交わるはずのない世界と世界が交わるとき、2つの物語が始まりを迎える――
無残にも砕かれたアスファルトは下地の土が露出していた。電柱は倒れ、電線はガードレールに垂れかかる。
何かに衝突したか前部が大きく窪んでしまった車の車内には粉々に砕けたガラスが散乱していた。
落ちた看板はぐにゃりと拉げ力なく道路に投げ出され酷い惨状を露わしている。
荒廃した旧都で、俺らは戦っていた。
「くっ、和! どうすりゃいいっ!」
敵からの砲撃が襲う中で、隣を共に走る彼女へと質問する。
「……とりあえずは逃げるしかなさそうですね」
「全然解決策じゃねぇな」
「それは後々」
黒服。それもワンピース状に肩から足首、手首までを覆う飾り気の一切ない黒一色の服を着る。
腰まで届くかのような長く流れるように美麗な黒髪を有し、精悍で非常に整った「美」をつけても遜色ないほどの美少女が彼女だ。
左手には繊細に磨かれて銀色に輝く刃先の反った日本刀を提げていた。そう、そして俺と彼女は戦っている。
「主、そこの路地に入ってください」
「おう」
半分以上が崩れたコンクリートのビルの影へと隠れる。
「8秒後に砲撃、来ます」
「!? だからどうすりゃいいんだっ!」
後ろを振りむけば、これ以上は進めない行き止まり。見事に袋小路に追いやられた訳だ……それも見方の彼女に。
「これを」
と言って彼女が俺へと放り投げたのは薄汚れた銅色を放つ10円玉だった。
「これを撃ってください」
「ちょ、まて! 俺はパチンコ玉しか――」
「有無を言わずに撃ってください、主。……きます」
「ええいっ、こうなりゃヤケだ!」
そうして俺は10円玉を空へと放る、目の前へと10円玉が落ちてくる――それが分かった途端。
「高速射撃! ”スピードシュート”」
俺の右手から放たれるは電撃……とは呼べない弱弱しい代物。弱弱しいことには違いないが、速度が他の攻撃を比べ物にならない。
そして言唱からのラグは1秒未満で、連続発動が可能なのがこの攻撃の大きな長所だった。
不意打ちのごとく相手にモロに食らわせた。普通なら速度だけの威力はからっきしなこの技も何か固形のものを付加すれば大分マシになる。
そもそもこの技は熱を微量にしか発生させず、瞬はつ的な目くらましなどが主な用途な技であり、それをなんとか敵へとぶつけること成功した。
「ていやっ!」
そうして俺が電撃を放つと同時に、彼女は壊れ砕けた道路を踏みつけ勢いを付けて飛びあがる。
キラリ光る刃先を敵へと向けて、鋭く光る日本刀を大きく振りかざし、相手を一閃した。
ダメ押しのように俺は、さらなる能力を発動させる。
「強力射撃! ”ライトスピア”」
右手という小さな面積から生まれたとは到底思えない程に電撃は強大に激しく暴れまわり、一直線先の敵を捉えた――
「Aの世界」
世界は二つ存在する。
世から抜け落ち死を迎えたモノの行く「去の世界」人としての一生を全うするための「現の世界」
その二つを結ぶもの。
「次王位
ネクストクラウン
」
世界を変える力を持つと言われるその位は頂点に辿り着いたモノのみが手に入れることが出来た。
そしてその頂点に立つのにも条件が存在する。
「能力者
アビリター
」
特殊な力を持ち戦うことの出来る選ばれしモノ。そしてその能力者を頂点に導くのが――
「仲介者
メディエーション
」
死人から選ばれ、能力者の能力を目覚めさせる役目を担う。
この戦いの頂点に誰が立つのか……それは神でさえも知ってはいないのかもしれない。
世界は回っている。私たちの意思なんて無視して。世界は回り終えることはないだろう。
しかし「それを止めて見せよう」という、全てに反した、酔狂ともとれる異端者が現れたとしたらどうするのだろうか?
この世界を望まないならば賛同しその者に加担するか、――力なく諦め妥協するか。
それとも――
二〇一〇年 五月六日
すごしやすい春と夏の境で永遠に広がる窓からの景色に、鮮やか過ぎる青の色が映し出されている。
そんな青空が夏の訪れを僅かながら予感させるも、気温はそれほどなく過ごし易い。
ここはとある学校の教室。
小学校から高校でよくみられる、オーソドックスな学校机に開かれるのは文字一つ無い一冊のノート。
窓から吹き抜ける風がそれをパラパラとめくりめくっていく。ノートのページが表紙に近づけば、点々と自分が記述したかと思われる文字群が現れ始める。
いつからこのノートが使われていないのか、それはその持ち主がノートに興味を失くした日。
その持ち主はといえばいつしか板書等を諦め、ただ小さな教室の窓から力なく只呆然と
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