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第三章:旅立ちの序曲U(前編)

「それじゃあ続き。ソラとリクは丸太とロープ。それから帆に使う大きな布を探してきて。私とサクヤは向こうで待ってるから」
「了解!」

ソラは元気よく返事をすると、リクと共に走って行った。
残ったカイリは作りかけのイカダの上に座ると、何かを作り始めた。

「何してるの?カイリ」

不思議に思ったサクヤが声をかけると、カイリは作っていたものを彼女に見せた。

それは、ピンク色の貝殻がつながったキーホルダーのようだ。

「これ?これはサラサ貝っていう貝殻で作ったお守りなの。これを付けた船乗りはどんな嵐に遭っても戻ってこれるって言い伝えがあるんだよ」

カイリが見せてくれたお守りを、サクヤはじっと見つめていた。

「あ、そうだ。まだ針と糸は残ってるから、サクヤも作ってみる?私の分の貝はもうあるから、サクヤの分も探してみよう。この時期ならまだ落ちていると思うよ」

そう言ってカイリはちらりと浜辺の方を見る。
ソラとリクが戻ってくるまでの間に、サクヤの分の貝を探してみようということになった。

二人で浜辺を探していると、サクヤの足元で何かがきらりと光った。
サクヤがそれに左手を伸ばしたその時。

「いたっ・・・!」

小さく叫んで手をひっこめるサクヤ。

どうやら割れた貝で手を切ってしまったらしく、人差し指に五ミリほどの切り傷ができていた。
傷口からはじわりと赤い液体がにじむ。

だが、次の瞬間。

傷口はまるで魔法のように、瞬く間に消えてしまった。

「どうしたの?大丈夫?」

呆然と立ち尽くすサクヤに、カイリが心配そうに声をかける。

「ううん、なんでもない」

サクヤはすぐさま首を横に振ると、サラサ貝を探して再び歩き出した。

そして数分後。

再び、サクヤの足元で何かがきらりと光った。
また怪我をしないように警戒しながら、サクヤはそれをそっと拾い上げる。

それは、先ほど見せてもらったお守りと同じ貝殻であった。

ただ一つ。それが真っ白な色をしていることを除けば。

「あ、それ。珍しいものを見つけたね!」

サクヤが拾ったサラサ貝を見て、カイリは少し興奮したように言った。
「満月の光を浴びたサラサ貝は石膏みたいに真っ白になるんだって。前に本で読んだことがあるよ。他にもあるか探してみようよ」

それから二人はしばらく白いサラサ貝を探したが、見つかったのは最初の物を含めて4つだった。
カイリと同じようなお守りにするには、後一つ足りなかった。

がっかりしたような表情をするサクヤに、カイリは優しく声をかけた。

「そんな顔をしないで。むしろ、これだけ見つけられたことの方がすごいよ。あんまり見つからないっていうし。それにしても、ソラとリク、遅いね」

サクヤの貝殻を探していて忘れていたが、二人が材料を集めに行ってからもう結構な時間がたっている。

「サクヤ。悪いけど二人の様子を見に行って来てくれる?私はイカダの組み立てと確認をしてるから。もしもサボってたら一発ガツンとお見舞いしていいからね!」

カイリはそう言って腕を振り上げる動作をすると、サクヤは頷いてその場を走り出した。
14/12/29 22:12更新 / 星三輪サナ

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