その時だった。
「ソラー!サクヤー!どこにいるんだ!?」
「返事をして、二人とも!」
洞窟の外から、誰かが呼ぶ声が聞こえる。
ソラはこの声に聞き覚えがあった。
「この声・・・リクとカイリ?」
「ソラ!どこにいるの?出てきて!」
「・・・ソラの、」
「ああ、母さんもいるみたいだ」
リクだけでなく、どうやらソラの母も一緒にいるようだ。
二人でソラたちを捜しに来たのだろう。
「まいったな・・・」
正直なところ、ソラは戻りたくはなかった。
どうせ戻っても、サクヤを村長に任せろというにきまっている。
だが、リクとカイリまで来ているとなれば話は別だ。
「・・・行こうか」
ソラはそう言ってサクヤの手を握りしぶしぶ洞窟を後にした。
出る間際、サクヤは少し振り返ると奇妙な扉を一瞥した。
「ソラ!サクヤ!」
洞窟から出てきた二人を真っ先に迎えたのはリクだった。
二人とも無事であることを確認してほっと胸をなでおろす。
「驚いたよ。お前の父さんが血相変えて家に来たから。しかもサクヤまで一緒だとは」
ソラの隣にいるサクヤに目を向け、リクは呆れたように言い放った。
「ソラ!」
その後ろからカイリ、ソラの母が息を切らして走ってきた。
母は一人前に出ると、俯き身を硬くするソラとソラの方を向いているサクヤに向き合う。
その表情は硬く険しかった。
――きっと怒られる。
そんな雰囲気をな感じて、ソラはさらに身を硬くした。
だが。
「ごめんなさい」
母の口から出たのは、あろうことか謝罪の言葉であった。
「え?」
予想だにしない言葉に、ソラは素っ頓狂な声を上げる。
「あの後、カイリがうちに来てね。私に教えてくれたの。ソラが本気なこと。そして、サクヤの気持ちが分かるってことを」
「カイリが・・・」
ソラは思わずカイリを見た。カイリも、少し恥ずかしそうにソラを見つめる。
「それに、お母さんも少し言い過ぎたかもしれないって思ったの。一番苦しんでいるのはサクヤなのに、あまりにも無責任なことを言ってしまったって、考えた」
母の言葉を、ソラはただ黙って聞いていた。
嬉しいというよりも、驚きの方が多かった。
「だけど。自分一人で何でもできるなんて思いあがっちゃダメ。私たち大人がいることも忘れちゃだめよ。それと、リクとカイリもね」
そういう母の横で、リクとカイリが頷いた。
ソラはもう何も言えなかった。ただ、頬を伝う涙が彼の今の気持ちを物語っていた。
「さあ、帰りましょう。いろいろ準備をしなくちゃ。あたらしい家族を迎え入れる準備を」
「かぞく・・・?」
「そう、家族よサクヤ」
母はサクヤに視線を合わせると、優しい声色でそう言った。
するとサクヤは、きゅっと胸のあたりを押さえた。
「どうした?サクヤ」
ソラが怪訝そうな顔で聞くと、サクヤは首を横に振った。
「わからない。だけど、なんだかこのあたりが。不思議な感じがする。あったかいような、ふわふわしたような」
「それはきっと、【うれしい】ってことだと思うよ」
「うれしい?」
そう言われてサクヤはぐるりとあたりを見回した。
ソラ、リク、カイリ、母の笑顔が、彼女を取り巻く。
「みんなも、うれしい?わたしがうれしいと、うれしい?」
その言葉に、みんなが一斉に頷いた。
それを見てサクヤは、どうしたらいいかわからないようにソラを見た。
「そういう時は、笑ってみればいいんじゃないかな。こんな風に」
そう言ってソラは飛び切りの笑顔をサクヤに向けた。
サクヤは少し考えるようなしぐさをした後、ソラのまねをしてみた。
彼に比べればぎこちないものの、その顔には確かに笑顔が浮かんでいた。
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