周囲の目線を感じて昇降口では流石に手を離す。
ユキも何故かは分からないが、惜しむよう俺の手から自分の手を離した……のだが。
「!?」
さ、殺気っ!?この明らかに憎しみのこもった視線……複数居るだとっ!
この暑苦しさも感じる視線は女子のものではない……おそらく大半は男子によるものだろう。
「(じと〜〜〜〜〜)」
……いや待て! その中でも一際深い呪いのようなものをドロドロに込めている奴がこの中に居るっ!?
怒り? 悲しみ? 羨望? 嫉妬? ……全てが闇鍋のごとくぐっちゃぐっちゃに混ぜられた奇妙な視線。
「(誰だ…………!)」
振りかえると全くもって意外な人物がそこには居て、ドスの効いた雰囲気を醸し出していた。
「おにぃーちゃん☆」
……あ、あれ? 今の意外な人物の発言で男子のものと思われる殺気が深く強くなった気が。
「さがしたんだよー?」
この猫かぶりっぷりからは想像出来ないがどうみても、見かけは完全に俺の妹になったらしい桐だった。
そんな桐が無垢な笑顔を形作ってそこに立っている。小柄で愛らしいその姿は男(シスコン)にとっての理想の妹を鏡に写したようにも見える。
……たださっきの数々の呪いのような不純なものを込めていなければ良かったと心から思う。それで大方台無しでプラマイゼロどころかマイナス要素が強い。
「ねー、おにいちゃん。聞いてるー?」
……それでいて何故にこいつがここにいるんだ?
「おにぃちゃん私ね、聞きたいことがあるのー」
……み、見えるぞっ私にも見えるっ! 桐を覆う殺気という名の深い闇の黒がっ!
なんか喋るたびに強く濃く深くなってませんかあなたのダークオーラ。
更に発せられるのは圧倒的な威圧感。こいつは俺と話したいようだし、おそらく人前では猫かぶりを解かない、そうなれば――
「わりぃ、ユキ先行っててくれ」
とりあえず桐との長期戦を覚悟してユキを教室へ行くよう促す。
「あ……うん。じゃあ待ってるからー」
少し驚いたように答え、ユキは教室に方へ駆けて行く。これでいい、これでいいんだ。
「ちょっと来て、おにーちゃん」
「っ!」
その時だ。油断はしていない。しかし桐が俺を呼んだ途端に俺の体は石像のごとく硬直した。
か、金縛りかっ!? 思うよう……てか体がまったく動かないぞ!? 桐は俺に何をしやがったんだ!?
喋ることもままならず、俺はただ桐の思うままに連れていかれた(ようするに拉致)
「許さぬぞ、ユウジ」
一階から下へ続く階段の下で桐は言い放った。
この学校に地下階というのは存在しなく、半地下にあるような用具倉庫が1階から下に続く階段の先にはある。
しかしこの用具入れの使用頻度は低く、用具入れと階段までにある踊り場に似た少しのスペースに俺と桐は居た。
「は?」
もはや猫かぶりが嘘のよう、てか面影は微塵になく老婆喋りを全力で披露していた。
「わしは貴様に幼なじみルートに入れなど言っていないぞっ!」
心の奥底から、は? である。いきなり呼びつけて何を言っているんだ、と。
ルート……ユキの? そうかゲームだもんな。それで俺はユキと手つなぎ登校して――
「でも入るなとも聞いてねぇな」
そうだ。あの時の桐の言ったヒントは少なかった。少なかっただけで、大きなヒントではあったが。その中に「ルートについて」一切聞いていない。
「黙れ」
ドスを効かせて圧制しようとする桐だが、既に慣れた。
「断る」
漢字・平仮名合わせ2文字での反論は桐と同じ。文字数的には桐の方が少ないが。
「拒否。ユウジ、貴様は何故わしのルートを選ばない!」
それを聞いて、俺は嘲笑するように言い返す。
「普通選ばねぇよ、まずはベーシックに幼なじみだろが」
「言い訳などいらぬし、その理屈はよくわからん!」
……じゃあ聞くな、と。そして桐、お前の俺を選ばせる理由はまったくわからん。ということは俺も桐の意見を汲む必要性はないな……だがここまでわざわざ来たようだし、一応聞いておくとするか。
「なんでそんなにお前のルートに俺が入って欲しいんだ」
「それはな……お、おにいちゃんが大好きだからっ!」(CV.田村ゆ●り)
「あー無理に頬染めないでいいぞ」
ここで恥ずかしそうに頬を赤く染めた桐を、こんな状況でなければ少しばかりは可愛いと思えたかもしれない。
「ちっ」(CV.般若}
「その声で成りきってるつもりか? 至る所から邪気が漏れてるぞ……どうせ他に理由があんだろ? お前のルートに入らなければならない理由が」
俺にルートに入ってほしいがだけに学校に攻め込んでくるものなのか? ヒロインの一人と考えても、まだ出会ってから1時間も経っていない。
「それは……あるぞ」
「で、ぶっちゃけると?」
「貴様はわしのものだからじゃあ
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME