その中の一人ティーダは、ソラの後ろに立っている少女に素早く視線を向けた。
「へえ〜。アンタが歌う幽霊の正体っスか!」
そう言って彼は少女を隅から隅まで観察するように見つめた。
「なんか、思ってたより普通の子だな。ちょっとがっかりッス」
「おいおい。どういうのを期待していたんだよお前は」
「なんかこう・・・こういうの?」
「わっかんねーよ!」
両手を大きく広げて何かを表現しようとするティーダに、すかさずワッカのツッコミが飛んだ。
そんな二人を無視して、セルフィが身を乗り出して尋ねた。
「で、さっきは何の話してたの?」
「あ、そうそう。この子の名前を考えてあげようって話」
カイリがそう言うと、ソラとリク以外の3人の視線が少女に集中した。
少女は何が何だかわからないというように、首をかしげて彼らを見つめる。
「成程〜。じゃあ、あたしたちでも名前を考えてあげよ!ティーダ、ワッカ。かまへんよな?」
彼女のが念を押すと、二人は弾かれたように背筋を伸ばして頷いた。
「で、どういう感じにするの?何か候補ってある?」
「う〜ん・・・そうだな・・・」
皆少女の名前を考えようと、腕組みをして難しい顔をしていたその時。
「はーい!俺、いいの浮かんだッス!」
ティーダがよく通る声で右手を高々と上げた。
全員の期待がこもった視線が彼に集中する。
「ふっふっふ・・・。聞いて驚かないでほしいっスよ」
「もったいぶんないで、早く言えよ」
「もー、せっかちだな。じゃーん!!その名も・・・・キティタイガー!!!」
彼の言葉に、和気あいあいとしていた空気が、一瞬で凍りついた。
そして間入れず、セルフィーの怒鳴り声が響く。
「アホーー!!何で女の子にそないな変な名前つけるん!?」
そしてどこからか取り出した縄跳びで、ポカポカとティーダの頭を殴りつけた。
「いてっいてっ!なんだよー!じゃあ、どういう名前がいいんだよー!」
ティーダが涙目になりながら全員に訴えると、皆は早急に黙り込んでしまった。
「う〜ん・・・急に言われても・・・」
「あ、俺イイの思いついた。えっと、スー」
「却下だソラ。ティーダと同じにおいがする」
ソラの提案をリクが素早く却下し、再び沈黙が訪れる。
その沈黙を破り助け舟を出したのは、カイリだった。
「じゃあ、何かからとるっていうのはどう?例えば、花や星や、月とか」
「あーなるほど。それなら俺が・・・」
「却下」
再び何かを言いそうになるティーダを、今度はワッカが止めた。
そしてまた、しばしの沈黙が訪れる。
その時。
「・・・サクヤ」
沈黙の中、その声だけがはっきりと聞こえた。
「サクヤ、というのはどうだろう?」
少女を除く全員の視線が、その言葉を発したリクに向けられる。
「サクヤ・・・かぁ。うん、いいかも!」
「呼びやすいし、響きも綺麗や〜」
「流石リク!俺たちが思いつかない名前を平然と考え付くなんて・・・しびれるしあこがれるッす!!」
皆、リクの提案した名前に賞賛の言葉を贈った。
「というわけで。これからキミの名前はサクヤだから」
「って、おい!俺が決めた名前だろ」
まるで自分が考えたような口ぶりのソラに、リクは憤慨する。
「サクヤ・・・」
少女は胸に手を当て、かみしめるように名前を繰り返す。
それから、顔を上げて皆の顔を見て歯切れの良い声で言った。
「私は・・・私の名前は、サクヤ・・・」
「そうだよ。これからよろしく、サクヤ」
ソラはそう言ってサクヤの前に右手を差し出す。
サクヤは一瞬きょとんとした顔をしたが、ソラと同じように右手を差し出した。
その手を、ソラはしっかりと握る。
「よろしく」
サクヤの返事に、彼はにっこりと笑った。
「というわけで。無事に名前も決まったことだし。これからサクヤの手掛かりを探しに行こうと思うんだ」
ソラの出した提案はこうだ。
本島での聞き込みと、サクヤと出会った離れ小島への調査である。
小島への調査はティーダ達がどうしてもというので仕方なく任せ、ソラたちはサクヤを連れて島民への聞き込みを開始することになった。
「でもおかしいよなぁ・・・」
ソラたちと別れて島へ向かう船をこいでいたとき、ティーダがポツリと漏らした。
「何が?」
ワッカが怪訝な顔をしてティーダに尋ねる。
「ソラたちがあの子・・・サクヤを見つけたとき、やっぱり歌が聞こえてたんだろ?」
「まぁ、そうやろな」
「俺が島にいたときも歌が聞こえたけど、あんな子どこにもいなかったんだよなぁ・・・」
ティーダは小さく唸りながら、ゆっくりと櫂をこいだ。
「もしかして、あの子は本当に幽霊で、ソラたちにしか見えなかったのかも」
「バカ言うなよ。それじゃあティーダにも見えたはず
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