『女神の従者』を仕切るラミーという少女。姿こそ似ているが、性格は全く違っていた。どうやら他人の空似というものであったようだ。カイウスとルビアはその勘違いに気付き、彼女に頭を下げて詫びた。
「ま、そこまで心の狭い女じゃないからね。襲撃代だけでチャラにしてあげるわ。」
「って、金とるのかよ!?」
「当たり前じゃない。『雷嵐の波』に武器むけた代償は大きいわよ?むしろ、その程度で済んだんだから喜びなさいよ。」
食って掛かるカイウスをラミーはそう言いくるめた。だが、その発言の中に一つ気になることがあった。それに真っ先に気がついたのはティマだった。
「待って。今、『雷嵐の波』って言わなかった?」
途端に、ラミーはしまったというような表情を見せた。その様子に気づいたカイウスたちの冷たい視線を受け、ラミーは諦めたように頭を掻いた。
「はぁ、口が滑っちゃったよ。『雷嵐の波』っていうは海上ギルド『女神の従者』の裏の顔だよ。」
「つまり…あなた海賊の首領ってこと?」
「海賊ってなんだい!?あたいらは義賊だよ。お前らみたいな貧民襲ったって何も稼げやしないじゃないか。」
「…金は取るのにか?」
「そ、それとこれとは話が別だ。」
まだ幼さが抜けないぶん、理屈的な会話には負けるものの、それでも自分の主張を曲げようとはしない。そんなラミーに困った表情を見せる三人だったが、ロインだけは涼しい顔をしていた。
「金の代わりに『情報』ってのはどうだ?」
ラミーに歩み寄りながら、ロインはそう言った。ラミーはロインを観察するかのように眺めると、にやっとした笑みを浮かべた。
「いいね。どんな情報によるかだけど、それで話をつけようじゃないの。」
カイウス、ルビア、ティマの三人にとっては、それは意外な返答であった。だが、彼女が求める情報を提供できる確証はまだない。もし提供が不可能であればロインはどうするのだろう。そんなことを考えると、三人の頬を冷や汗が伝った。
「あたいが欲しいのは、マウディーラ王家に関する情報だ。どんな些細なことでも聞いてやるよ。」
ラミーの口から出た言葉に、三人は少し安堵した。それなら、イーバオでの出来事のことがある。カイウスがその件について話すと、ラミーは手を顎にあて、何か考え込むような仕草を見せた。
「何もない港町を襲撃した兵士…か。」
ボソッと呟いたラミーは、しばらく沈黙し、考え事をしていた。この情報では許してもらえないのだろうか。そんな不安がよぎった。
「ラミー様、そろそろお戻りください!」
その時、船の甲板から一人の男性が大声で叫んだ。ラミーはそれに答えると、今まで考え事をしていた時の様子が嘘のように消えた。
「ま、今日はこの情報で勘弁してやるよ。身の程をわきまえな。でないと、次はこんなんじゃ済まされないよ。」
ラミーはそう言い残し、船の中へと消えていった。ロインたちは、しばらくその場に立ち尽くしていた。やっと口を開いたのは、彼らの腹の虫がなった時だった。
「そういえば、お腹すいたなぁ。」
「だな。宿に戻ろうぜ。」
「賛成!ずっと野宿だったから、ふとんが恋しいよ〜。」
そんなことを口にしながら、彼らは宿へと向かった。
「とうとう動きだした…か。」
自身の船室へ向かいながら、ラミーはそう口にした。まん中分けになっている前髪を耳にかけ、白い結晶のピアスに触れる。船内の灯りに反射し、美しい輝きを放つ結晶を、彼女は愛しむように撫でた。その動作とは対照的に、獲物を狙うかのような鋭い眼差しがそこにあった。
「「「船がない!?」」」
宿に戻った一行に、厳しい現実が突きつけられた。情報を提供してくれた宿の主は、彼らの大声に戸惑いながらも、言葉を続けた。
「ああ。中央の『マウディーラ』との海域に、最近巨大な魔物が出没するようになってね。首都へ向かうルートは封鎖されて、船はその魔物に壊されてしまったんだ。」
「船が出るようになるまで、早くてどのくらいかかりますか?」
「悪いが、2、3ヶ月はかかるだろうね。中央からの定期便を待つにしても、1ヶ月は見ないと。」
「そ…そんなぁ。」
その言葉に、彼らは意気消沈し、暗いオーラをまといながら部屋へ戻った。首都へ使者としていくのに、そんなに長い時間はかけてられない。だが、イーバオは船と船乗りを多く失ってしまい、セビアは魔物に船を破壊されてしまった。この島に二つしかない交通手段がすべて機能しない。そうなると、彼らに打つ手はなかった。
「どうする?イカダでも作って海を渡るか?」
「カイウス、それ本気で言ってるの?」
「まさか。けど、そうでもしなきゃ1ヶ月も立ち往生するんだぜ?」
「そうですよね。」
三人が部屋で悩んでいる中、ロインは一人ベッドに横になり、物思いにふけって
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