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第一章

頭上に響く、禍々しい咆哮。

近づいてくる、無数の足音。どんどん大きくなるその音は、止んだ。

分かる。自分の隣で止まったのだ。誰かが、自分を見ている。


「こいつ、こんなところで何寝てやがるんだ?」
「邪魔なんだよな…。どう処分する?」

二人の男が見下ろしているのが分かる。目線を感じ取れた。異様な気配も感じ取れる。声も、個性豊かでもなく、感情を抱きもしない、ただ単調な音程の声。長い間聴いていると、おかしくなってしまいそうな…。
 男どもが悩んでいると、もう一人誰か来たようだ。

「そいつ、処分するのか?」
「おう。邪魔だからな。妖蛇様の神聖なる巣の近くで、こんなに堂々と寝ころぶ奴、生かしておいても重宝ないだろうしな」
「勿体無いぜぇ?強そうな体つきしてるが…。強い奴なら、扱使っちまえばよくないか?拾ってやった恩が云々〜とでも言っちまえばよぉ…。それに、弱くても奴隷にでも使えばよくないか?言う事聴かないなら処分でいいだろうけどよ」
「名案だなぁ、おい!そうしちまおうぜ!」

自分が起きて聴いているとも知らず、男どもは話し続ける。
自分は、奴隷にされるのか。自分は、扱使われるのか。
別に何の感情も抱かなかった。ここが何処かも知らないし、話の内容もついていけないのだ。勝手にすればいい、と思った。
「妖蛇」? 神聖な巣?そんなもの、どうでもいい。

自分が知りたいのは、ただ一つ。

 ”  私は…   誰だ…   ? ”



−XXX−



「妖蛇」を討たんと心に誓った生き残りの将たちは、それまでの敵対関係も全て一時的に水に流し、ただ「妖蛇」を討つという同じ使命をこなす為に、荒れ果てた大地の上で、討伐軍結成を図った。名だたる将は、やはり「妖蛇」に尽く贄にされ、残ったのは司馬昭、馬超、竹中半兵衛を頭角とした、ごく少数の名将だった。

「妖魔どもめえぇ!よくも馬岱やホウ徳殿を…!絶対に許さん!我が正義の槍で、全員八つ裂きにしてくれる…!」
「まぁ、落ち付くんだ 馬超さん」

半兵衛が止めた。この陣営で「妖蛇」にぶつかっても、勝てる確率など無に等しいのだ。この戦力では、幾ら名将一人一人が有能であっても、相手は妖魔の集団。是より何倍もの人数が居るし、尚且つあの強大な「妖蛇」を撃退できるような威力を持った武器も必要であろう。今我らが持っている武器でちくちくと「妖蛇」を突き刺した所で、倒せるのも夢の彼方であろう。

半兵衛は分かっていた。この戦、勝てるわけがない。

『無謀なんだ。人間と妖魔の大群の争いなんて、勝てる訳がないんだ…』

迫りくる開戦時間。もうここで、自分は、贄にされる――
自分の、寝て暮らすという夢は、塵滓と消える…。

「まあ、努力はしてみよう。駄目なら潔く散るだけだもんね」

半兵衛は決意を固めた。援軍でも来ない限り、この状況、覆せるものでもない。心強い援軍が来てくれる事を強く祈っていた。
 せめて、少しは抗ってやる…。
半分自棄糞になっているが、そんなこと言っていられないのだ。
とにかく今は、凄絶に抗い続けるしかない。

「いこう。時間だよ。 相手は待ちくたびれてるだろうね」

馬超は頷いた。司馬昭は苦笑いしたが、刀を持つなり顔色が一変し、覚悟を決めたように、鋭い顔つきになっていた。

「往くぞ!正義を最後まで貫き通す!」
「それじゃ、いってみよー」
「おう、やってやろう!」

三人は武器を持ち駆けだした。妖蛇の巣元へと。
 この後自分達に降りかかる宿命が良きか否か等、知る由もなかった。



−XXX−



気付いてみれば、先とは違う風景が眼の前に広がっていた。
先の男どもに連れられたのだろうか。起き上がろうと腕を使って立とうとすると、何故か腕が言う事を聴かなかった。手首に妙な冷たさを感じていたが、それが錠だと今気付いた。

じゃらり、と音を立てて手錠に繋がった鎖が揺れた。
背中の方に腕をまわされた状態で手首を封じられていたので、どうも身動きが取れない。念入りに足首まで錠がつけられていたので、横たわっている事しか出来なかった。

鎖の立てる金属音に気がついたのか、先ほどの男どもが自分の前に集って来た。牢屋のような室の中に入れられた自分が酷く滑稽なのか、にたにたと笑っている。

「おい、お前!名前はなんだァ?!この俺様の下で働かせてやる!」

いきなり三人の中の一人が自分に対して呶鳴った。初対面でこの扱いか、とふと思ったか、どうでもよい事だった。改めてこいつ等の顔を拝んだが、どうも気色の悪い顔つきである。三人とも同じ顔だし、見ていると腹が立つような、そんな顔である。

『この者達、何者なのだ…?』

疑問に思ったその時、何故か体全身に激烈な痛みが走った。

「ッ…?!」

声を出して叫ぶ事は堪えたが、まるで刃物で
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