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第四章:旅立ちの序曲V(後編)

キノコを抱えて洞窟から出ると、太陽の眩しさにサクヤは目を細める。

先ほどの出来事がまるで夢だったと思わせるほど、空は青く澄んでいた。

あの白いローブの人物。

自分のことを知っているかのような口ぶりだったが、何よりも彼がつぶやいた終焉という不吉な言葉が忘れられない。

「サクヤー。そんなところに突っ立って何してるんだ?」

自分を呼ぶ声に気づいて顔を上げると、ウミドリの卵を抱えたリクが砂浜に立っていた。
サクヤはさっきの出来事をリクに話してみようかと思ったが、何故だかそれは誰にも言ってはいけないような気がした。

返事をしないサクヤを不思議に思ったのか、リクの方がこちらへ向かってきた。

「ソラとカイリがお前を捜してたぞ。なかなか戻ってこないから、迷子になったんじゃないかって」
「大丈夫。キノコは見つけたから」

サクヤはそう言って腕に抱えたキノコの束を彼に見せる。
リクは少し驚いた顔をしたが、満足そうな顔になった。

「ねえ、リク」
「ん?」

突然話しかけられたリクは、少し驚いたように彼女を見た。

「わたしは、どうしてここにいるんだろう?」
「突然どうした?」

彼女の質問の意味が分からず、リクは首をかしげた。

「リクは昨日言ってた。もしもこの世界が、カケラだったとするなら。ここじゃないカケラでも構わないって」
「ああ、そうだな」
「もし、海の向こうにわたしの記憶の手掛かりがあったら、わたしがいる場所はここじゃなかったら。わたしはどうしてここへきたんだろう」

そう言って自分を見つめてくるサクヤの瞳は、相変わらず深い海の底のような色をしていた。
その瞳は、心なしか少し揺れている。

彼女の言葉はリクに向けられているというよりも、自分自身に問いかけているようだった。
今まで自問自答などということが見られなかったこともあり、リクはその変わり様に少し驚いていた。

「今すぐに答えを出さなくてもいいんじゃないのか」
「今すぐじゃなくてもいい・・・?」
「そうだ。それに、そんなの誰にだって分からないんだ。だから俺たちは外の世界を目指して今準備をしている。それでいいんじゃないか?」

リクの言葉は、サクヤの中に沁みこむように響いた。

動かなければ、何も変わらないし、何も分からない。

知らなければ、知ればいい。

それに、ソラは約束をしてくれたではないか。

必ず、サクヤの記憶を取り戻して身元も捜して見せると。

「リク、ありがとう」

サクヤの口から自然と礼の言葉が出ると、リクは少し照れたのか目をそらした。

すると

「サクヤ!あ、リクも一緒だったんだね」

カイリが水の入った瓶をもってこちらに走ってくるのが見えた。

「リクは卵・・・うん、大丈夫ね。サクヤは・・・すごーい!ずいぶんたくさん取れたね!!」

カイリはサクヤの腕からいっぱいのキノコを受け取って笑った。

「あとはソラの魚だけか。それにしても、二人とも見ないと思ったら、こんなところでいちゃついてたなんてね〜」
「なっ!?別にいちゃついてなんか・・・!」
「いちゃつくって・・・何?」

カイリの言葉を慌てて否定するリクに、サクヤが気の抜けた返答をすると、とたんにカイリは大きな声で笑い出した。
リクは困ったようにため息をつき、サクヤは訳が分からないといわんばかりに首をかしげた。
15/01/16 23:23更新 / 星三輪サナ

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