「ユーリ!!」
顔いっぱいに怒りを浮かべ、金髪の新米騎士フレン・シーフォは、同じく新米騎士のユーリ・ローウェルに大股で歩み寄った。
「なんだよ。」
そんなフレンに対し、ユーリも突っかかるような口調で答えた。そんな彼に、フレンの声は更に荒くなる。
「何で作戦通りに行動しない!?」
「うまくいったんだからいいじゃねぇか。」
「勝手な行動で失敗したら、皆が巻き添えをくうんだぞ!!」
「いちいちうるせえな!細かいんだよ、お前は。」
「いい加減なんだよ、ユーリは!!」
反省の態度を一向に見せないユーリ。そんな彼に対するフレンの怒りは募るばかりだ。互いににらみ合い、そのまま喧嘩にでもなりそうな空気が漂う。
「ええい、うるさいうるさい!」
だが、その空気は一人の人物が割り込んだことで途絶えた。二人が所属する部隊の隊長ナイレン・フェドロック。その大きな手で作った拳骨を、同時に両者の頭へ食らわせる。少年らは殴られた箇所に手を当て、痛みで小さく呻き声をあげる。
「とっとと後片付けに行って来い!」
ナイレンの一喝に、二人は渋々立ち去っていった。だが、
「おまえのせいで殴られたじゃねえか。」
「もともとユーリのせいだろ。」
「「うるさい!!」」
まだ口喧嘩を続ける二人に、双子の姉妹シャスティルとヒスカの怒号が飛ぶ。ナイレンは彼らが去って行くと、小さくため息を吐き、愛用のキセルに魔導器を使って火をつけ、一服した。
「隊長。」
その時、副隊長のユルギスが彼を呼んだ。ナイレンがユルギスに目を向けると、その先には、一点を見つめて唸り声を上げ続けている軍用犬と、その横に跪き、同じ方角をじっと見る一人の騎士が目に入る。ナイレンとユルギスは彼らの元に歩み寄り、ナイレンは軍用犬を挟んで、その騎士と反対側に膝をついた。
「ランバート、クレイ…」
ナイレンは鎧に覆われた軍用犬・ランバートの背に優しく手を置き、彼と同じ方向を見据える。隣に居た騎士はナイレンを一瞥すると、入れ替わるようにして立ち上がった。山吹色の短髪で、顔の左半分が前髪で隠れているクールな容姿の隊長補佐役クレイ。そのスッキリとした藍色の瞳には、空気中に漂う赤い粒子のようなものが映っていた。
「ずいぶんと、紅葉が町に近づいてますね。」
「うむ…」
ユルギスの言葉に、ナイレンは頷きながら地面に落ちている葉を一枚手に取る。今のこの時期、木々はまだ青々とした葉をつけているはずだった。しかし、この葉はすっかり紅葉しきって枯れていた。季節はずれにも程がある。ナイレンはその場に立ち上がると、ユルギスら同様、紅葉しきっている目の前の景色と赤い粒子を、只ならぬ顔で見つめた。
「エアル…」
ナイレンはほとんど誰にも聞こえない呟きを漏らし、それからくるりと背を向けた。そして「行くぞ」と短い指示を出し、ユルギスらを連れて撤収作業へと戻っていった。
翌朝。いつものように身なりを整え、フレンはこのあとの任務の準備をしていた。更衣室を出たそんな彼の視界にはいったのは、バスルームでもないのに濡れた床。それは点々と、彼と同じ部屋で過ごすもう一人の同僚が使用するベッドへと続いている。
「いつまでそんな格好してるんだ?」
その同僚に、フレンはため息をつきながら問いかける。窓側の椅子に腰掛け、小さなテーブルの上にあるグミの山を掴み、口に放り込む同僚。彼は任務に向かう準備も終えておらず、それなのに面倒臭そうにフレンを見て答えた。
「ちょっとくらい大丈夫だよ。細かいなぁ、おまえは。」
「それと床!」
「いちいちうるせえな。」
彼はため息を吐きながら、またグミを一握り手にとって口へと運ぶ。やる気など全く感じさせない彼・ユーリはフレンから目を離し、頬杖をついた。
「あー。不幸だな、俺。お前と赴任先が同じ。部屋も同じ。…嫌がらせだぜ、きっと?」
「それはこっちの台詞だ!何度も言うが、何で君が騎士団に!?」
几帳面なフレンとずぼらなユーリ。正反対な二人は、いつもこうしてもめてばかりだった。適当なユーリの言動に、フレンは常にイラつかされているのだ。
「二人とも、入るわよ?」
その時、二人の部屋の戸をノックし、誰かが中に足を踏みいれた。
「何やってんのよ、時間でしょ!」
続いてやってきたのは、喧嘩中の二人を叱る声。彼らの先輩騎士・シャスティル、彼女の目に映ったのは、支度が途中のままいがみ合っている二人の後輩。お叱りの声が飛ぶのは当たり前だった。すぐにフレンは彼女に向き、「すみません」と謝った。それに対し、ユーリは何も言わない。拗ねたようにそっぽを向き、小さく鼻を鳴らすだけだった。
「急げー。」
そんな様子を扉の影からのぞきながら、ヒスカののんきな声が彼らを急かす。シャスティルも、もう一度キ
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