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第四章:旅立ちの序曲W(後編)

その夜。

ソラとサクヤは、それぞれの自室で明日の準備を進めていた。
リクやカイリに教わった通り、着替えや水着や遊び道具なんかを鞄に詰めた。

ふと、外を見ると外は暗く、心なしか遠くで雷鳴が聞こえる。

嵐はサクヤも初めてではない。
ここデスティニーアイランドは、時折激しい嵐に見舞われることがあるのだ。
よほど大きな嵐でない限り、被害はほとんどない。

しかし、それは4人で作ったイカダにとっては脅威以外の何物でもなかった。

「イカダが・・・危ない・・・」

気が付けばサクヤの身体は、迷わず外へと向かっていた。
向かう先は一つ。あの小島へだ。

小さな小舟を必死でこぎながら、サクヤは上空を見上げた。

得体のしれない黒い球体が浮かんでいるのが目に入る。

先ほどから感じている不快な違和感をぬぐうように、サクヤは舟をこぐ手を速めた。

やっとのことで桟橋につくと、すでに2隻の船がそこにあった。

おそらく、リクとカイリだろう。二人もこの嵐でイカダが気になり様子を見に来たのだろう。

サクヤは急いで桟橋から砂浜へ駈け出すが、突然地面から黒い影のような怪物が現れ彼女の行方を阻んだ。

全身が墨のように真っ黒で、目はギラギラとした不気味な金色に光っている。

「これは・・・ハートレス?」

サクヤの口からその怪物と思わしき名前が飛び出すと、彼女は驚いて口をふさいだ。

(わたし、知っている?この怪物の事を・・・)

考える間もなく、怪物・・・ハートレスはサクヤに向かって飛びかかってきた。
サクヤはその攻撃を寸前で避け、砂浜に転がる。

だが、休む間もなくハートレスたちはサクヤに向かって鋭い爪を突き立てようとしてきた。

戦うにも、今彼女は丸腰だ。

どうすればいい――!?

どうすれば――!?

「あっ!!」

油断していたせいか、一匹のハートレスがサクヤの死角からとびかかり、その右足をかすめた。
突然のことに対処が遅れ、サクヤはその場所に倒れた。

目の前には、大量のハートレスが好機と言わんばかりに群がり、サクヤに狙いを定める。

そして、一斉に彼女に向かって飛びかかってきた。

それとほぼ同時にサクヤの頭に、鋭い痛みが突然走った。
そして、脳裏に浮かぶ奇妙な言葉。


――・・・%

――・・・動。――・・・始します・・・

その瞬間。

飛びかかってきたハートレスたちが、一瞬にして跡形もなく消え去った。
15/01/04 22:14更新 / 星三輪サナ

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