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1-2 プロローグのプロローグ


「ユウジー」

 まて、落ち着くんだ俺! 俺の交友関係にこんな声の持ち主はいない。
 いやもしかしたらこの人生のどこかに伏線が!? ……ないよな。
 地味に過ごし地味に生き抜くことにプロ並みの自信を持つ俺が、こんな女子から声を――
「……というかどんな人なんだ?」
 声はかわいいぞ。しかし実際中の人は果しなく美少女からは遠かったりするパターンが多い(?)
 ようするに声と容姿は一致しない可能性が高いからな。
「……とりあえず百聞は一見にしかず、見てみるか」
 窓を覆うカーテンを開き窓ガラスを介して下を見ると――、ササー……即効でカーテンを閉じた。なぜかって?
 その女子がかわいいからさっ!
 いやあれは超がつく美少女だ(参考、過去16年間の脳内メモリー)
 黒髪ポニーテールとか反則だろう! 媚びすぎだろう(?)……これはドストライクだ。
 でも今は朝、さらに既に玄関で待たせているので余韻に浸っている余裕はない、急いで行けなければ……いやまて落ち着け、よおく思い出せ。
 あの女子が友人に居た記憶はない、まして声さえ聞いたことのない――
 フラグを立てた覚えはもっとない。
 ならなぜ、この玄関前からモーニングコールが? そういやあの顔に何か……似た何かを……最近見た気がするんだよな……
「まあいいや」
 そんなことどうでもいいす。こんなカワイコと登校出来るなら構わないぜ! 夢なら長く続いておくれよ。
 パジャマ姿の俺はまずは制服に着替えることにした。制服はベッド側のクローゼットにあるためパソコン机から少し歩く。
 その時――
「痛っ」
 カツっ……何かを足で突き飛ばしたようだ。その痛みがある足元を見てみるとゴチャゴチャと絵が描かれているソフトケースがそこにはある。
「基本片づけないからな、俺」
 全く誇れないことをほざきながらケースを手に取る。
「!」
 そのパッケージに描かれていたのは、透き通る大きな目に、ゴムでまとめた黒髪のポニーテール。いかにもなギャルゲ制服を着ている、その絵の中の女の子は――

 窓の外に居た、俺の名前を呼ぶ女子と瓜二つの容姿だった。


 一体……何が起こったというんだ。ゲームと同じ女の子が窓の外に居るなんて……これはまさに男の夢の実現だが! しかし何がどうしてこうなったんだ!?
「まあ……いいか」
 短絡的な俺は(本来自分では言わない)そんな細かいことは放り投げ、素早く制服を着、焼けていない食パンを口にくわえながら玄関の戸を勢いよく開けた。
「あー、遅いよユウジー」
 一瞬笑顔を見せるが、すぐにムスっとして言う。うん、これはいい。
「ユウジー何でユキの顔じろじろ見てるのー?」
 ユキというのか……いい名前だ。首を傾げる描写まで花がある。正直たまらんね、うえぃ!
「いや、なんでもない(棒)」
 し、しまったかなりの棒演技だ!某姫に匹敵することを確信するほどの棒だよコレ! ……イカンイカン、主人公ボイスで行くぞ。
「待たせて悪かったなユキ、いやぁ目覚ましがストライキしててさ」
「単にセットし忘れてただけだよね、二つなかったっけ?」
「さらに一つは電池切れだった」
「もー、ちゃんと確認しといてよ?」
「へぇーい」
 スバラシイエークセレントォ! この楽しい女子との会話! 本当生きててよかったわぁ……
「あっこんな時間」
 ユキは取り出した携帯に表示された時計機能を確認して言う。
「急ごうっユウジ」
「あ、ああ」
 女子、と、かける、通学路。
 前には、フリフリ揺れる、ポニーテール。
 人生、で、一番、幸せな時、かもしれない。

『しかし……そんな時間は長くは続かなかったのじゃ』

「ユキっ早いから」
「ユウジが遅いんだよー♪」
 こちらを向いてべぇーと指を目もとに宛てて言う彼女。まさに「まって〜、捕まえてごらんなさ〜い」という構図……だっ!?
「! ユキ前っ前!」
「え?」
 キキィッーッドォン、というタイヤの削れ、擦れる音。
「……………」
 何が今起こったのか、理解するのには数十秒かかったと思う。
「っ!」
 余所見をしながら走っていたユキは交差点に差し掛かった。しかしその同じ交差点へは車が向かっていたのだ。ミラーの設置が無く見通しの悪い場所。
 そして次の瞬間。ユキがはねられた。
 見ればユキが飛び出して行ったのだ、車もそれほど速度は出ていなかった。しかしその車にユキは弾き飛ばされ、その華奢な体は砕けてしまい―― 
 アスファルトに流れ出す鮮血。僅かに開く両目は焦点が合っていなかった。
「ユキ!」
 俺は思わずユキに駆け寄っていた。細い体でなくともその衝撃に耐えることが出来なかったのは当然のことと思う。
「ユウジ………ユキばかだね」
「何も話すなっ!」
「ユウジともっと………話したかった。ごめん……ね
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