ソラとサクヤがやってきたのは離れ小島。
ソラたちがサクヤと出会った場所だ。
だが、ソラが向かったのは島の洞窟。ソラ、リク、カイリだけが知っている秘密の場所だ。
走りつかれたのか、それとも緊張の糸が切れたのか。
ソラは息を切らして座り込んだ。
サクヤも一緒に座り込む。
洞窟内には、しばらくソラの息遣いが響いたがやがてそれも聞こえなくなった。
そして、うつむいたままポツリと声を漏らす。
「ごめんな。あんなの見せて」
突然の言葉に、サクヤの肩がピクリと震えた。
それからうつむいたままのソラの頭を、優しくなでる。
ソラは驚いたように顔を上げて、彼女の顔を見つめた。
「慰めてくれるのか・・・?」
彼の言葉に、サクヤは何も答えずただ同じように見つめ返した。
「あ、そうだ。何も考えないで連れてきちゃったけど。ここ、俺たちのヒミツの場所なんだ」
そう言ってソラは立ち上がり、両手を広げた。
その場所には3人で書いた落書きのほかに、不思議な扉があった。
「この扉、俺が小さいころからずっとあるんだけど。取っ手も鍵穴もないし何の扉かもわからないんだ」
ソラがそう説明すると、サクヤはじっと扉を見つめていた。
が、おもむろに口を開いた。
「わたし、気が付いたらここにいた」
「え?」
「とても暗い所にいた。真っ暗で、何も見えなくて。でも、光が見えた」
今までほとんど話さなかったサクヤが、初めて自分のことを語り始めた。
「目指して、歩いて。気が付いたらこの島にいた。それしか、わからない。わかっているのは」
そこまでを言ってサクヤは言葉を切ると、ソラと同じように立ち上がり口を開いた。
そこからあふれるのは、優しくも切ない旋律と、不思議な言葉の歌詞。
昨日の夜、ソラたちが聴いたあの歌だった。
サクヤの澄んだ声が洞窟中にこだまし、幻想的な雰囲気を作り出す。
そして、薄明かりに照らされたサクヤ自身も、幻想的な美しさを醸し出す。
ソラは口を開けたまま、ただ黙ってサクヤの歌を聴いていた。
やがて歌が終わると、サクヤはソラに向き合って言った。
「この歌。何もわからないけど、これだけは知ってた。誰から聴いたのか、どこで覚えたか、わからない。でも、これだけは知ってた。覚えてた」
「サクヤ・・・」
「わたし、自分が知りたい。わたし、ソラと、ソラたちと一緒にいたい」
ソラは胸がいっぱいになった。
手がかりもなく、家族からは否定的な扱いをされ、正直自信を無くしかけていた。
しかし、サクヤのしっかりした意志は、ソラの決意を固めるには十分だった。
「約束するよ。俺、必ずキミの身元を捜すよ。そして、キミの記憶も取り戻す」
洞窟内にソラのしっかりした声が響く。
そして、彼はそっと右手の小指を差し出した。
その意味が分からず、サクヤは首をかしげる。
「約束の印。こうやって指を絡ませるんだ」
ソラはサクヤの手をとり、小指を絡ませた。
そして、軽く上下に数回振る。
指が離れた後、サクヤは自分の指をじっと見つめていた。
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