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1-9 プロローグのプロローグ


 逃げ切った。思わずガッツポーズを取ってしまうぐらいに勝利の気に満ちている。なんとか家にたどり着き俺の部屋に入れた……どうなることかと思ったぜえ。
「どうなること、とは?」
「わっ!?」
 桐がそこには居た。神出鬼没とはこのことを言うのだろう。俺を追い抜かすってどんな技使ったんだよ、瞬間移動かなんかか? 
 あれか、ワープポイントとかが俺のタンスやら机の引き出しに入ればあるってのか? ……それは流石にないか。
「さぁ観念して妹ルートに入れ」
 なんだろう。既にこの会話の時点で「妹」とコイツを認識出来ない、したくない。本当の妹ならそんな”妹ルート”なんてメタなこと言わねえよ!
「ふざけるなよ」
「な、なんじゃ」
「妹がルートとか言わねえよっ」
「今頃いうか!? 一部には需要があるのじゃ!」
「一部の存在は認めるけど、俺にとって需要は全くないな。他を当たってくれ」
「う、うるさいっ! わしもす、好きでお前なんぞの嫁にされとうないわ」
 なんと嫁とは、いきなり飛んだな……ああ、勿論俺はお断り。
「俺の嫁にする気はさらさらねぇ」
「なら婿がいいか」
 性別なんて些細な事ですか、そうですか……って、そういう問題じゃねえし!
「べ、べつに貴様のために婿になってあげるんじゃないんだからねっ☆」
 無茶苦茶だ……もう突っ込みきれねえ、せめて嫁には戻せ。
「いいかげん同じ展開は飽きてくるぞ」
 桐、私の嫁になれっ。俺、断るっ。桐、黙ってわしの婿になれっ。俺、全力でNo thank you!。……の以上無限ループのこと。
「むむう……ならそこに寝ろ」
「はい?」
 何を言ってるんだこいつは。てか、ここは俺の部屋だってーの、指図すんじゃねえ。
「わしが押し倒――」
「アウトォォォォォォォォォォ!」
「なら深い接吻でも、ディー」
「あうとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! このゲームの対象年齢一五歳以上だから! それやるとR−18指定が入るからっ、絶対に」
 今日ぐらい動転せずに冷静に事を対処したかったというのに、このエセ妹は……っ! 
「なら、どうしろと」
「まずそこに座れ」
「こ、こうか?」
「それで待機」
「分かった」
 さてと……俺はパソコンでも立ち上げるか。
「で、俺がパソコン机に座る」
「それで?」
「俺がネットサーフィン」
「で」
「待機」
「わかった」
 さてとー。とりあえずこのギャルゲの攻略サイト見つけんとな。先をある程度知っておかないとショックで気か理性を失うかもしれん。
「…………」カチッ、とマウスのクリック音。
「なぁ」
「…………」カチッ。
「わしは……」
「待機」カチッ。
「し、承知した」
 変なとこ従順なのな……一応桐は自分の益の為だから利には叶っているんだろうけど。
「…………」カカ――、とスクロール。
「…………」
「…………」カチッ。
「わしはどうすれば」
「待―― へぶっ!?」と、桐の拳が顔に入る。

「っ、いってぇな!」

「馬鹿にするのもたいがいにしろ貴様! この動作に一体何の意味があるのというのだっ」
「意味ならある」
 そう、重大な意味だ。
 俺が今まで無意味なことを言ったか? ……前例が少ないから何とも言えない? だとしても、これは俺も満たし、桐も満たす。メリットに溢れた動作なのだ。
 俺は休息を、桐も気を紛らわす。そう、それは――
「言ってみよ」
「これもプレイの一つだ」
「…………」
「放置というプレイの―― ぐあっ!?」桐の足が俺の顔へめり込んだ。

11/03/17 11:41更新 / キラワケ

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