高く、高く、宙を拍つあの鳥よりも高く、クルリ、クルリと空を舞っていた。
森羅万象全てが視界の中に納まり、柄にもなく子供じみた気分になってくる。
――嗚呼、世界は、こんなにも奇麗だ。
在るか無きかの昼の月、視界の端を伸びていく虹の七色、蒼穹の青に深山の碧、この世は何処までも美しい。
口の端が穏やかに浮き上がり、何年ぶりかに鼻歌の一つも出てきそうになる。こうも晴れやかな気分なのだ、少しくらいは置き捨てたはずの童子の頃に立ち返ってみても罰は当たるまい。風に乗って見知らぬ土地へと行ってみよう、とばかりに両手広げて羽ばたいてみようとして、ふと気づいた。腕を動かすどころか、首から下の感覚がない。
不思議に思い、視線を下げてようやく納得した。ちょうど盆の窪から下に在るのは、紅く紅く長く伸びる血液の尾、唯それだけ。
これは、斬首された刹那に見た静謐な世界。黄泉路の土産話に過ぎないのだ。頭が大地へと落ちていく、意識は闇へと墜ちていく。
既に命を失った肉と骨の塊が、一際高い音を立てて地面に転がった。
**
重く、太刀の切っ先を振り落す。彼は処刑人、今日も「悪」を処刑する。
何一つ考えず、無心に淡々と、ただ坦々と。
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