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第六章:ようこそ、不思議の国へ(前編)X

暗い穴を抜けるとそこには、ハート型に刈り込まれたアーチが4人を迎えた。

その周りに立っているのは、赤と黒のトランプのような姿をしている者。

そしてその奥には、少し太めの中年の女性がふんぞり返って座っていた。

「あ、あれ!」

グーフィーが指をさした方向には、先ほどのウサギが壇上に駆け上がりラッパを吹き鳴らした。

「ただ今より、開廷する!」

「え?裁判をするの?どうして?」

ウサギの言葉に、真ん中の台に立っていた一人の少女が、驚いたように声を上げた。
心なしか、少し怒っているようにも見える。

「裁判?」

その言葉を聞いたソラが、不思議そうに首をかしげた。

「えっと、裁判っていうのは」
「裁判。何か問題が起こった時に、その問題を速やかに解決するために行う討議。一般的には罪を犯したものを裁く者の方が多い」

グーフィーの言葉を遮り、サクヤがまるで百科事典のように淡々とソラに説明した。
そんな彼女に、ドナルドとグーフィーはぽかんとして見つめた。

「そ、そうなんだ。よく知ってるな、そんな難しいこと」
「前にリクが貸してくれた本に載ってた」
「サクヤに何を読ませているんだよ・・・」

ソラは少し呆れつつも、リクは本当にサクヤの面倒を見てくれていたな、と心の中で思った。
自分が気づかないようなことを、何度も教えられた。

今、どこにいるんだろう。

そんなことを考えていると、突然あたりにだみ声が響いた。

「この娘が犯人であることは間違いない!なぜなら?私が決めたのだから」
「そんなのってないわ!!」

女王の理不尽な物言いに、少女は抗議の声を上げる。

「被告アリス。何か言いたいことはあるかね?」

白ウサギが少女、アリスに問いかけた。

「もちろんあります!私、悪いことなんてしていないもの!女王だか何だか知らないけれど、あなたみたいなワガママな人、今まで見たことがないわ」

「お黙り!この私を怒らせる気かい!?」

女王が声を張り上げると、アリスはびくりと肩を震わせた。

「なんだか可哀想だな・・・助けてあげようよ」

そんな様子を見ていたソラは、キーブレードを握りしめながらそう言った。

「でもねぇ・・・」

だが、ドナルドは渋い顔をしながら口を開いた。

「僕らは他の世界に参上したらダメなんだよ」
「干渉!」

グーフィーの言い間違いを、ドナルドがすかさず訂正する。

「干渉。他の事に介入すること」
「そうそう。それはダメなんだよね。世界の近所を守るためには」
「秩序だってば!!」

再び訂正するドナルドが声を張り上げるが、慌てて口をふさいだ。

「判決を言い渡す!!」

その時、女王のだみ声が再び響いた。

「被告アリスは有罪!!ハートの女王である私を襲い、ハートを奪おうとした罪である!」

女王の言葉に、ソラたちははっとした表情になると互いの顔を見合わせた。

「ハートって・・・もしかして」
「犯人は、ハートレス?」
「だとしたら、あの子は完全に無実じゃないか!」

ハートレスが絡んでいる可能性があるのならば、見過ごすわけにはいかない。

「この娘の首を撥ねよ!」
「いやよ、助けて!!」

女王が叫び、トランプの兵士たちが一斉にアリスに飛びかかろうとした瞬間。

「ちょっと待ってよ!!」

ソラはそう叫ぶと、前をふさいでいた兵士をはねのけ飛び出した。
15/05/18 20:38更新 / 星三輪サナ

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