ほんの少しの間、ヴェイグは何が起きたのか理解できず呆然と立ち尽くしていた。
視界は闇に閉ざされており自分が本当に眼を開けているのか、本当に意識があるのかさえ疑問に思えてくる。
まさか一瞬の間に死んでしまったのではないだろうかという考えまで浮かんできた。
立ち尽くしていると思っていたが、そもそも立っているという感覚さえもない。
だが足も腕も動く。
なのでヴェイグは左手を自分の頬に持ってくる。
(感触はある。ということはまだ生きてはいるということか)
ヴェイグが安堵した束の間の出来事だった。
突如、背中に焼けるような痛みが走った。
(ぐあっ!!……!?)
何も見えないため確認しようがないが、刃物で斬られたような痛みだった。
だがそんなことよりもヴェイグは別のことに気をとられていた。
(声が……出ない……)
口を大きく開き、言葉を発しようとするが声帯は震えているというのに、音にならない。
そんなことをしている間にも今度はヴェイグの右足に斬撃が入ったのか激痛が走る。
(くっ!!)
ヴェイグは膝を突きながらも大剣を振るが、空を斬るだけだった。
(これならどうだ!)
ヴェイグは膝を突いた状態のまま、地面と思われる今ヴェイグが膝をついてる空間に右手を押し当てる。
そして、見えざる敵の足を氷で縫いとめるためにフォルスを流す。
(……どういうことだ?)
ヴェイグの右腕から掌にかけて青白く発光するはずだが、今はそれさえも見えない。
だがそれ以前に、フォルスを発動することで体力が消費していく感覚はあるというのに、ヴェイグの足元はまったく冷たくならない。
(まさか……)
ヴェイグは試しに掌に氷を出現させようと試みる。
しかし、いくらやっても固体が掌に乗る感覚が来ない。
(フォルスが使えなくなっているのか……)
なるべくダメージを減らすため、ジークは膝を突いたまま大剣を盾のように斜めに突き刺す。
(他のみんなは無事だろうか……)
『ちょっ、どうなってんのよこれ!?』
声が飛ばないはずの空間にもかかわらず、聞き慣れた『声』がヴェイグの耳に届いた。
いや、これは脳内に響いていると表現したほうが正しいのもかもしれない。
(この『声』はフィオナか!)
どうやらフィオナはフォルスを使えるらしい。
(じゃあ何故俺はフォルスを使えないんだ……?)
ヴェイグは再びフォルスを使い掌に氷を作ろうと試みる。
しかし体力を消費する一方で氷が生成される気配は全く無い。
代わりに、盾代わりに突き刺していた大剣が弾き飛ぶのと同時に、ヴェイグの腹部にプレートのようなものが激突してきた感覚が襲う。
ヴェイグの体はくの字に曲がり、吹き飛ばされるが寸前に大剣を掴んでいたため何とか武器は見失わずにすんだ。
だが腹部を圧迫され、肺から強制的に酸素が放出されヴェイグは咳き込みながら酸素を取り込む。
しかし、息がなかなか整わず、頭がぼーっとしてくる。
(まさか酸素が薄くなっているのか……まずはこの空間を出る方法を考えなくては)
ヴェイグは肩を上下させながら打開策を考える。
『きゃあ!!』
その間にもフィオナも攻撃を受けたのか悲鳴が聞こえた。
(あまり長いこと考えてる時間さえ無いか)
長時間考えればその分だけ仲間が危険にさらされてしまう。
ヴェイグは焦るが、急ごうとすればするほど頭は真っ白になる。
『ん?この感触は……樹?ということは近くにティトレイいるの?』
(ティトレイもフォルスを使えるのか?)
ヴェイグはフィオナの言葉に耳を傾ける。
『このぼさぼさ頭は間違いなくティトレイね!でも随分と細い樹だけど、どうしたの?今にも枯れそうじゃない』
(いや、あいつも本来の力を出せていないのか)
ティトレイならば遊びでフォルスを使う時でさえも、枯れそう木は出さず、青々として瑞々しい植物を出す。
それが今は枯れ木を出しているということは、それが今のティトレイの精一杯なのだとヴェイグは推測した。
『あっ!この身長と耳はルルね!』
(そうか、みんなフィオナの『声』を頼りに集まろうとしているのか)
ヴェイグは朦朧(もうろう)とし始める意識の中で痛む体に鞭を打って立ち上がり、『声』が飛んできた方角を向く。
それが西なのか東なのか、北なのか南なのか分からないが兎に角この先に仲間達がいると信じて見えない光を追い求めるかのように歩き始める。
『えっと……これは誰の背中かしら……っもしかして胸!?てことはアニーでしょ!!』
ヴェイグは大剣を引き摺りながらも前に進み続ける。
『いたっ!今殴られた!?今殴られたわよ!!みんな気を付けて!アイツまだ近くにいるかも!!』
この『声』を聞いてるだけで体が軽くなるような気がした。
当然錯覚だろうが、悪くな
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