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第二章

「おい、グズ!早く動け!早くしないと世紀の大戦が始まるだろうが!」
「…承知」
酒呑童子は言われるがままに一人の妖魔の僕になっていた。
その妖魔の名前は、蛟(みずち)と言うらしい。先程戦の支度をしている時に他の妖魔から話しかけられた際蛟と呼ばれていたので、この妖魔の名前は蛟である、と酒呑童子は理解した。
「グズ」の意味を酒呑童子は理解していなかった。自分が何者かも知らない今、他の必要最低限の事以外はを知る必要はないと思っていた。蛟は「グズ」を卑下する言い方として酒呑童子に使っていたが、彼自身はあだ名だと思っていた。

「お前には、これから始まる大戦で戦ってもらうからな。死にたくなければ死ぬ気で戦えよ!あと、逃げようなんて考えるなよ?その錠は、遠隔操作でいつでも電流を流せるから、逃げたら死が待ってると思っていろ!」
そう言って蛟は酒呑童子の四肢についた錠を外し、首に一回り大きな錠をつけた。戦い易さの配慮であろうが、全く嬉しく感じない。

この電流対応錠は、三国志・安土桃山の時代に在る様なモノではない。異世界となってしまったこの世界は、どうやら現代にも影響を与えてしまったらしく、姉川の地には高層ビルや高速道路が出現している。他の場所でも真夏のビーチが広がっていたりと、なんとも変わった風景が広がっているらしい。そうなると、この電流対応錠の入手元は簡単に分かる。現代の世界から引っ張ってきたに違いない。そんな話を、戦支度の時の他の妖魔と蛟の会話で入手した。酒呑童子の姿を見た他の妖魔が、彼の四肢についている錠について蛟に聴いた時、蛟がこのような返答をしていた。自分達がより有利な位置に立てるよう、現代から戦で使えそうな道具を調達しているらしい。電流対応錠をどうやって現代の人々から貰ったのか、気になる事は多いが、気にしている場合ではない。ちなみに、今現代から調達してきた道具はこの錠のみのようである。

錠についていた鎖は無くなり、身動きはとりやすくなった。が、これはあくまでも戦う時の配慮なだけであり、その錠から流れる電流の威力は変わらず、結局は行動が制限されていた。首に装備させられたせいで、より体に電流が伝わりやすくなり、下手すると死に至る。蛟の気に触るような事をすれば、死ぬ。そう酒呑童子は理解した。恐怖も畏怖も何も感じないのに、何故か腕が震えた。体が勝手に拒否反応を起こしていたのだが、蛟はそれを見て嘲笑い、「せいぜい役に立つよう頑張るのだな」と低い声で言った。

「…私は、使われ続けて死ぬ運命なのだろうか」
酒呑童子は、両手を見ながらそう言った。



―XXX―



「へえ、ここが妖蛇の巣ねえ…」
本陣から馬を走らせ続け、討伐軍は妖蛇の巣へと足を踏み入れた。
大地の荒れ果てた姿は禍々しさを露にし、空は黒く暗い色を放っていた。まるで、暗黒の世界にでも来たのかと思うほど、この巣の周りは深い闇に染まっていた。
「あれが妖蛇か」
司馬昭が指差した。その指先が示す先には、強大な邪気を放って自身は狂ったように暴れている妖蛇があった。妖蛇からみれば人間は蟻のような小ささであろう。それほどにまで妖蛇は巨大であった。
「あれを倒すのか…?」
「のこのこついて来てみたが…無謀と言うに等しくないか…?」
「無理だあ…あんなのに勝てっこないさぁ…」
戦う前からして討伐軍から泣き言が漏れ始めた。どの兵も、自分が想像していた妖蛇よりも巨大な妖蛇を見たのであろう、既に逃げ出そうとしている者までいる。士気が一瞬にしてどっと下がった。馬超は下がった士気を上げようと、
「負けるな、この妖蛇に弑された友、家族、愛人、同朋達の為にも、ここで逃げる訳にもいかないであろう!俺達には、妖蛇にも崩せない『絆』がある。俺達が結束すれば、妖蛇等赤子の手を捻るも同然に倒せる!」
と、言い放った。それでも顔が真っ青な者もおれば、その一言で我に返り喝を入れる兵もいる。やがて兵同士喝を入れ合い、士気は先程より増して回復した。槍や剣を振り上げ、「応、応」と点呼している。これは戦国時代では士気を高め自分達の頭角に立つ者を讃えるという意味合いを持ち、また、戦闘勝利後の凱歌の序章にも利用する。つまりこれは、馬超によって奮い立った兵達による意気込みの表れと言える。馬超は頷き、
「さあ、我らが正義の槍で、あの妖蛇の首を討ち取ってやろう!」
と言った。将兵は「応!」と口を揃えて言い放ち武器を高々と掲げた。が、完全に馬超が前に出たが為後ろに下がっていた司馬昭と半兵衛は、その意気込みにどうも乗る事が出来なかった。二人はそう易々と妖蛇は倒せない、と確信していたが故である。
「馬超殿はああ言っているが、俺達の武器で妖蛇を倒そうなんてそれまた夢の話だな」
「そうだね。妖蛇の首に刺さりもせずに跳ね返されるだろうね」
二人
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