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第二章:与えられた存在Z

その時だった。

「ソラー!サクヤー!どこにいるんだ!?」
「返事をして、二人とも!」

洞窟の外から、誰かが呼ぶ声が聞こえる。
ソラはこの声に聞き覚えがあった。

「この声・・・リクとカイリ?」

「ソラ!どこにいるの?出てきて!」

「・・・ソラの、」

「ああ、母さんもいるみたいだ」

リクだけでなく、どうやらソラの母も一緒にいるようだ。
二人でソラたちを捜しに来たのだろう。

「まいったな・・・」

正直なところ、ソラは戻りたくはなかった。
どうせ戻っても、サクヤを村長に任せろというにきまっている。

だが、リクとカイリまで来ているとなれば話は別だ。

「・・・行こうか」

ソラはそう言ってサクヤの手を握りしぶしぶ洞窟を後にした。

出る間際、サクヤは少し振り返ると奇妙な扉を一瞥した。






「ソラ!サクヤ!」

洞窟から出てきた二人を真っ先に迎えたのはリクだった。

二人とも無事であることを確認してほっと胸をなでおろす。

「驚いたよ。お前の父さんが血相変えて家に来たから。しかもサクヤまで一緒だとは」

ソラの隣にいるサクヤに目を向け、リクは呆れたように言い放った。

「ソラ!」

その後ろからカイリ、ソラの母が息を切らして走ってきた。

母は一人前に出ると、俯き身を硬くするソラとソラの方を向いているサクヤに向き合う。
その表情は硬く険しかった。

――きっと怒られる。
そんな雰囲気をな感じて、ソラはさらに身を硬くした。

だが。

「ごめんなさい」

母の口から出たのは、あろうことか謝罪の言葉であった。

「え?」

予想だにしない言葉に、ソラは素っ頓狂な声を上げる。

「あの後、カイリがうちに来てね。私に教えてくれたの。ソラが本気なこと。そして、サクヤの気持ちが分かるってことを」

「カイリが・・・」

ソラは思わずカイリを見た。カイリも、少し恥ずかしそうにソラを見つめる。

「それに、お母さんも少し言い過ぎたかもしれないって思ったの。一番苦しんでいるのはサクヤなのに、あまりにも無責任なことを言ってしまったって、考えた」

母の言葉を、ソラはただ黙って聞いていた。
嬉しいというよりも、驚きの方が多かった。

「だけど。自分一人で何でもできるなんて思いあがっちゃダメ。私たち大人がいることも忘れちゃだめよ。それと、リクとカイリもね」

そういう母の横で、リクとカイリが頷いた。
ソラはもう何も言えなかった。ただ、頬を伝う涙が彼の今の気持ちを物語っていた。

「さあ、帰りましょう。いろいろ準備をしなくちゃ。あたらしい家族を迎え入れる準備を」
「かぞく・・・?」
「そう、家族よサクヤ」

母はサクヤに視線を合わせると、優しい声色でそう言った。
するとサクヤは、きゅっと胸のあたりを押さえた。

「どうした?サクヤ」

ソラが怪訝そうな顔で聞くと、サクヤは首を横に振った。

「わからない。だけど、なんだかこのあたりが。不思議な感じがする。あったかいような、ふわふわしたような」
「それはきっと、【うれしい】ってことだと思うよ」
「うれしい?」

そう言われてサクヤはぐるりとあたりを見回した。
ソラ、リク、カイリ、母の笑顔が、彼女を取り巻く。

「みんなも、うれしい?わたしがうれしいと、うれしい?」

その言葉に、みんなが一斉に頷いた。
それを見てサクヤは、どうしたらいいかわからないようにソラを見た。

「そういう時は、笑ってみればいいんじゃないかな。こんな風に」

そう言ってソラは飛び切りの笑顔をサクヤに向けた。
サクヤは少し考えるようなしぐさをした後、ソラのまねをしてみた。

彼に比べればぎこちないものの、その顔には確かに笑顔が浮かんでいた。
14/12/02 23:02更新 / 星三輪サナ

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