アレウーラ大陸の南に在る、諸島からなる国「マウディーラ」。その西端に在る島の港町「イーバオ」は、ヒトとレイモーンの民が共存する町だった。魔物の存在はあるものの、戦いからかけ離れた平和な場所であった。
だがある日、その町は壊された。
いつものようにやって来た定期便。しかし、積まれていたのは他の島からの荷ではなく、武装した兵だった。その場にいた船員達は、抗うことも逃げることもできぬまま切り捨てられた。船から飛び出してきた兵は町の中へとなだれ込み、イーバオを守ろうと立ちはだかるレイモーンの民と抗う術を持たぬ民衆とを区別することなく、切り倒していった…。
町が壊滅していく中、町はずれの灯台の下にある砂浜で、数人の兵を相手に抵抗を続ける者がいた。先端が槍のように鋭くなっている杖を持ち、詠唱を唱えている少女。そして、彼女を兵から守るように剣を構える少年だった。
少年の名はロイン・エイバス。彼は、心に闇を抱えていた…
「おい、ティマ。まだやれるか?」
息を荒げて、自分の後ろにいる少女に尋ねる。ティマと呼ばれた少女は顔をあげ、ロインの傷ついた背中を見つめた。
「大丈夫!それより、今、回復術を…」
「いい。」
ロインは短くそう言い放つと、剣を握りしめ、目の前の兵に向かって駆け出した。
「はぁ!!魔神剣!!」
ロインの剣から斬撃が放たれ、兵の動きを止める。その隙に相手の懐にもぐりこみ、剣をおもいっきり振り上げ、鎧を割って相手の体を切り裂いた。鮮血がほとばしり、兵は崩れるように倒れる。だが、ロインの後ろから別の兵が巨大な斧を振り上げて襲い掛かってくる。反応が遅れたロインはその攻撃を防ぐ術がなかった。
「アイスニードル!!」
詠唱を唱え終えたティマが、ロインを狙う兵にツララのような形をした氷の刃を放つ。それらはすべて命中し、絶命した兵は斧を振り上げたまま倒れた。ほっとしたロインだったが、すぐ左右から別の兵が襲い掛かる。ロインは両方の兵に向かって再び魔神剣を放ち、動きを止めると、ティマのもとへと後退した。
戦闘が始まってから、かなりの時間が経つ。先程よりも息は上がり、伝う汗の量が増える。確実に兵の数を減らしていったが、戦闘経験の浅い彼らでは、いつまで体がもつかはわからない。
「このままじゃやられるよ!ロイン、逃げよう。」
前衛で戦うロインは、接近戦で受けた傷が多く、ところどころ服が切り裂かれ、血でにじんでいた。だが、ティマの提案に彼は首を横に振る。
「…どこに逃げるっていうんだ。町にだってあいつらはいるはずだ。それに、こんな見晴らしのいい浜で隠れられる場所なんてない、だろ…?」
そう言うと、ロインは膝をついて倒れこんでしまう。疲労と出血で、まともに立つのもやっとの状態になっていた。慌てて回復術を唱えるティマ。だが、兵達はその隙を見逃さず、防御のできないティマに向かって一斉に剣を向けてきた。
…殺される!
その思いがティマの脳裏をよぎった。恐怖で立ち尽くす彼女は、まぶたを堅く閉ざすしかできなかった。
「魔神剣!!」
その言葉と何かが崩れるような物音を聞き、ティマはそっと目をあける。すると、ティマに襲い掛かってきた兵は、砂の上に伏していた。
…そして、ティマの見知らぬ人物が、倒れた兵の背後に立っていた。
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