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第六章:ようこそ、不思議の国へ(前編)Z

「とは言ったものの・・・証拠って何を探せばいいんだろう」

女王の城から出た4人は、巨大なハスの葉が立ち並ぶうっそうとした森に来ていた。
天井まで届き可燃その大きさは、迷い込んだものを圧倒させかねないものだ。

そこで彼らは、アリスを救うための手筈を考える。

「わたしたちは、ハートレスが犯人だってことを分かってる。だったら、ハートレスの事が分かる物を持っていけばいい、と思う」

「それはいい考えだと思うけど・・・例えばどういうもの?」

「それは・・・」

サクヤが口を開いた瞬間、4人の前にハートレスが数匹現れた。
皆一斉に武器を構えるが、またしてもサクヤが瞬時に飛びかかりハートレスを一掃する。

だが、一匹の騎士のハートレスが彼女の手から逃れようと音を立てながら逃げていく。

それをサクヤは瞬時に追いかけた。

残された3人は、武器を手にしたまま呆然と立ち尽くしていた。

数分後、ハートレスを片付けたのかサクヤがトコトコと走りながら戻ってきた。

よく見ると、彼女の右手には何かが握られている。

「それ何?」

ドナルドが尋ねると、サクヤは右手を3人の前に出して見せた。

そこには鈍色に光る、先が丸まった棘のようなものがあった。

「さっき戦ってたハートレスがつけてた。掴んで引っ張ったらとれた」

「それ、毟ったってことだよな?」

「うん、毟った。これ、証拠になるとおもう」

目を輝かせてそう言う彼女は、まるで新しいことを覚えた子供のようだった。

「サクヤってすごいよねぇ」

グーフィーは盾の後ろから顔を出しながら、感心したように言う。

「すごい?なにが?」

きょとんとするサクヤに、グーフィーは続けた。

「だって、ハートレスにも怖がらないで戦えるんだもの。ボクなんか、まだちょっと怖いんだ」

「グーフィーは臆病だからね。ボクがそばにいないとダメなんだ!」

ドナルドは胸に手を当てながら誇らしげに声を上げる。

そんな彼にソラは苦笑いをし、サクヤは不思議そうに首をかしげる。

「こわい、って何?」

「えっと・・・怖いっていうのは・・・」

「グワァ!!!」

グーフィーがサクヤにこわいの意味を教えようとした瞬間、ドナルドの悲鳴が響き渡った。

サクヤ以外がびくりと肩を震わせ、ドナルドが指をさした方向を見る。

そこにあったのは、空中に浮いた猫のようなものの顔だった。

「だ、誰だお前!?」

ソラは瞬時にキーブレードを構える。
ドナルドとグーフィーはちゃっかり彼の後ろに隠れて様子をうかがっていた。

「誰だろうね?」

猫の首はにやにやと笑いながら答えると、切り株の上にふわりと浮かび上がった。
そして、闇の中から浮かび上がるように体が姿を現す。

「可哀想にアリス。もうすぐ頭と体がさよならだ。ハートなんか盗んでないのにね」
「あなたは、何かを知っているの?」

サクヤが問いかけると、猫はニヤニヤしながら4人を見下ろして言った。

「チシャ猫は何でも知ってる。けれど教えるとは限らない」
「なんだよ、ケチ!!」

ドナルドが大声を上げるが、チシャ猫はニヤニヤしたまま言葉を紡ぐ。

「答えは闇の中、犯人も闇の中、チシャ猫も闇の中・・・」

まるで歌うように言いながら、チシャ猫の身体は闇の中へ消えて行った。

「信用していいのかなぁ?」

不安げな声を上げるドナルドのそばに、チシャ猫が不意に現れた。
悲鳴を上げてサクヤにしがみつくドナルドに、彼はまたニヤニヤしながらこう言った。

「信用したい?したくない?選ぶのは君達さ」

そう言って彼は闇に溶けこみ、姿はまた見えなくなった。
15/05/18 20:39更新 / 星三輪サナ

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