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第一章:望月の歌姫U

噂の真相を確かめるため、三人はまずティーダが歌を聴いたという場所に向かうことにした。

そこは3人のお気に入りの場所。パオプの木がある小島だ。

だが、いきなり突撃をして幽霊を逃がしてしまっては元も子もないと、3人は桟橋近くの山小屋で待機することにした。

ここなら、歌が聞こえてもすぐに現場に向かえる。という手筈だ。

「でも。ティーダ達、怒るだろうな。勝手に幽霊さがしなんかしちゃって」

「とは言いつつ、カイリもまんざらじゃないって顔をしてるぞ。やっぱり俺達って考えていることは同じだな」

「ソラと一緒っていうのが、少しばかり不服だけどな」

リクがそう軽口を叩くと、ソラはすぐにむきになって彼にかみつく。
それをカイリが笑いながら制止する。いつもの事であった。

どのくらい経っただろうか。

3人がもってきていた菓子や飲み物も、だいぶ少なくなってきた。
あまり遅くなってしまうと、流石に彼らの親も怒り出すだろう。

「ねえ、今日はもう帰らない?いくらなんでも遅くなり過ぎだよ。怒られるだけじゃすまなくなっちゃう」

持ってきていた時計を見たカイリが、少し焦ったように言った。

「・・・そうだな。満月の日まで時間は空くけど、今日のところは出直そう」

「え〜?せっかくここまで張り込んだのに?」

ソラは不服そうな声を上げて抗議するが、二人の意見はもっともであり同意せざるを得なかった。

そして3人があきらめて帰ろうと腰を上げたその時。

「ん?」

突然、ソラが立ち上がろうとした姿勢のまま動きを止めた。
その様子を、リクとカイリは怪訝そうに見つめる。

「どうしたの?ソラ」

「シッ!」

疑問を投げかける二人を、ソラは鋭く制止させた。

「なにか・・・聞こえないか?」

「え?」

「ほら、耳を澄まして・・・」

ソラの言葉に二人は怪訝そうな顔をして耳を澄ませてみるが、何も聞こえない。

「何も聞こえないよ?聞こえるのは波と鳥の声だけ」

「おかしいな・・・気のせいだったのかな?」

「空耳じゃないのか?ソラだけに・・・?」

首をかしげるソラに軽口を叩こうとしたリクも、言いかけて口をつぐんだ。

「リク?」

様子が変わった彼に、カイリは少し不安そうな顔をする。

だが、リクは目を閉じ神経を研ぎ澄ませた。
すると、ほんのわずかだが、波や風の音以外の音が彼の耳に届いた。

「聞こえる・・・かなり小さいが・・・これは歌だ」

「えっ!?本当に!?」

「やっぱり気のせいじゃなかった!カイリも耳を済ませてみろよ」

興奮する二人に促され、カイリも同じように目を閉じ耳を澄ませてみる。

すると、今度は彼女の耳にもその歌が届いた。

「あっ、聞こえた!じゃあ噂は本当に・・・?」

「行こう!!」

そう言っていの一番に海小屋を飛び出すソラ。その後をリクとカイリが急いで追った。

好奇心とわずかな不安を胸に抱え、3人の子供たちは足を急がせる。

そして小島へ続く桟橋を一番に渡りきったソラは、思わず足を止めた。
後から追いついた二人も、彼同様に足を止める。

彼らが見たのは、ひとりの見知らぬ少女の後ろ姿だった。
14/11/03 20:11更新 / 星三輪サナ

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