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2-6 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に始まっていた。


 外に出たのはいいものの、

「もう暗くなってきてるし」

 真上へと広がる空の色は朱になり、そして青に変わっていく。それは家からの道を歩くたった僅かの時間のことだった。

「さてと、どうするかな」

 正直なんの予定も計画もない。とりあえず生存本能的に危機感を覚え桐の触手こと社会的消滅も考慮すべき展開から逃れたかっただけという感がある。
 今から部屋に戻っても挙動的にも展開的にもおかしいし……というかプライド的に戻りたくはないな、うん。
 というかさっきの『少し頭冷やそうか(CV:田村ゆかり)』はそっくり桐に返すぞ?
 まずはその発情し切ってオーバーヒートした頭を冷やせ、冷凍庫で、いやドライアイスでいいや。

 と、今本人が居ないところで、ぶつくさ言っても仕方ないので後の文句は心の中に留めておくとしよう。
 じゃあ……一通り時間を潰せるであろう商店街をぶらつくとするか。



 舞台説明しないなんてどんなクソゲーだよ。こんなクソゲーですから。ほんと、どうしょうもない……クソゲエは諦めて、俺が代わって、ここの”舞台説明”をしようと思う。
 え、なぜ今頃するかって? 完全にする機会を失っていただけなので深い意味はない。


 藍浜町、”浜”という名前から察せられるがここは海に面した町である。
 海には砂浜が多く残り、それなりに都市からのアクセスも良いので海水浴場を設け夏は観光客で賑わっている。
 駅が海に近く、徒歩で十分行ける距離というのも大きい利点だろう。
 この町は大きく二つに分けられ前述の「海側」ともう一つの「山側」が存在する。 双方は丁度鉄道の路線で区切られ、線路がその海側と山側の境界となっている。
 山側はというと、主に商店街のアーケードや学校があるのはこちらで、そのほか住宅も主にこちらに密集していたり。
 そして山側ということで、その町から少々離れた場所には、山がそびえ立っている。 細長い町に沿うように、継ぎ目なく山々が連なるので、海側から見ると鬱蒼と茂る緑が真っ先に目に入るだろう。
 その山を越えると、また別の町があるのだが、完全に山に遮られこの町から望むことは出来ない。
 で、その”山側”に存在する高等学校に俺とヒロインは通学している。
 
 その名も”藍浜高等学校”なんの遊びもない地名が由来の平凡な名前の高校だ。 
 アクセスがいいのと住宅地に近いことから、ここの生徒数はそれなりに多く、一・二・三年合わせて六〇〇人を超える、クラスも一学年は5クラスほどあり、俺とユキ、その他は一年二組に在籍している。

 ということで簡単な舞台説明は終了ということで。

 それで俺はというと、山側にある商店街に来た。いつも通り、夕方のこの時間は主婦やら学校帰りの高校生やらで、結構賑わっていて身近に活気を感じる。そんな中をなーんの目的もなしに歩いていると、

「……あれ? 下之君?」

 誰かが声を掛けてきた。そしてその声の主をすぐさま認識して反応する。

「おお、奇遇だな。委員長」


* *

 
 一方の下之家では。 


「!? ……やつめ、女と遭遇したな」

 この場合でも”おなご”と読むのを忘れずに。
 桐の能力に”ONAGOセンサー”が加わった瞬間だった。いや……女の勘の強化版と思っていればいいと思う。

「しかしゲームヒロインではないな……まぁ、大丈夫じゃろう。現実(三次元)の女にモテる訳がないじゃろ」

 そうして整った幼き顔でケラケラと笑う桐。さりげに酷く言われているユウジ。ちなみに、これも”おなご”と読――
11/07/10 03:54更新 / キラワケ

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