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第1章 影と少年 W

地下へと続く階段は、十数段ほどで途絶えた。彼らはその先の行き止まりで橙色の灯りを目にし、それに近づいた。すると、彼らの左手に、数メートル先に続く道が照らされているのがわかった。ここに誰かがいるのは間違いない。ただ、それが敵か味方かはまだわからない。彼らは警戒しながら、先へ進んだ。

「…おばさん、無事だといいんだけど。」

薄暗い道を進んでいく中、ティマがそう言葉をこぼした。そんな彼女を、横で歩くロインが大丈夫だと励ます。だが、灯り持って先頭を歩いていたカイウスには、そんなロインの顔にも焦りが見えているのに気がついた。カイウスは、そんな二人の様子を見ていると、2年前の出来事を思わずにはいられなかった。

故郷を襲った異形の魔物。それを退ける為に父は隠していた力を使い、教会に捕らえられた。父を助けたい一心で村を出た自分は、道中、父の安否が気になって仕方がなかった…。

「なあ、ロイン。一つ聞きたいんだけど。」

過去の記憶を封じ込め、カイウスはロインに声をかけた。だが、彼からは何の返答もない。先ほどよりも声量を上げて再び尋ねるも同じだった。さすがにイラっとした彼は、ロインの方を振り返った。

「おい、聞こえてるんだろ。返事くらいしろ!」
「カイウス、ケンカしちゃダメよ!」

カイウスの大声を、すかさずルビアが抑え込もうとする。だが、熱くなるカイウスとは正反対に、ロインは冷たく一言を放った。

「…助けてくれたことは感謝してる。だが、お前らと馴れ合う気はない。」
「ロイン、またそんなこと言って!…2人とも、ごめんなさい。」

彼の言葉に慌て、二人に謝るティマ。だが、ロインは彼らを置いて先に進もうとする。ここまで冷たい対応をされる理由がわからず、カイウスのイラつきは増す一方だった。



その時、道の向こうから声が響いてきた。その声はティマの名を呼び、声の主だろうと思われる影がこちらに近づいてくる。一行は足を止め、その影の正体を見た。途端に、ロインとティマの表情からすっと不安が消えた。

「マリワナおばさん!!」

ティマは歓喜の声を上げ、現れた女性の腕の中に飛び込んだ。ティマの茶色がかった黒髪を撫でながら、女性はロインたちを見た。

「ロイン、あなたも無事だったのね。さあ、後ろのあなた達も奥にいらっしゃい。他にも何人かいるわ。」

そういうと、マリワナは彼らを奥へと導いた。彼らがたどり着いた場所は、何十人もの大人が十分に入れる程広がった広間のような空間だった。
11/08/15 09:00更新 / ちよ

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