…痛みを感じない
オレは死んだのか?
でも…なにか温かいものを感じる
それに、聞きなれた声が耳に入ってくる
この声は…
「……ティ…マ?」
「ロイン!!良かった。気がついたのね。」
ロインの頭上に、安堵の表情で満たされた幼なじみの顔があった。砂の上に仰向けになっていた彼は、体を起こし、周囲を見回した。すると、彼らを襲ってきた兵達の死体が見慣れた浜に横たわっており、水平線上が夕焼けで赤く染まり始めているのが目に入った。どうやら、だいぶ意識を失っていたらしい。
「こいつら、ティマが全員倒したのか?」
まさか、とは思いつつティマに尋ねるが、彼女は首を横に振った。
「ううん。偶然この町に立ち寄った旅人さんだよ。ロインの傷も、その人の仲間が治してくれたの。」
言われてみると、ロインの体に多数あった切り傷は癒えていた。腕に負った傷があった場所をさすりながら、よほどの力をもった人なんだろう、とロインは思った。その時、町の方から二つの見慣れぬ影がこちらに近づいてきた。
…新手か!?
ロインは咄嗟に剣を手に取り、身構える。だが、ティマはまったくその素振りを見せず、彼らに向かって叫んだ。
「カイウスさん、ルビアさん、大丈夫でしたかー?」
ティマの叫びに、近づいてくる影は大きく手を振って答えた。敵ではない。ティマの態度でそう理解したロインは、剣を腰にある鞘におさめた。
「あ、君気がついたんだね。よかった〜!」
赤い髪のポニーテールの少女が、ロインを見てそう言った。花をモチーフにしたようなスカートをはき、花形のロッドを手にしている。
…おそらく彼女が自分を治療してくれたのだろう。そうすると、隣にいる白いマフラーをした茶色と銀色の混じった髪の少年が、あの兵を倒したに違いない。
ロインがそう推測していると、ティマが大声で彼らに話しているのが聞こえた。
「嘘ですよね!誰も、誰も生き残った人がいないなんて!!」
「信じられないだろうけど、オレ達が見てきた限りでは誰も…」
「そんなはずない!!おばさんが…死んでるはずない!!」
彼らの言葉を拒絶したティマは、一人、夕焼けに染まる町の中へと消えていった。
「ティマ、待て!」
慌ててロインも後を追おうとした。だが、そのすぐ後ろを、二人がついて来るのに気がつくと、その歩みを止めた。
「…何の用だ。」
ロインは、先ほどティマと話していた時とはまるで別人のように、低く冷淡に彼らに尋ねた。その翡翠色の瞳には、殺気に似たものさえ込められていた。
「別に…あのティマって子が心配なだけよ。」
打って変わったロインの態度に怯みながらも、赤髪の少女は答えた。だが、それでもロインの睨みがゆるむことはない。そんな彼を見て、一緒にいた少年が一歩彼に近づいて言った。
「…自己紹介がまだだったな?オレはカイウス。こっちは幼なじみのルビア。オレ達は旅をしていて、たまたまここを通りかかったんだ。だけど、この騒ぎは放っておけない。だから、何か手伝わせて欲しいんだ。」
真剣な眼差しでロインに訴えるカイウス。その誠意が伝わったのか、ようやくロインから殺気が消えた。
「…ロインだ。」
「そっか。よろしくな、ロイン。」
カイウスはそう言って手を差し出したが、ロインは背を向け、黙って町へと歩き出すだけだった。そんな彼の態度に困惑するカイウスとルビアは、お互いの顔を見て頷くと、ロインの後を追って共に町へと向かった。
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