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第三章:旅立ちの序曲W(前編)

先に動いたのは、サクヤの方だった。

左手に握りしめた木剣を振り上げ、リクへと躍り掛かる。

だが、リクは余裕の表情を浮かべたまま、彼女が向かってくるのを見ている。

(やっぱり、ソラの影響だな。真正面から向かってきたか)

自分と対峙しているときのソラも、ひたすら真正面から打ち込んでくることが多く、裏を返せば太刀筋が単調で読みやすい。
そんな彼と2年も同じ屋根の下で暮らしていたサクヤも、彼の影響を受けないはずはない。

サクヤが木剣を振り上げ、振り下ろすその瞬間を狙い、リクはひらりと身をかわした。

「あっ!」

ソラが思わず声を上げる。

だが、それは次の瞬間には、

「なっ!?」

リクの驚いた声に変わった。

サクヤの太刀筋が急激に変わり、身をかわしたはずのリクの方へ向かってきたのだ。

リクはとっさにその一撃を受け止める。

かつん、という二本の木剣のぶつかる音が響くが、リクの顔には驚愕が張り付いていた。

完全に、予想外だったからだ。

サクヤはその一撃が受け止められたと認識すると、素早いバックステップでリクから距離を取ると、再び瞬時に間を詰めた。
そこから1回、2回、と素早く振りおろし、3回目からは剣を水平に向け突きを繰り出す。

その動作が、リクがやっとさばけるほどのすさまじい速度だった。

いつの間にかリクの顔からは余裕が消え、それどころか防戦一方であった。
リクも隙を見て反撃をするが、サクヤは素早い動きでそれを紙一重でかわし、尚且つリクの死角から攻撃を仕掛けてくる。

とんでもないダークホースの出現に、ソラも口を開けたまま呆然と二人の戦いを見ていた。
14/12/29 22:12更新 / 星三輪サナ

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