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第二章:与えられた存在Y

ソラとサクヤがやってきたのは離れ小島。
ソラたちがサクヤと出会った場所だ。

だが、ソラが向かったのは島の洞窟。ソラ、リク、カイリだけが知っている秘密の場所だ。

走りつかれたのか、それとも緊張の糸が切れたのか。
ソラは息を切らして座り込んだ。
サクヤも一緒に座り込む。

洞窟内には、しばらくソラの息遣いが響いたがやがてそれも聞こえなくなった。
そして、うつむいたままポツリと声を漏らす。

「ごめんな。あんなの見せて」

突然の言葉に、サクヤの肩がピクリと震えた。
それからうつむいたままのソラの頭を、優しくなでる。

ソラは驚いたように顔を上げて、彼女の顔を見つめた。

「慰めてくれるのか・・・?」

彼の言葉に、サクヤは何も答えずただ同じように見つめ返した。

「あ、そうだ。何も考えないで連れてきちゃったけど。ここ、俺たちのヒミツの場所なんだ」

そう言ってソラは立ち上がり、両手を広げた。

その場所には3人で書いた落書きのほかに、不思議な扉があった。

「この扉、俺が小さいころからずっとあるんだけど。取っ手も鍵穴もないし何の扉かもわからないんだ」

ソラがそう説明すると、サクヤはじっと扉を見つめていた。
が、おもむろに口を開いた。

「わたし、気が付いたらここにいた」
「え?」
「とても暗い所にいた。真っ暗で、何も見えなくて。でも、光が見えた」

今までほとんど話さなかったサクヤが、初めて自分のことを語り始めた。

「目指して、歩いて。気が付いたらこの島にいた。それしか、わからない。わかっているのは」

そこまでを言ってサクヤは言葉を切ると、ソラと同じように立ち上がり口を開いた。
そこからあふれるのは、優しくも切ない旋律と、不思議な言葉の歌詞。

昨日の夜、ソラたちが聴いたあの歌だった。

サクヤの澄んだ声が洞窟中にこだまし、幻想的な雰囲気を作り出す。
そして、薄明かりに照らされたサクヤ自身も、幻想的な美しさを醸し出す。

ソラは口を開けたまま、ただ黙ってサクヤの歌を聴いていた。

やがて歌が終わると、サクヤはソラに向き合って言った。

「この歌。何もわからないけど、これだけは知ってた。誰から聴いたのか、どこで覚えたか、わからない。でも、これだけは知ってた。覚えてた」

「サクヤ・・・」
「わたし、自分が知りたい。わたし、ソラと、ソラたちと一緒にいたい」

ソラは胸がいっぱいになった。
手がかりもなく、家族からは否定的な扱いをされ、正直自信を無くしかけていた。
しかし、サクヤのしっかりした意志は、ソラの決意を固めるには十分だった。

「約束するよ。俺、必ずキミの身元を捜すよ。そして、キミの記憶も取り戻す」

洞窟内にソラのしっかりした声が響く。
そして、彼はそっと右手の小指を差し出した。

その意味が分からず、サクヤは首をかしげる。

「約束の印。こうやって指を絡ませるんだ」

ソラはサクヤの手をとり、小指を絡ませた。
そして、軽く上下に数回振る。

指が離れた後、サクヤは自分の指をじっと見つめていた。
14/12/02 22:59更新 / 星三輪サナ

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