西側へ行くぞ」
ヴェイグの提案によりジーク、ヴェイグ、ユージーン、ヒルダ、フィオナ、ジン、ルルの7人は村の西側へ向かうことにした。
* * *
西側には小さなレンガ造りの家が並んでおり、広場を挟んで反対側には小さな池があった。
その池には鯉が泳いでいるが、一匹泳ぐのが精一杯の狭さだ。
「ここにも居ないようね……」
普段ならここで小さな子供が遊んでいたり兄弟が変わった体操をしているのだが、ファルブどころか1人も外に出ていなかった。
「家の中に誰かいるかもしれん。一件ずつ回って話しを聞くことができればいいのだが……」
僅かな希望を抱きつつ、ユージーンは一件の民家のドアをノックする。
手分けしようとヴェイグやフィオナ、それにジンやルルもそれぞれ一件ずつドアをノックしに向かった。
(よく知らない人の家のドアを平気でノックできるよな……)
人見知りのジークはそんな彼らを池の近くから見守っていた。
見知らぬお宅へ訪問し、初対面のヒトと会話するなど、ジークにとってはユリスに世界を破滅させるなんてやめようぜと言って止めるのと同格である。
(それにしてもファルブのやつ、本当にどこ行きやがった……。俺達が来たことに勘付いたとしたって逃げも隠れる必要もないはずだ)
ジークはふと、西側に伸びる細い道を見た。
ジーク達が今いる広場がこの村の一番端だと思い込んでいたが、どうやらまだ先があるらしい。
「行ってみて損はなさそうだな」
ヴェイグ達はそれぞれ民家に入り、今広場にはジークしかいない。
ジークは独断で細道へと足を踏み入れる。
* * *
背の高い木や腰の高さまである草が生い茂っていたがヒトが1人分通れるくらいには道が開いていた。
もしかしたら今ジークが歩いている道だと思っている所はもともと道ではなく誰かが何度も草むらを往復することで草が倒れ、道のようになっただけなのかもしれない。
そんな懸念を抱きつつ、ジークは進み続けると尖った屋根のような物が見えてきた。
よくみるとその屋根の中央にジッパーが付いておりヒトが出入りできるような入り口になっていた。
「これは……テントか」
そう、ジークが見つけたのは草むらの中にぽっかりと空いた空間に設営された野営用のテントだった。
それも小さい物で高さはジークの身長に届くギリギリの高さだった。
恐らく一人用の簡易テント、特に冒険者が愛用するものだろう。
(まさかファルブが住民の反撃にあってここに隠れてたりすんのか……?)
ジークは足音を立てないようそっとテントに近付き、しゃがんでジッパーのツマミを掴む。
このジッパーのツマミを上に滑ら
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