サクヤが立っていた場所は、人気のない路地裏のようだった。
冷たく澄んだ空気が、ここが夢の世界ではないことを知らせる。
夢でないことは、もう一つあった。
サクヤの右腰に、鞘に収まった一本の剣があった。
鞘から抜き出してみると、青白い刀身が静かにサクヤの顔を映している。
それよりも、ここはいったいどこなのだろうか。
サクヤは剣をしまうと、人がいそうな場所を探して歩き出した。
路地裏を出ると、広場のような場所がサクヤの目に飛び込んできた。
煉瓦でできた壁や建物が立ち並び、街を淡く照らすのは街灯。
遠くには大きな扉のようなものがあり、すべての物がサクヤにとって知らないものだらけであった。
――外の世界。
あれほど待ち望んでいたはずなのに、そこには大切な家族や友人は誰もいない。
ソラは?リクは?カイリは?
そして、闇に飲まれてしまったという島はいったいどうなってしまったのだろうか。
「・・・ソラ」
無意識に一番会いたい人の名前を呟くも、その言葉は夜空に溶けて消えていく。
これからどうしようか。
そんなことを考えていると、どこからかくぐもったうめき声のようなものが聞こえてきた。
反射的に振り返ると、サクヤの左前方にたくさんの木箱が山積みになっていた。
そしてその中から、大きな丸いものが生えているのが見えた。
そっと近づいてみると、
「た・・・助けて・・・クポ〜」
どうやら中で誰かが助けを求めているようだった。
サクヤは、丸い物のそばに積み上がっている木箱を少しずつどかしていった。
やがて丸い物の元と思われる白い物体が見えてくると、サクヤは白い部分を掴み思いっきり引っ張った。
すると、スポン、という音と共に、白いものが山の中から飛び出して転がった。
「ふ〜、死ぬかと思ったクポ。助けてくれてありがとうクポ」
そう言ってサクヤの前に現れた生き物は、白い体に黒い羽を付けた、何とも不思議な姿をしていた。
「モグはモーグリのクピポだクポ。このトラヴァースタウンでお店を開く予定クポ」
「わたし、サクヤ。気が付いたらここにいたの。わたしの大切な人たち、見なかった?」
サクヤが問いかけると、クピポは頭を横に振った。
がっかりする彼女に、彼はある一軒の店を指差して言った。
「何か知りたい時はシドに聞けばいいクポ」
「シド?」
「あのアクセサリーショップの店主クポ。きっと君の力になってくれるクポ」
そう言ってクピポは、散らばっていた木箱を頭に乗せると、ふわふわと飛んで行ってしまった。
残されたサクヤは、とりあえず彼に紹介された店へと足を進めた。
そんな彼女の上空で、星がまた、一つ消えた。
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