「こんな時間までどこに行ってたの!!」
本島に戻ってきたソラたちを出迎えたのは、彼らの両親を含めた村人たちの怒号だった。
皆怒りと心配が入り混じった顔でこちらをにらんでいる。
3人はびくりと体を震わせると黙ってうなだれた。
子供が出歩くには遅すぎる時間であり、ましてや親に内緒で海へ出ていたのだ。怒られるのも無理はない。
仁王立ちしている自分の母親を前にして、ソラはまるで叱られている子犬のようだった。
「まあまあ」
そんな大人たちに優しく声をかけたのが、カイリの親代わりをしている村長だった。
「皆無事で戻ってきたんだ。それでいいじゃないか。それ伝える言葉をまだ私たちは聞いていないぞ?」
「ですが・・・」
親たちは何か言いたげに村長を見たが、彼の優しげな笑顔に先ほどの怒りも萎えてしまった。
「とにかく・・・無事でよかった。だけど、もうこんなことは二度としないように」
「「「はぁい・・・ごめんなさい」」」
ソラたちが心からの謝罪を口にすると、皆の顔に笑顔が戻った。
「ところで。君たちの後ろにいるお嬢さんは、新しい友達かい?」
村長は3人の後ろに立っていた見慣れない少女に目を移すと、ソラに優しく問いかけた。
それを聞いて、ソラはあっと思い出したように言った。
「そうだ。島にいたから連れてきたんだけど、きおく・・・なんだっけ?」
「記憶喪失、だ」
「あ、そうそう。それ。きおくそうしつなんだよ、この子」
ソラとリクがそう説明すると、村人がざわめき始めた。
中にはわざわざ顔を見に来る者までいる始末だ。
「なんと!それは大変だ。誰か、このお嬢さんを知っているものはいないか?」
村長は村人たちに向き合い声をかけてみるものの、皆顔を見合わせるばかりで誰一人名乗り上げようとはしない。
少女の方も、何も思い出せないのかただ首をかしげている。
「ううむ、困ったな。ソラたちはほかに何か知っているかい?」
「う〜ん・・・俺たちが知っているのは・・・歌がすごくうまいってことだけだよ。名前も覚えていないって言ってたし」
その言葉を聞いて、村長はますます頭を抱えた。まさか、名前まで分からないとは思わなかったのだ。
だが、もう夜も遅く風も冷たくなってきている。このまま黙って時間が過ぎていくのはいただけない。
このまま居心地の悪い沈黙が続くかと思われた、その時だった。
「だったら、俺がこの子の面倒を見る!!」
沈黙を切り裂いた声に、皆の視線が一斉に注がれる。
その声を発したのは、天に向かってめいっぱいに腕を上げたソラだった。
「な、何を言っているのソラ!」
ソラの母親が驚きと呆れを含んだ顔で彼をにらんだ。
犬や猫などの動物ならまだしも、面倒を見るといっているのは人間の少女だ。
余りにも軽率すぎるソラの言動に怒るのも当然だ。
「これはあなたが簡単に決められることじゃないのよ。第一、あなたはまだ子供でしょ?人の面倒を見るってとても大変なことなのよ!?」
「そんなの分かってるよ!だけど・・・だけど放ってなんか置けないよ。それに、やって見なくちゃわからないだろ!?」
「いいえ、いけません。ここは村長さんに任せましょう。きっとすぐに御両親やお家を探してくれるわ。あなたも、その方がいいでしょう?」
ソラの母親はそう言って少女の方に顔を向けた。
少女はしばらく彼女を見ていたが、突然首を横に振った。
「私、ソラといる。ソラと一緒がいい」
「ええっ!?」
少女の思わぬ言葉に、周りがたちまちどよめいた。
中でも、一番驚いた顔をしていたのは、あろうことかソラだった。
「行きたくないのか?」
「・・・私は、ソラといる・・・どうしてかはわからないけど、そうしたい」
少女の口調はたどたどしい。だが、その言葉には迷いの類は見られない。
彼女のかたくなな態度に、村長は小さくため息を吐いた。
「やれやれ。本人がこう言っているようでは、我々も無理強いはできませんな。どうでしょう。せめて今日一日だけでも・・・」
「・・・そうですね。いくらなんでも、こんな夜の島に迷子を放り出すわけにもいかないですしね」
「・・!じゃあ!」
ソラが母親を見上げると、彼女は小さくため息をついてまいったというように両腕を広げた。
自分の申し出が通ったことを知り、ソラは大きくガッツポーズをする。
それを見たリクとカイリも、安心したように胸をなでおろした。
ソラの家に案内された少女は、その後ソラの家族と共に夕飯を済ませ、今日の寝床をどうするか相談した。
少女はソラの一緒がいいと申し出たのだが、さすがにそれはまずいというのことで、今夜はソラの母親の部屋で寝ることになった。
その夜。
ベッドの中でソラは少女の事を考えていた。
彼女はいったい何者なのか。
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